暗闇を照らし出す光は
レイナードとアドワースは、子どもたちの執拗な攻撃を受けていた。
「くそったれが! 子ども相手じゃぁ、まともに戦えねえ!!」
「アドワース、何とかして操っているあいつを倒すんだ!」
レイナードは必死になって呼びかけたが、体力は既に限界に達しようとしていた。
アドワースに剣術を習ってはいたものの、付け焼刃のそれは無駄な動きが多く、疲労ばかりが蓄積していった。
それを見ていた神父がいった。
「残念ながら、お前たちは少しも私の脅威に成り得ない。敢えていうなら、そうだなぁ……その顔を思い出すと飯が不味くなる……それくらいの存在さ。ウフフ」
レイナードは怒りを覚え、歯を噛みしめた。
(時計職人になる夢を諦めて僕は此処にいる。それなのに――)
「騎士として、正義を全うする事すら出来ないのか!」
神父に迫ろうとするレイナードに、新たな子どもが襲い掛かってきた。見覚えのあるその顔は、いつかパンを無銭飲食した、あの少女だった。
「ソフィアちゃん! 僕だ、レイナードだ。わかるかい?」
「レイなあど……いいひと。だから、それだから……」
ソフィアは、下を向いて呟き、そして叫んだ。
「それだから、ちゃんとコロしてあげるね!」
身体に深く刻み込まれた呪いは、本人の意思を無視して、その未熟な精神を縛り上げていた。その目にかつて灯っていた光は、失われていた。
「わたしは、ずっとひとり。だから、ミンナも、ひとりになればいいんだ!!」
ソフィアが繰り出した短剣の攻撃を往なしながら、レイナードは思い起こした。
(今、この子は、暗闇を見通せずに苦しんでいる。まるで、時計職人を目指していた頃の僕だ)
「ソフィアちゃん! 君はシルフィーに心の火種を貰った筈だ。君がその手にしている短剣は、決して君を導いてくれやしない。心の闇を照らし出す光は、君自身の強い心にこそ、灯るものなのだから」
ソフィアの動きがぴたりと止まった。
「わたし、わたしは……」
自分の命令に反し動きを止めたソフィアに、神父は苛立ちを隠さずに叫んだ。
「ソフィア、何をしている! ええい、もういい、子どもたちよ、ソフィア諸とも奴を刺し殺せ!!」
「馬鹿野郎!! 避けろ、レイナード」
アドワースの怒鳴り声が聞こえた時、レイナードとソフィアは集まってきた無数の殺意に、鋭利な刃を突き立てられようとしていた。




