死霊の傀儡
王城に続く森の入口で、レイナードとアドワースは予期せぬ来訪者と対峙していた。星明りは、薄気味悪く微笑む神父たちを照らし出していた。
子どもたちの中心にいる神父の表情は昼間見た時とは違い、まるで強い怨念を抱いた死霊の如き凄みを感じさせた。
「おい神父さん、お前にいってるんだぜ? 聞こえてんのか?」
アドワースの言葉に答えることなく、神父は呟いた。
「私の知り合いがいっていたかな? 度し難く、反吐が出る………ああ、まさにそんな気がするよ。何で、こんな所にいるのかなぁ」
「お前、何いってやがるんだ?」
アドワースなど、まるで意に介さないとでもいった様子で神父は続けた。
「ぶっ殺さなくちゃあ、ならないじゃないか。勘弁してくれよ……」
「やってみろ! エセ神父がっ!!」
一瞬で距離を詰め、アドワースは木刀を叩き込んだ。
「何っ!?」
短剣で武装した子どもたちが、一斉に集まって神父を護った。同時に、別の集団の子どもたちは連続してアドワースに攻撃を仕掛けてきた。
「何なんだ! こいつらは」
「アドワース! 多分、この子たちは操られてる」
すんでの所で攻撃をかわし、レイナードが叫んだ。
子どもたちは、魚の鱗の様に小さな集団をいくつも作り、入れ代わり立ち代わり襲い掛かってきた。
衆寡敵せず……単純な攻撃ではあったが、レイナードとアドワースは神父に近づくことすら出来なかった。
「どうだい? この幾何学的な子どもたちの動きは。美しいだろう?」
赤い目を細めて、神父は笑った。
「お前、子どもたちに何をしやがった!!」
「教えて欲しいかい? どうしようかな、どうしようかな、どうしようかなぁ! ラララァー」
「いかれた聖職者がっ!!」
アドワースは、地面に木刀を突き立てた。
「揺るぎない父よ。大地の神よ、畏れを! その矛先を彼の者に向けよ!!」
アドワースの声とともに、地面が震えた。
「嘶け大地!!」
地を這う蛇の様に、神父に向かって地面が隆起した。
怒れる大地は、子どもたちを吹き飛ばしながら神父に迫ったが、周囲の取り巻きに担がれた神父は難なく、それを避けた。
「うおっとぉ! 危ない、危ない……」
ふわりと宙を舞いながら、神父は笑った。
「いいでちゅか? 騎士くん、この指輪が見えまちゅか? ウヒヒ」
「お前、何ふざけてやがるんだ!」
「嫌だなあ。私は、大真面目さ! 騎士くんにもわかる様に説明してあげてるんだよ。ウフ」
神父の手元で、指輪が怪しく光った。
「この使徒の指輪は本来、魔女の剣に食われない為に魔力を放出する道具――いってみれば、魔力の拡張機さ。わかるかい?」
指輪に反応して、子どもたちの目が紅く光った。
「そして、薬で自我を奪い、身体に深く呪印を刻み込んだ子どもたちに魔力を飛ばすと……」
「お前、まさかこの子どもたち全員に……」
「アハッ、然様でございます。一体一体、私めが丁寧に呪いを施しました。どうだい? とっても素直で可愛い、私のお人形さんたちは?」
気が付けば、レイナードとアドワースは大勢の子どもたちに取り囲まれていた。
「くすくす……くすくす……」
静かな笑い声が、夜の森でレイナード達を包み込もうとしていた。




