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ギフト犯罪探偵リゼット~冒険者パーティーを追放された俺は、天才探偵にスカウトされ、過去を視るギフトで事件と運命を書き換える~  作者: 久遠遼


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感情色覚《エモーション・カラー》

 あの三人がヴェイル殺害に関わっていると口にしたエルナさんは、そっと自分の目元を指差した。


「私の感情色覚エモーション・カラーは、常時発動型のギフトです。人の感情が、色として見えるのです。そのことを、三人から話を聞く前にノア様へお伝えしたかったのです」


 なるほど。だからリゼットは、わざわざ俺とエルナさんの二人で部屋を確認してこいと言ったのか。


「それで、あの三人の感情を読み取ったと?」


「はい。普通、仲間の死を聞かされたのであれば、まず現れるのは驚きや戸惑いといった感情です。白みがかった青色の光の粒子が、その人の周囲に浮かびます。ですが、あの三人が見せたのは別の色でした」


「……どんな色だったんですか?」


 エルナさんは一本、指を立てた。


「まず、前衛のジェイク。彼の周囲には、濃い黄色に赤黒い粒子が混じっていました。警戒と敵意を表す色です」


 さらに、もう一本。


「次に、魔法職のエリシア。彼女は、淡い黄色に灰色が混じった粒子をまとっていました。警戒しつつも、冷静に状況を見極めようとしている色です」


 そして、三本目の指が立つ。


「最後に、斥候のリュカ。彼女は淀んだ黄色をしていました。警戒の中に、恐怖が混じっているように見えました」


 ジェイクは敵意を含んだ警戒。

 エリシアは冷静な警戒。

 リュカは恐怖からくる警戒。


 中身こそ違えど、三人とも、こちらがヴェイル殺害の話をした瞬間に警戒を示したということだ。


 そこから導き出されるのは――。


「三人とも、ヴェイルの死について知っていた……あるいは、予測していた可能性があるということですか?」


 俺がそう言うと、エルナさんは静かに頷いた。


「はい。もちろん、それがすべてとは限りません。私に見えるのは、あくまで感情の色だけです。その感情を抱いた理由までは分かりませんから」


 警戒といっても、その理由は一つじゃない。

 自分が疑われるかもしれない。あるいは、次は自分が狙われるかもしれない。そういった不安から警戒を抱くこともあるだろう。


 だけど、ヴェイルが殺されたのは昨日の夜だ。

 今はまだ昼頃で、その情報がすでに行き渡っているとは思えない。


 そんな状況で、仲間の死を知らされて真っ先に警戒が浮かぶのは不自然だ。

 しかも、一人ならまだしも三人全員がそうだった。


 断定はできない。

 けれど、ヴェイル殺害への関与を疑うには十分すぎる違和感だった。


 考え込んでいると、じっと俺を見つめているエルナさんと目が合った。


「ノア様は、やはり面白いですね。私が話している間、ずっと興味深そうに理解しようとなさっていました。そして今も、違和感や謎といったものにのめり込んでいらっしゃる。

 そんな色をしていますね」


「そんなことまで分かるのか?」


「はい。お嬢様とよく似た色をしていらっしゃるので」


 その言葉で、俺は大剣を調べていたときのことを思い出した。

 確か、あのときもエルナさんは、俺とリゼットを見て「いい色をしている」と言っていたはずだ。


「そういえば……あのとき、俺とリゼットがいい色をしているって言ってましたよね。あれって、どんな色だったんですか?」


「ふふ、それは内緒です」


 俺の問いに、エルナさんは穏やかな笑みを浮かべたまま、ほんの少しだけ意地悪そうな表情をのぞかせて答えた。


 なんだろうな。会って間もないというのに、この人には絶対に敵わないと思ってしまう。


「伝えたいことはお伝えできましたので、お嬢様を呼んで参ります。ノア様はここでお待ちください」


「そんなギフトがあるなら、エルナさんとリゼットが話をした方がいいんじゃないですか? 向こうの部屋の様子は俺が見ておきますよ」


 リゼットの洞察力と推理力。

 そして、エルナさんの感情を色で見ることができるギフト。


 普通に考えれば、二人が話を聞いて、俺が向こうの部屋で残ったメンバーが口裏を合わせようとしていないか監視する方がいいだろう。


 だけど、エルナさんは首を振って否定した。


「いいえ。お嬢様なら、私のギフトの力などなくても、相手の感情を引き出し、読み取ることができるでしょう。私のギフトによる判別は、おまけのようなものですよ」


「そんな謙遜しなくても、とても優れたギフトだと思いますよ」


「ふふ、ありがとうございます。それでも、やはりノア様とお嬢様が話を聞き出すのがよろしいかと」


 俺が首を傾げていると、エルナさんはまた自身の目元を指差した。


「探偵とその相棒が揃ってこそ、よい色を見せるものですよ」


「エルナさんのギフトは、そんなことまで見えるんですか? それに、俺よりもエルナさんの方がリゼットの相棒っぽくないですか?」


 俺の疑問に、エルナさんは可笑しそうに笑う。


「さあ、どうでしょう。そういう力もあるかもしれませんね。ただ――」


 一度言葉を切り、エルナさんはスカートを両手で軽く持ち上げ、誇らしげに告げた。


「私はお嬢様の相棒ではなく、メイドです」

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