第43話 那雉の正体
ある日、明蘭は龍将の肩にとまった那雉の羽を見てふと思った。
「那雉の羽って、よく見ると色んな色が混じってますね。黒、白、赤、青・・・黄色もありますよ。」
羽をしげしげ眺めながら龍将に話しかけた。
「それはそうだろう。鳳凰だからな。」
「えっ?」
それを聞いて明蘭は固まった。
「那雉って雉じゃないんですか?」
「何を言ってる。昔からずっと鳳凰だ。」
「えっ?鳳凰?えっ?何というか・・・小さいし、地味だし。名前に雉の字も入ってて・・・。」
「昔はもっと立派で見た目も鳳凰っぽかったんだけどな。五百年ほど前に意地の悪い亀の霊獣がこいつに、俺がこいつの悪口を言っているという嘘を吹き込んでな。怒り狂って俺を攻撃してきたから、思わず本気で反撃したら真正面から当たってしまって大怪我を負って死にかけたんだ。」
「龍将様が攻撃したんですか?」
明蘭が驚いて尋ねた。
「まあ、そうだが・・・一番悪いのは霊亀だ。誤解が解けた後、俺の霊力を注いで命を繋いだんだが、霊位が下がったからこんな見た目になってしまったんだが・・・。おい、鳳泉、お前真剣に雉と思われていたみたいだな。これは傑作だ。」
龍将が愉快そうに那雉に話しかけた。那雉はムカつく!という風に龍将の額をつついた。
「痛ってえ。待て鳳泉!」
「鳳泉って?」
「那雉の本当の名前だ。あまりに小さくなってしまって、放置したら鷹とかに食われそうだと思って皇宮に連れてきたんだ。このなりで鳳もないだろうと皇宮用に俺が名付けた。」
「他の皇族の方とかは、このことを知っているんですか?」
「さあ?こいつをここに連れてきたのは五百年も前だし、説明したことがあったかどうか覚えてないが・・・。そうだ、鳳泉。前から思ってたんだ。明蘭にはそろそろ本性を現してもいいんじゃないか?」
龍将から逃れて、高い棚の上にとまっていた那雉は少し首をかしげた後、地面へと舞い降りてきた。その瞬間、そこには金の髪をした15歳くらいのやんちゃそうな少年が立っていた。
「初めまして。じゃないよな。那雉こと鳳泉だ。」
「あなた那雉なの?!」
少年は頷いた。
「小さい鳥の姿の方が霊力を消耗しないからずっと那雉の姿をとってたんだけど、最近かなり霊力が戻ってきたんだ。こっちの姿だと話せるし、まあよろしくな。あ、話せることは他の奴には内緒な。いろいろ話しかけられたら面倒だからな。」
明蘭は驚きながらも頷いた。
※
「那雉が鳳凰って泰誠は知っていた?」
その後、執務室で仕事をしている時に泰誠に聞いてみた。
お互い徐々に皇帝と臣下という立場にも慣れ、最近は呼び方も兄上から泰誠へと変化していた。
「鳳凰?那雉がですか?」
泰誠も心底驚いている。
「やっぱりみんな雉だと思っているわよね。500年前にいたずら好きの霊亀のせいで大怪我して霊力が落ちてしまってあの姿になったんですって。」
約束したので、那雉が人の姿になれることは内緒だ。
泰誠は眉をひそめた。
「まず誰も鳳凰とは思っていないでしょう。記録では五百年程前に竜王がどこかから連れてきた神鳥となっていましたが・・・。あの見た目で四種の霊獣、麟鳳亀竜の鳳凰ですか・・・。皆には言わない方がいいでしょうね。がっかりするでしょうから。」
泰誠の言葉に明蘭は真面目な顔で頷いた。
「鳳凰と龍と霊亀がいるなら、麒麟もいるのかしらね。」
「帝国内では報告されたことはありませんが、いるかもしれませんね。さて、陛下。雑談はおしまいです。先日の公共工事の件ですが・・・」
泰誠に促され、しぶしぶ明蘭は執務に戻ったのだった。




