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山奥出身ですが皇帝の跡継ぎに選ばれたので王都に旅に出ることになりました  作者: らな


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第39話 東江 再会③

「そこで、お前たちをよんだ理由だが、まず聞きたいことが幾つかある。」

 勇進が口をはさんだ。

 「お前のような読み書き・計算ができ、子供に教えることができそうな者が何人ぐらいいるか把握したいんだ。」

 「俺が知ってるのは・・・、うちにいるのが俺を入れて3人・・・かな。他の家の子供はそんなに交流がないから詳しくは知りませんが、3,4人はいると思います。」

 「足しても6,7人か・・・、できれば教師役の子供を20人ほど集めたいと思っている。お前が見込みのある子どもを探してくれるか?」

 「あ、はい、でも・・・」

 「もちろんその分の給金は出すわ。あなたの稼ぎがあの家を支えているのはわかっているから。」

 明蘭が助け船を出した。

 大志はほっとした表情になり頷いた。


 「色んな都市を巡って、お金を持っている篤志家が孤児の子供に仕事を提供しているのは東江だけだったわ。それ自体とてもいい取り組みだと思うんだけど、それだけじゃ駄目だと感じたの。日々の生活のための小銭は稼げても、庭の草むしりをしていても次に繋がらないでしょう。だから篤志家の人たちには今提供してくれているお金の一部を晶岳に学校を建てたり教師を雇う方にまわしてもらおうと思っているの。いきなり仕事がなくなったら子供達も困るから毎年少しずつそちらの予算を増やすようお願いしようと勇進と話していたの。」

 明蘭の言葉に具体的な構想がすでに進んでいることを感じ、大志は身が震えるような感動を覚えた。


 晶岳あのゴミだめが変わるかもしれない。


 そんな彼の感動を打ち消すように淡々とした知事の言葉が響いた。

 「殿下、もう約束のお時間です。大志といったか。ここにお前たちの名前と晶岳の住所を書いておけ。また追って連絡する。」

 大志はあわてて紙に自分と玄太の名前を書いた。

 横で明蘭が頬をふくらませながら”勇進は固いわねえ、ちょっとぐらいいいじゃない”と言っているのが聞こえた。

 知事は”私が泰誠殿下にしかられるんです”と反論し、明蘭がすごすご引き下がっているのが見えた。


 「書けたか。7日後に使いをやるから、それまでにできるだけ見込みのある子供を探し話をつけておいてくれ。じゃあ、お前たちは帰っていいぞ。」

 「あ、あの、この服は・・・?」

 「土産に持って帰れ。売って金に換えてもかまわん。」

 「ありがとうございます・・・」

 大志と玄太は礼を言って、ちらっと明蘭の方を見た。

 「あなた達の活躍を期待しているわ。頑張ってね。」

 にこやかな笑顔で激励する明蘭に二人は背筋を伸ばし答えた。

 「はい!」

 「うん!」


 それから二人は勇進に追い立てられるように部屋の外に出された。

 屋敷の長い廊下を二人は夢見心地で歩いていた。

 「大志兄ちゃん。なんかすごいことになったね。」

 玄太の言葉に大志も頷いた。

 「ああ、晶岳が変わるかもしれないな。」

 大志がそう言った瞬間、玄太が大声をあげた。

 「あーっ!!メイに財布返すの忘れてた!」

 そんなはした金を返して欲しいとか思ってないだろうと大志は思ったが、もう一度明蘭に会いたいという思いがあった。  

 「引き返して財布を返してくるか?」

 玄太も同じ思いだったのだろう。

 「うん。」


 先ほどの扉の前には衛兵が控えていたが、事情を説明するとあっさり通してくれた。

 さっき部屋から出てきたばかりなのと綺麗な恰好をしている子供だったため怪しまれなかったのだろう。


 コンコン


 ノックをして名前を名乗ると、”なんだ?”と言いながら勇進自身が扉を開けた。

 知事は本当にせっかちだな、そう思った大志の目に、狼牙を抱きかかえた明蘭がこちらを見て少し驚いた表情をしたのが見えた。そして話しかけようとした瞬間、二人の姿はかき消すように消えていなくなった。


 「消えた!?」

 玄太が驚きの声をあげた。

 その声に少しうるさそうな表情をしながら勇進が教えてくれた。

 「殿下は龍聖で仙術が使えるからな。空間移動術で竜安に戻られたのだ。」

 「!」

 大志と玄太はあんぐりと口を開け驚いた。


 「それで、お前たちはどうして戻ってきたのだ?」

 大志は赤い巾着財布を見せながら忘れ物のことを話した。

 「殿下はそんな忘れ物をするようなそそっかしい方ではない。おそらくお前たちの生活を見て、あえて忘れたふりをして置いていかれたのだろう。貰っておけばいい。」

 「そんな!」

 玄太のつぶやきに勇進が言葉を続けた。

 「別に貧しいからほどこしをしてやろうとか、そんなおつもりは無かったと思うぞ。なにか少しでもその時に出来ることをしたいと思われたのだろう。東江の孤児対策は、皇太子に就任されて真っ先に取り組まれたことの一つだ。お前たちの暮らしぶりを見てよほど感じることがおありだったのだろう。」

 「・・・。」


 晶岳への帰り道。

 「なあ玄太。その財布、中身はお前が取っておいていいから俺にくれないか?」

 普段みんなに自分の分を分けてくれる側である大志の珍しいお願いに玄太は反射的に”いいよ”と言って赤い巾着財布を渡した。

大志は感慨深気に財布を眺めると大事そうに懐にしまった。

そしてだいぶん後になって玄太が財布を返してほしいと頼んでも、大志は頑として譲らなかったのだった。

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