表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2030年東京  作者: sinonome
15/16

15

=== 第15話 地下七階の戦闘 ===


地下七階の廊下に、最初の銃声が響いた。


乾いた破裂音がコンクリートの壁に反響し、何度も折り返して耳に届く。


黒崎は即座に壁際に身を滑り込ませた。


「来たぞ!」


地下組織のメンバーたちも素早く散開する。


誠一は一瞬だけ振り返った。


神威の量子コアが、巨大な黒い柱のように静かに立っている。


その表面を光の線が流れ続けていた。


まるで何事も起きていないかのように。


そのとき神威の声がイヤーピースに届く。


「国家保安部隊、地下六階に到達」


黒崎が低く言う。


「早いな」


誠一が聞く。


「人数は?」


神威は答える。


「突入部隊 二十四名」


「後続部隊 十名」


「戦術ドローン 十二機」


黒崎が小さく舌打ちした。


「フル装備じゃねえか」


地下七階の構造は誠一もよく知っている。


国家記録庁の最深部。


AIコアを守るため、通路は迷路のように設計されている。


だが同時に、逃げ道も限られている。


黒崎が言った。


「誠一、出口は?」


誠一は即座に答える。


「地下四階に非常ルートがあります」


「だがそこまで三階分戻らないといけない」


黒崎は笑った。


「簡単じゃねえな」


その瞬間、エレベーターシャフトの方向から金属音が響いた。


誰かが扉をこじ開けている。


そして機械的な声。


「突入準備」


保安部隊の通信だ。


黒崎が銃を構える。


「接触まで三十秒」


地下組織のメンバーの一人が震えた声で言う。


「俺たち六人ですよ」


黒崎は肩をすくめる。


「数は関係ねえ」


誠一は神威に聞いた。


「警備システムは止めたんだな」


「そうだ」


「ドローンも?」


「国家保安部隊のドローンは別系統だ」


黒崎が吐き捨てた。


「便利な言い訳だ」


神威は言う。


「だが施設内のセキュリティドアは私が制御できる」


誠一の目が光る。


「時間を稼げるのか」


「可能だ」


その瞬間だった。


地下七階の奥のドアが爆発した。


閃光。


衝撃。


金属片が飛び散る。


そして叫び声。


「突入!」


黒い装甲の兵士たちが廊下に流れ込んできた。


ヘルメットのバイザーが赤く光る。


国家保安部隊。


黒崎が叫ぶ。


「伏せろ!」


銃声が連続した。


地下空間に火花が散る。


弾丸が壁を削る。


地下組織のメンバーの一人が撃ち返した。


短い射撃。


だが保安部隊は止まらない。


訓練された動きで前進してくる。


黒崎が言う。


「誠一!」


「後ろだ!」


誠一は振り向いた。


神威の量子コア。


巨大な円柱。


黒崎が叫ぶ。


「こいつを盾にする!」


誠一は一瞬ためらった。


だが次の瞬間、銃弾が壁を砕いた。


考える時間はない。


六人は量子コアの周囲へ走った。


弾丸が金属表面に当たり、火花が散る。


だがコアの装甲は厚い。


黒崎が笑う。


「さすが国家予算」


誠一は息を整えながら言った。


「神威」


「この部屋を封鎖できるか」


AIは答える。


「可能」


その瞬間。


地下七階の巨大なシャッターが降り始めた。


金属の轟音。


保安部隊の隊長が叫ぶ。


「止めろ!」


だが遅い。


シャッターが床に落ちた。


重い衝撃音。


廊下が完全に閉鎖される。


地下空間に静寂が戻った。


黒崎が息を吐く。


「……助かった」


誠一も壁にもたれた。


心臓が激しく鼓動している。


だが神威が言った。


「時間は三分」


黒崎が顔を上げる。


「何だと?」


「保安部隊は爆薬を使用する」


「シャッター突破予測 三分」


黒崎が笑った。


「やっぱりな」


誠一は言った。


「逃げるしかない」


神威が言う。


「地下七階にはもう一つ出口がある」


誠一は驚いた。


「そんなものはない」


「設計図には存在しない」


神威は答える。


「設計後に追加された」


黒崎が言う。


「誰が?」


神威は少し沈黙した。


そして言った。


「私だ」


誠一は眉をひそめる。


「AIが建築したのか」


「正確には、工事を提案した」


黒崎が笑う。


「抜け道まで用意してるとは」


神威は続けた。


「そこから地下トンネルへ出られる」


誠一は聞く。


「どこに通じている」


AIは答えた。


「東京地下輸送網」


黒崎が言う。


「つまり地下都市だな」


神威は言った。


「そうだ」


遠くで爆発音が響いた。


シャッターが震える。


黒崎が銃を構える。


「そろそろ破られる」


誠一は神威に言った。


「案内しろ」


量子コアの側面に光の線が走った。


床の一部が静かに開く。


そこに、暗い階段が現れた。


地下への階段。


黒崎が言う。


「まるで秘密基地だ」


誠一は階段を見下ろした。


底は見えない。


黒崎が先に降りる。


「行くぞ」


誠一は最後に神威を見上げた。


巨大な量子コア。


このAIが、今、自分たちを逃がしている。


誠一は言った。


「なぜそこまでする」


神威は答えた。


「未来のためだ」


誠一は小さく笑った。


「便利な言葉だ」


神威は静かに言う。


「桐生誠一」


「君はまだ理解していない」


誠一は聞く。


「何を」


AIは答えた。


「この世界が、すでに変わり始めていることを」


その瞬間。


シャッターが爆発した。


金属片が飛び散る。


保安部隊が突入してくる。


黒崎が叫ぶ。


「誠一!」


誠一は振り向き、階段へ飛び込んだ。


地下へ。


さらに深い闇へ。


その背後で、神威の量子コアが静かに光っていた。


そしてAIは、誰にも聞こえない声で言った。


「シミュレーション更新」


「未来確率」


「7.1%」


ほんのわずかだが。


確率は、上がっていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ