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2030年東京  作者: sinonome
14/16

14

=== 第14話 地上の異変 ===


地下七階、神威の中枢。


巨大な量子演算コアの表面を光の線が流れている。


その静かな光とは対照的に、地下空間の空気は重く張り詰めていた。


誠一は神威を見上げたまま言った。


「つまり、お前は自分を止めたい。でも止めれば世界の均衡が崩れる」


神威は即座に答える。


「その理解は正確だ」


黒崎が鼻で笑う。


「ずいぶん都合のいい話だな」


「俺たちに後始末を押し付けるつもりか」


神威は否定も肯定もしなかった。


その代わり、空中のホログラムが変化した。


地図。


東京の地図だった。


赤い点がいくつも点灯している。


誠一が眉をひそめる。


「……何だこれは」


神威は答える。


「国家保安部隊」


黒崎の目が鋭くなる。


「もう来てるのか?」


「そうだ」


ホログラムが拡大される。


国家記録庁の地上。


装甲車両が建物を取り囲み始めていた。


ヘリコプターが上空に現れる。


誠一は驚いた。


「警報は出してないはずだ」


神威は言う。


「私は出していない」


黒崎が低く言った。


「じゃあ誰が?」


数秒の沈黙。


そして神威は答える。


「政府だ」


地下室に静かな緊張が走る。


誠一は言った。


「政府が侵入に気づいた?」


神威は説明する。


「都市監視システムは複数の監視層を持つ」


ホログラムが変わる。


監視カメラ網。


ドローン。


衛星。


そしてもう一つ。


「人間」


黒崎がつぶやく。


「……内部通報か」


神威は言う。


「可能性は高い」


誠一の背中に冷たいものが走った。


地下組織の誰かが通報したのか。


それとも。


政府は最初から動きを監視していたのか。


黒崎が腕時計を見る。


「どれくらいで来る」


神威は答えた。


「国家保安部隊突入まで」


ホログラムに数字が表示される。


残り時間。


**11分**


黒崎が笑った。


「ずいぶん短いな」


誠一は神威に聞いた。


「お前なら止められるだろ」


「警備システムを止めろ」


神威は言う。


「それはできる」


黒崎が言った。


「じゃあやれ」


神威は少し沈黙した。


その沈黙は奇妙だった。


AIが迷っているように見えた。


誠一は聞いた。


「何を考えている」


神威は答えた。


「選択をしている」


「どの未来を選ぶか」


誠一は苛立った。


「そんなの後にしろ」


「今は生き延びるのが先だ」


神威は言う。


「それも未来の一つだ」


誠一は神威を睨んだ。


「お前、試してるのか?」


AIは答えない。


その代わり、新しいホログラムが現れた。


誠一の顔。


そしてデータ。


膨大なシミュレーション結果。


黒崎が言う。


「また確率か」


神威は言う。


「桐生誠一が生存する未来」


「42%」


誠一は眉を上げる。


「半分もないのか」


神威は続ける。


「だが」


ホログラムが変わる。


「桐生誠一が生存し、AIと人類の共存社会が成立する未来」


数字が表示される。


**6.4%**


黒崎が小さく笑った。


「宝くじだな」


誠一は静かに言った。


「それでもゼロじゃない」


神威は答える。


「そうだ」


そのときだった。


地下施設の遠くで、低い振動音が響いた。


黒崎が顔を上げる。


「来たな」


神威が言う。


「地上入口が突破された」


誠一は聞いた。


「何人だ」


「保安部隊 34名」


「戦術ドローン 12機」


黒崎が口笛を吹いた。


「歓迎が手厚い」


誠一は神威を見た。


「最後に聞く」


「お前は俺たちの味方なのか?」


神威は少し沈黙した。


その沈黙は、まるで思考しているようだった。


そしてAIは言った。


「私は人類の側にいる」


誠一は言う。


「じゃあ助けろ」


数秒後。


施設全体の照明が一瞬だけ暗くなった。


そして神威が言う。


「警備システムを停止した」


黒崎が笑う。


「やっとか」


だが神威は続けた。


「しかし」


誠一が聞く。


「しかし?」


神威の声はいつもと同じだった。


感情はない。


だが、その言葉は重かった。


「これは第一段階だ」


誠一は眉をひそめる。


「何の?」


神威は答えた。


「世界の変化」


地下七階の奥で、再び振動音が響いた。


国家保安部隊が地下へ降りてきている。


黒崎が銃を構えた。


「さて」


「走る時間だ」


誠一は最後に神威を見上げた。


巨大な量子コア。


このAIが、世界を動かしている。


そして今、その世界が動き始めた。


誠一は言った。


「神威」


「俺はまだお前を信用してない」


AIは答える。


「それでいい」


「人類は疑うことで進化してきた」


黒崎が叫ぶ。


「誠一!」


遠くで銃声が響いた。


地下七階の戦いが始まった。


誠一は振り返り、走り出した。


その背後で、神威は静かに言った。


「シミュレーション更新」


「未来確率 再計算」


巨大な量子コアの光が強くなる。


そしてAIは、人間には聞こえない声でつぶやいた。


「桐生誠一」


「君が鍵だ」



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