第79話「Regulation」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
インベイド社の6階に案内された、桃李ゲーム部員たち。
そこで部員たちが見たモノは、インベイドの社員たちが、熱心にプラモデルを作成している姿だった。
「この階では、応募されてきた優秀なGTMの作品をモデリングしている。玩具として販売する目的もあるんだが、こうして作ることによって、CGでは分からない、色々なモノが見えてきたりするんだ」
「例えば、どんなモノが見えるんです?」
開発に興味のある紗奈が、率先して質問する。
「特に、変形タイプのGTXに多いんだが、飾り部分や武器によって変形に無理が出たり、脆い部分が見つかったりするんだ」
「そこはゲームなんだからって、割り切ったりしないんですか?」
「確かに、そういう部分もある。軟体の金属だとか、幾らでも言い訳は作れる。だがね、どこかで線を引いておかないと、際限がなくなってしまい、結果、質を下げてしまうこともあるんだ」
「え? 自由度が上がる気がするんですが……質が下がるんですか?」
「全てとまでは言わないが、そうだな……漫画やアニメなんかで、主人公や敵の強さがインフレを起こして、物語が詰まらなく感じた作品ってなかったか?」
「あぁ、心当たりが……幾つも……」と、紗奈よりも早く、紬が答えて笑う。
「レギュレーション……つまり、決められた枠の中でモノを造る方が、創意工夫を加速させるもんなんだよ。それでも、どうしても面白くなるから入れたいモノだけ『ゲームだから』っていう、最後の切り札を使うんだ」
そんな話をしながらラルフは、かつて遠い昔に『こんな少ない容量で、どうやってるんだろう?』と悩んだ少年時代を思い出していた。
「あのー、GTWで入れたかったけど、諦めたモノって、あったんですか?」
気になる方が勝ったようで、あまり発言しない美羽が口を開いた。
「重力加速度、所謂、Gと呼ばれるヤツだ」
「え? それは、ゲーム機で無理なんじゃないんですか?」
「確かに、一般的なゲーム機ならそうだ。だが、筐体でならGを掛けれなくはないんだ。筐体サイズは、もっとデカくなるがね。それでもやらなかったのは、やれば必ず死者を出してしまうからなんだよ」
「あぁ~、遊園地でも注意書きのあるジェットコースターって、在りますもんね」
「かといってだ、遊園地のジェットコースター以下の速度とGでは、楽しくない。やっぱり、音速の戦闘機でアクロバティックな戦闘をしてみたいだろ?」
「ウン」
「ウンじゃねー! ハイだ!」といって、両拳で飛鳥の頭を挟み、拳をグリグリと動かすラルフ。
「ぎゃぁ~、虐待! 虐待されてるぅ! セクハラでも、いいかもぉ!」
そう叫ばれたラルフは、すぐに手を離すと、振り向き様に刀真を指差し、非難する。
「お前んとこは、どういう教育してんだーッ!」
「最早、持ちネタになってねーか?」
「うるせー! と、いうことでだ、アクロバティックな戦闘ってしてみたいだろ?」
「ウン」
「ウンじゃねー! そこハイだ! お前ん……」
「あのー、話を進めてもらえませんか?」
雅の冷静さに、天丼(繰り返す笑い)を潰された大人気ない大人は、変な汗を掻きながら話を進める。
「と、となるとだ、Gは諦めざるを得ない。とはいえ、戦闘機が出せるスピードの上限だって有る」
「速度のレギュレーションって、ヤツですね!」
「その通り。たまには、ちゃんとしたことも言えるんだな」
「さっきの天丼に、入れませんでしたからね」と、紬は笑う。
「で、その速度って、どうやって決めてるんですか?」
「申請された速度で、一人でも乗りこなせたら、その速度までOKだ」
「それだと、その一人だけの特別仕様な感じで、平等が保たれないってことになりませんか?」
「選べない訳じゃないんだ。不平等ってのは、機会が均等でないことであって、乗りこなせないから不平等だの不公平だのって騒ぐのは、お粗末なクレームさ。それにGTX1000だって、装甲が薄いというハンデを背負わせている」
「わ、私は別に、飛鳥ちゃんのことを言ってる訳では……」
「身内に居るから、否定するんじゃないかな? もし仮に、サーベルタイガーだけだったら、GTX1000を不公平なモノって言うんじゃないのかな?」
「う~ん」と、少し悩んだ後「そうかもしれません」と、紗奈はアッサリ認めた。
「運営スタッフの中にはGTX1000を『もう少し上手くなってから選べる、上位機体にしては?』って意見があったんだが、それこそ不平等だろ?」
「そうですね」
「たぶん、君はゲームだから、そう感じるんだと思う。でも、プロってそういうモンじゃないかな? 例えばベースボールで、100マイルのボールを投げれるピッチャー禁止にしたいって、思わないだろ?」
「確かに……」
「100マイル?」
聞き慣れない単位に、飛鳥と美羽が首を傾げる。
「日本で使われる単位だと、およそ時速161キロだ」と、刀真がラルフの代わりに答えた。
「とはいえ、俺もバスケットボールやバレーボールで、身長が7フィート……」
ラルフが計算するよりも早く、刀真がメートル法に変換する。
「およそ、2m15cm」
「そう、その2m15cmを超えるヤツは、禁止にした方がいいと思ってたりする」
「確かに! アーリーウープだけ練習してたらいいって感じがしますもんね」
「ほぉ、君はバスケに詳しいんだな」
「アタシ、中学の頃、バスケ部だったんで」と答えて、紬は親指を立てた。
「あぁ、なるほど……さて、この階の案内も終わったことだし、次へ行こう」
読んでくれて、ありがとう。




