第80話「マネー、マネー、マネー」
読んでくださる方に、合う作品であることを祈りつつ。
ラルフに案内され、次に連れて来られたインベイド社の7階は、ビルの幅をいっぱいに取った、体育館のような空間だった。
「この7階は……正確には、上の8階をぶち抜いて高さも取った、この7・8階は、モーションキャプチャのスタジオになっている」
「モーション撮るのに、こんなに上の方まで必要なんですか?」
「いい着目だ、美羽。主に、ワイヤーアクションなんかを撮影するために、この高さにしている」
「あそこにバスケのゴールが在るから、てっきり、社員のレクリエーション場なのかと思いました」
「実は、そういう使い方もしている。だが、本来の目的はゲーム用だ。他にもサッカーゴールや、ピッチャーマウンドを地下の倉庫から持って来ることもある」
「流石に~、水泳は出来ませんよね?」
盲点を見つけたつもりの紬に、ラルフは厭らしく微笑んで自慢気に語る。
「なめるなよ! ここは防水にもなってるから、水を張れば水中撮影も可能だ」
それを聞いて、心配性の紗奈が、その後どうなるのか質問する。
「え? 水を使った後は、どうなるんです?」
「そこは、心配ご無用! 張った水は排水用タンクへ流れるようになっている。もちろん、完全にとまでは行かないが、僅かに残った水は、蒸発で無くなる程度のものだから、敢えて掃除をする必要は無い」
「いずれ、GTWでバスケやサッカーってする予定あるんですか?」
「考えてはいるが、まだもう少し先かな? 他にも、アメリカンフットボールやベースボールも候補に挙がっている。しかし、多人数の場合、サバイバルゲームでもそうなんだが、チームを組んでも集まるのが難しいんだ」
「え? 3億もID登録されてるのにですか?」
「一番の問題は、時差だね。チーム内での時差もあるし、対戦相手との時差もある。同時刻に、22人だの18人だのと集めるのは、思った以上に難しいんだ」
しばらくして、バスケの選手らしき人たちと、撮影クルーのような人たちが現れた。
それを見て、紬が最新情報を手に入れたとばかりに、発言する。
「あ! バスケの選手……てことは、GTW最初のスポーツはバスケですね!」
「残念ながら、あれはCM撮影だ」
「CM? GTWの宣伝でバスケを?」
「いいや、違う。実はね、このスタジオ、他の会社にも貸し出しているんだ。今回のアレは、何かのCM撮影のようだ。他にも、ゲームをはじめとして、映画やアニメ、スポーツ選手のフォームチェックなんかの依頼もあったりするんだよ」
「でも、お高いでしょ?」
「確かに、安くはないな。しかし、その価値は十分あると思う。なんせ、金メダリストを輩出しているからね」
アメリカの競泳選手であったマイケル・スチュワートは、泳ぎのフォームをチェックしに、このスタジオへ訪れた。
しかし、撮影終了後、ターンの改良こそが自分を速くすると知り、理想的なターンを求めていった結果、表彰台の頂に、登り詰めたのである。
7階の案内も終わり、次の階へ移動中、紗奈はずっと気になっていたことを質問する。
「そういえば、インベイドって、GTWに掛かりっきりで、TYPE7用のゲームって、一つも出してませんよね?」
「実を言うとTYPE7は、サードパーティ(他社)向けに作った本体であり、ファンへの感謝を込めた機種なんだよ」
「あぁ、だから会員になれば、TYPE6までのソフトが、全て遊び放題なんですね」
「その通りだ。会員にならず、ソフトを一つ一つダウンロードして買ってもらってもいいが、月々2000円で過去機種のソフトが全て遊び放題なら、そっちを選ぶだろ?」
「それで、儲かるんですか?」
「そこそこね」
「え? サードパーティに幾ら払ってるんですか?」
「随分と突っ込んだ質問だな。1人が1日の内に1回でも遊べば、サードパーティに1円払う。それが100回遊んだとしても、同じ日なら1円なのは変わらない。日付が変われば、2円だがね」
「やっす!」
「そんな事はないぞ。仮に、その日に1億人が遊べば、その日だけで1億円入るんだ」
「でも、インベイドには1999億円入るんでしょ?」
「やっぱ、お前は馬鹿だな、計算が間違ってる! せめて30日分掛けろよ!」
「馬鹿って言うな! それでも、1970億円じゃん!」
ラルフは、飛鳥の呆れた解答に溜息を漏らし、刀真を指差し批難する。
「ハァ……お前、ちゃんと教育しとけよ!」
こればかりは刀真も「面目ない」と頭を下げた。
「1970億円だと、1ゲーム分だけの話だ。仮に、1人が1日に100種類遊んで、30日続けた場合、支払う額は3000円だ。それが1億人になってしまうと、3000億円で大赤字になる」
例題も極端じゃねーかと、刀真は心の中で叫んだ。
同じ意見だったのか、雅はオブラートに包んで、それを否定する。
「でも、そうはなってませんよね?」
「当然だ、100種類遊ぶヤツなんて、滅多に居ねーよ」
「え? 居るんですか?」
「あぁ、居るには居る。ゲーム批評をブログでやってるヤツで、全ゲーム制覇するそうだよ」
「え? 10時間やってたとして、1時間に10本だから、1本に対して6分? それで批評なんて、出来ませんよね?」
「そのペースでやらないと、先に寿命を迎えちまうからな」
と、ラルフが笑った傍らで、ぶつぶつと何やら、紗奈が計算している。
「きっと、やらない日とかもあるだろうから……1日1人平均3種類として……」
「おい、そこのメガネ! リアルな数字を出そうとするんじゃない!」
だが、計算を続けた他の部員が1名。
「かなり儲けてらっしゃいますね」と、紬は厭らしく笑うのだった。
読んでくれて、ありがとう。




