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追放された台所係の不遇令嬢、森で拾った食いしん坊のモフモフにご飯を作っていたら、なぜか冷徹王子に求婚されてしまう  作者: めっちゃ犬
第5章:本当の罪が暴かれる時

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(4)地下牢での尋問

「なんで俺が捕まらなきゃならないんだよ!!」


ケビンと名乗った赤毛の若い男は、縛られたままで吠えるように抗議をした。


今はもう真夜中。


エルナとポムをある所に預けて避難させた後、ヒューバート達はケビンを王宮の地下牢へとぶち込んだ。


その首には、魔力を封じる首輪がつけられている。不安定な魔力であちこちに火を起こすので、危なくてしかたないからだ。


薄暗くかび臭い牢獄では今、冷酷な尋問が始まろうとしていた。


「俺はエルナの夫なんだって言ってるだろう!俺を放して、妻を返せ!」


ヒューバートは「チッ」と小さく舌打ちをして、ケビンをにらみつける。その眼差しひとつで、ケビンは震えあがって黙ってしまった。


「コイツ、このまま沼に沈めてやろうか……」


「ダメだ、沼が汚れる」


地の底から響いてくるような低いつぶやきに、オリバーは腕を組んだ姿勢で答えた。その視線はまっすぐケビンに向けられている。


こんな男が「エルナの夫」を名乗るなど汚らわしいし、許し難い。二人とも、はらわたが煮えくり返る思いでいた。


オリバーは檻の前にしゃがみ込んで、ケビンと目を合わせた。


「だけど、エルナ嬢は貴族だぞ。お前、平民と貴族は結婚できないって、知らないのか?」


「旦那様のお許しはいただいてるんだよ!『手続きはしておくから、今のうちにエルナをしっかり躾けろ』って、言われたんだ」


だから彼は、今は空き家になっている実家にエルナを連れ去り、自分の妻であることを骨の髄まで分からせようとしたのだ。


「なんだと!?」


優越感に満ちた顔で説明した彼に、ヒューバートはカッとなって、剣の柄に手をかける。ケビンの顔に怯えが走り、縄をかけられたままの体で、芋虫のように後ずさった。


「やめろ!コイツは大事な証人なんだぞ」


立ち上がったオリバーは彼の手をつかんで止め、ケビンを振り返った。


「それは本当か?ブルック伯爵はエルナ嬢を除籍して、平民のお前と結婚させるって言ったのか?」


そんなことをする貴族がいるとは考え難いが、あの伯爵ならやりかねないとも思える。


「そうだぜ!伯爵は役人にツテがあるから、三日もあれば手続きは済むって……」


「「なにっ!?」」


ヒューバートとオリバーは顔を見合わせた。それが本当なら、大変なことだ。


手続きが済んでしまったら、エルナは正式にこの男の妻になってしまう。


想像すらしたくない最悪の未来を迎える可能性に、普段は冷静なヒューバートの顔から、みるみる血の気が引いていく。


(すぐにその手続きを止めなければ!)


夜が明けたらすぐに動こうと、青い顔のまま決心する。王族の権威を振りかざしてでも、必ず止めなければならない。


そうした権威の乱用は、先進的な考えを持つ現国王が最も嫌う行為なのだが、それでもかまわない。国王に叱責を受けようとも、王族の権利をはく奪されようとも、エルナを守るのだ。


「だがな……いくらなんでも、三日は早すぎないか?」


「……そう言われれば、そうだな」


首を傾げたオリバーの言葉に、ヒューバートも少し冷静になって考えた。


婚姻届はともかく、貴族を除籍するのは簡単ではない。複雑な手続きが必要で、完了するまでにひと月以上かかることもあるのだ。


賄賂を贈ったりして、早めに進めてもらう事はできるが、それにしても三日は早すぎる。


(ツテがあるという事は、伯爵はこうした不正を何度も行っているのかもしれない)


ヒューバートは遠くを見るように目をすがめた。


(その役人とは、いつからの付き合いなんだろうな?)


彼の脳裏に、ひとつの可能性が浮上する。オリバーの方へ体を寄せ、小声で尋ねた。


「伯爵夫人の調査はどうなってる?」


「あれか。夫人の実家へ問い合わせているところだが、そろそろ返事がくるんじゃないか?」


伯爵の妻、ジャネットは隣国の男爵家の出身だという。近いとはいえ他国の事なので、調査に時間がかかるのは仕方がない。


「オリバー、明日は朝一番に役所へ行くぞ」


「なら、今日はもう寝るか」


背を向けて立ち去ろうとする二人に、ケビンの威勢のいい声が追いすがった。


「おい、帰る前に俺を釈放しろ!妻のエルナを返せ!」


……シュッ!


ヒューバートの抜いた剣が宙を飛び、ケビンの頬をかすめて牢の石壁に深々と刺さった。


「ひぃいい!」


彼は顔を引きつらせてガクガクと震えた。頬についた一文字の傷から、赤い雫がひと筋流れる。


「いいかげんにしろ!!」


ヒューバートの怒鳴り声が、狭い地下牢のなかに響き渡った。


「正式な手続きも済んでないのに、エルナを勝手に妻と呼ぶんじゃない!第一、妻に薬を嗅がせて連れ去る夫がどこにいる!?」


「そ、それは……ひゃあ!!」


言い訳をしようとしたケビンは、また情けない悲鳴をあげた。


突き刺さっていた剣が壁からスルリと抜け、意志を持つ生き物のように宙を動いて、鋭い剣先をケビンの眉間にピタリと突きつけたからだ。


ヒューバートが指一本で風を操り、剣を巧みに動かしているのだ。


「いいか?お前が生きていられるのは、証人としての価値があるからだ。それを忘れるな!」


「ひゃ、ひゃい!」


歯の根も合わないほど震えるケビンがうなずくのを見て、ヒューバートは剣を操って腰へと戻した。


そしてもう、彼には一瞥もくれないまま、踵を返して地下牢を後にした。


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