(20)ひとりぼっちは嫌だよ
カゴの外から声がする。
フタが閉まっているからよく聞こえないけれど、なんだかエルナが虐められているみたいだ。
「隠れていて」って言われたけれど、エルナがピンチなら助けないといけない。
よし、オリバー師匠に教わったように、今は落ち着いて状況の確認をするんだ。
話が聞こえるように、ボクは静かにフタを持ち上げて、エルナの匂いがするポンチョの隙間から様子をうかがった。
あの銀髪男の献上品のポンチョは、暖かいのに軽くて、エルナによく似合う。
あいつは見た目が「おうさま」に似ていて気に食わないけれど、エルナの価値をちゃんと分かっているところは、認めてあげてもいいと思ってる。
「やめて!私はあなたと結婚しないわ!」
聞こえてきたエルナの声は、今までに聞いたことがないくらい悲痛だ。
結婚だって!?
耳の後ろの毛が逆立つ。
「おうさま」がリリーを連れて行った時も、そんなことを言っていたんだ。でも、エルナは嫌だって言ってるし、これは助けないと。
ボクは音がしないように、そっとカゴを脱出した。寝室の隅に立てかけてあった木剣を握って構える。
うん、いい感じだ。
ボクは寝室のドアの影に隠れて、息をひそめる。
どうやらエルナを虐めているのは、ぶよんぶよんの丸い体の男と、騎士の格好をした赤毛の若い男のようだった。
「嫌よ!!放して!!!」
エルナが嫌がっているのに、赤毛の男は彼女にくっついて拘束している。
なんだあいつ!気持ち悪いな!!
ボクは剣をぐっと握りなおした。大丈夫、オリバー師匠に教わって、ボクは毎日剣術の稽古をしてるんだから。
「嫌!」
「キュー!!」
エルナが叫んだのを合図に、ボクは赤毛の男に斬りかかった。
ドン!!
……お腹に強烈な衝撃が走った。気づいた時には壁に叩きつけられていて、剣が手から離れて転がっていく。
ダメだ、こんな事じゃ……早く剣を拾わなきゃ……。
ボクは頑張って起き上がろうとした。でも、体はピクリとも動かない。
「なんだこれは、汚らわしい!」
そんな声がして、ボクはまた情けなく転がった。
ああ、ボクはなんて弱いんだろう!
エルナを守らなくちゃいけないのに、意識がだんだんと遠のいていく。
『森に隠れていてね。絶対に出てきちゃダメよ』
頭の中に、懐かしい声が響いた。そう言ったのは、リリーだったかな?それともエルナかな?
霞んでいく視界のなか、ボクは必死に手を伸ばす。
ボクはもう……ひとりぼっち……なるのは……嫌……なんだ……。
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次回からはいよいよ最終章に突入し、アーサーの本当の罪が暴かれていきます。
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