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追放された台所係の不遇令嬢、森で拾った食いしん坊のモフモフにご飯を作っていたら、なぜか冷徹王子に求婚されてしまう  作者: めっちゃ犬
第3章:美味しい香りが引き寄せた運命の出会い

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(6)私のオリジナル

ポツポツと窓ガラスをたたく音で、エルナは目が覚めた。


夜中のうちに雨が降り出したらしい。


窓を少しだけ開けると、雨と濡れた土の香りが寝室に忍び込んできた。恵みの雨に、森の木々や草は生き生きと輝いている。


エルナはポムと一緒に朝食をとると、手早く小屋の掃除を済ませた。今日は家で試してみたいことがあったのだ。


「キュゥウ?」


作業台の上に、様々なハーブや薬草を並べていくエルナを、ポムは不思議そうに見ている。


「あのね、ポム。今日はハーブティーを作ってみようと思うの」


昨日のように、お茶にムーンライトを入れることは、これまでにもあった。


(でも、はじめから同じ効能を持ったお茶があれば、もっと便利なはず)


ずっとやってみたいと思っていたが、使用人として忙しく働いていたエルナには、その時間がなかった。 だが、今ならたっぷりある。


台に並んだ薬草やハーブには、どれも懐かしい母との思い出があった。それらを見ていたら、思い出が一つ、よみがえってきた。


「お母さま、どうしてスパイスにするの?」


子供の頃、母にそう聞いたことがあった。料理に直接魔力を注いだ方が、簡単だと思ったのだ。


「スパイスや薬草の力を借りた方が、思った通りの効果が出せるのよ」


どうやら、料理に直接だと効果が薄かったり、ムラが出たりするようだ。秘伝のスパイスのように、「ムーンライトを使えば心に効く」といった、確実な効果が得られないのだ。


エルナも何度か試してみたことがあるが、母の言った通りだった。


(ハーブティーも、調合する材料を工夫すれば、秘伝のスパイスみたいになるはず)


母だって、試行錯誤して秘伝のスパイスを作り上げたのだ。きっと自分にもできる。


(まずはムーンライトからね)


うまくできたら、あの銀髪の騎士さまに渡すつもりだ。寝る前に飲んでもらえば、きっとぐっすり眠れて体調も良くなるはずだから。


「お茶のベースは、サンニーにするわ」


エルナはポムに話しかけながら、楕円形の大きな葉を両手で持って見せた。


それはサンニーという薬草の葉で、ブルック領に多く自生している。裏の畑の周囲にも、たくさん生えていた。


「キュ!」


「賛成」と言うように、ポムがうなずく。


サンニーには、心を落ち着かせる作用があるので、ムーンライトにも使われている。ハーブティーとして親しまれているし、葉に抗菌作用があるので、弁当などを包むこともある。


エルナはサンニーを細かく刻み、ボウルに入れた。ムーンライトに使われている薬草を、少しずつそこに混ぜていく。


「ここからは私のオリジナルよ」


乾燥したナツメの実をひとつ取り出し、できるだけ細かく刻んでお茶に混ぜる。ナツメの実には、心の緊張をほぐす効果があるのだ。


そして最後に、乾燥させたキンモクセイの花を加える。


(あの方に渡して、寝る前に飲んでもらおう)


銀髪の凛々しい騎士、ヒューバートの顔が浮かぶ。


優しい気持ちでハーブティーに混ぜ込むと、キンモクセイの甘い香りが広がった。雨の香りと混ざって、何か懐かしいような、切ないような気持ちになる。


「さあ、最後の仕上げね」


「キュ!」


エルナは床に膝をつき、両手を組み合わせる。スパイス作りの時と同じように、真剣に祈った。


ふわっ……!


エルナの体から金色の光が放出される。それは、前回スパイスを作った時よりも、さらに強く温かな光だ。


共鳴するようにポムもキラキラと光るが、目を閉じて真剣に祈りを捧げるエルナは気づかない。


エルナの魔力の光は、ハーブティーの方へと伸びていき、ハーブの一つ一つを包み込む。


やがて、土に水がしみこむように、ハーブティーのなかにスーッと吸収されていった。


「うまくできたかな?」


「キュイ!」


目を開いたエルナは、立ち上がってハーブティーを確認した。


(あれ?)


彼女は首をかしげる。


(……気のせいかな?)


ハーブティーのなかに、キラキラと小さな星が散らばっているように見えたのだ。だが、二、三度瞬きをしている間に見えなくなってしまった。


「キュウ!」


ハーブティーを見つめていたエルナは、ポムの鳴き声にハッとする。


「キュキュウ!」


頬のぷっくりしたその顔には、好奇心いっぱいの表情が浮かんでいた。どうやら、「早く次を作って」と催促しているようだ。


「じゃ、じゃあ、次はヒールシャワーのハーブティーね」


エルナは疑問をいったん頭の片隅に追いやる。今はハーブティー作りに集中しよう。


彼女はレモングラスをベースに、ヒールシャワーの材料をバランスよく配合していく。


爽やかなレモングラスの香りが心地良い。頭と体をリフレッシュしてくれる香りだ。


(でも、これだけじゃ物足りないわ)


エルナは少し考えて、乾燥させたミントを少し足した。雨の湿り気を帯びた空気の中に、清々しい香りが漂う。


鼻を抜ける清涼感は、まるで雨上がりの森を吹き抜ける風のようだ。


「ああ、なんだかスッキリする香りね!」


「キュウ!」


ポムもピンクの鼻をヒクヒクさせている。


ハーブティーをしっかりと混ぜ合わせた彼女は、床に膝をついて祈りを捧げた。ポムはエルナと一緒に光る。


エルナの発した光は、先ほどと同じように、ハーブティーへと向かっていった。キラキラと輝きを放ちながら、ハーブに溶け込んでいく。


だが、残った星の輝きは、エルナが目にする前に見えなくなってしまった。


「うん、今度は大丈夫ね」


やはりさっきのは見間違いだったのだと思いながら、エルナは棚からフタ付きの容器を二つ取り出した。それぞれにヒールシャワーとムーンライトを入れて、しっかりとフタをする。


「キュイ!」


だが、ポムが棚の方を指して、何か訴えてきた。エルナは首をかしげる。


「どうしたのポム?」


「キュイ、キュイ、キュ!」


ポムは三つのスパイスをしまっている辺りを見ながら、じれったそうにポムポムと跳ねた。

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