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追放された台所係の不遇令嬢、森で拾った食いしん坊のモフモフにご飯を作っていたら、なぜか冷徹王子に求婚されてしまう  作者: めっちゃ犬
第2章:美味しいご飯とモフモフを堪能する日々

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(7)ポムの魔力

発せられた光は、ポムの体から畑全体へと、風のようにふわりと広がっていく。


光は畑の上で、ゆっくりと渦を巻くように動いた。


ほぐれた土が光と混ざりあい、周囲の風を巻き込んで大きな渦になった。


その美しい光景に、エルナはただポカンと口を開けて見入ってしまった。辺りには、土と清らかな水の香りが強く漂っている。


「え?畑の土の色が変わった……?」


ポムの魔力の光がおさまると、エルナは驚きの声をあげた。


乾いて白っぽかった土が、黒々とした土に変わっていた。見るからに栄養豊富そうだ。


エルナはしゃがみ込んで、畑の土を手に握る。フカフカと柔らかく、このまま種をまいても大丈夫そうだ。


「す、すごい」


こんなことも出来るとは。目の当たりにしたポムの力の強大さに、月並みな言葉しか出てこない。


「すごい、ポムは本当にすごいね!」


「きゅ、きゅぅうう」


言葉は月並みながらも本気で褒めるエルナに、ポムはちょっと照れくさそうな顔をした。


「ありがとう、ポム」


エルナはしゃがみこんで、もふもふした頭を撫でた。その顔が気持ち良さそうに、ふにゃりと崩れた。


「じゃあ、さっそく種をまいてみるね」


エルナはトマトとカボチャの種を取り出す。最初なので、数個ずつまいて様子をみるつもりだ。


人差し指を柔らかな土に刺し、空いた穴に種を入れていく。土をかぶせて、じょうろで優しく水をかけた。


……ぴょこん!……ぴょこん!


すると、水をかけるそばから小さな芽が出て来た。


「え、もう芽が出たの!?」


驚いてポムの顔を見るが、今は光ったりしていない。


エルナは朝食の時に見た光景を思い出す。美味しいご飯を食べてポムが光った時、これらの種も光っていたのだった。


(同じ部屋の中に置いてあったから、やっぱりポムの魔力の影響を受けたのかも知れない)


ポムがあの伝説の聖獣だとしたら、そういうことも十分にありえる。


(それとも、この畑の土に残った魔力の影響かな?)


エルナはその場にしゃがんで、もう一度畑の土をよく観察した。黒くて柔らかな良い土だが、特別かどうか彼女には見分けがつかなかった。


手のひらをそっと土に押し当てる。ポムの発する光のように、優しい温もりを感じた。


(たぶん、両方なんだわ)


ポムの魔力は、土や植物に大きな力を与えるらしい。


「これからポムを守っていくためにも、この魔力をよく観察していこう」


エルナはそう心に誓う。



その後は、畑に生えていたサツマイモのツルを適度な長さに切って、畑の土に挿した。こうしておくとツルの根本から根っこが生えてきて、新しい芋が出来るのだ。


「あっという間に終わってしまったわね」


全ての作業を終えて、エルナは畑を見回す。種から芽吹いたばかりの小さな芽も、サツマイモのツルも、 生き生きと輝いて見える。


「ポムのおかげよ、ありがとう」


「キュ!」


礼を言うと、ポムは得意そうに胸を張った。大きな尻尾がゆらゆら揺れている。


エルナはその可愛い姿に微笑みを返すと、クワやじょうろを片付け始める。ポムのおかげで大変な思いはしなくて済んだが、慣れない作業で手や服が汚れてしまった。


「ああ、お風呂に入りたいわ」


汚れた自分の姿を見おろし、エルナは思わず独り言を漏らした。


ここに来てから一度もお風呂に入れていない。森番小屋にお風呂はないのだ。


寝る前に濡れたタオルで体を拭いたりしていたが、やっぱりお風呂に入りたいし、髪も洗いたかった。


貴族の家では使用人でも風呂に入って身体を清潔に保つことができる。だが、平民は何日かに一度町の共同浴場に行って、それ以外は家で行水したり体を拭いたりするぐらいだ。


(かといって、町の共同浴場はきっと遠いわよね)


そもそも共同浴場がどこにあるか分からないし、知らない人と一緒にお風呂に入るのは、経験がないのでちょっと恥ずかしかった。


「キュー!」


そんなことをぼんやり考えていると、ポムの呼ぶ声が聞こえた。見れば、小屋とは反対の方向へポムポムと走って行く。


「あっ、どこへ行くの?」


急にどうしたんだろうと、エルナは慌てて追いかける。


ポムは時々立ち止まってこちらを振り返りながら、どこかへ誘導するように跳ねてゆく。


そうして10分くらい歩いただろうか。ポムは森を流れる小川のそばでようやく立ち止まった。


「どうしたの?ここに何かあるの?」


「キュ!」


エルナの問いかけに短く答えると、ポムは前足を合掌するように合わせた。


……フワリ!


先ほどと同じようにポムの体が金色に光った。小川のそばの小さなスペースに光が集まり、渦を巻きはじめる。


「何をするの?」


エルナが驚いている間にも、金色の光はどんどん強くなっていく。しまいには目を開けていられないほどになった。


(ま、眩しい!)


エルナはたまらずにギュッと目をつぶり、手をかざして光から目を守る。


「これって、まさか……」


しばらくして光が弱まったのを感じたので、エルナは顔をあげた。光が集まっていた場所には、小さな池のようなものができていて、ほかほかと温かな湯気が上がっていた。


「やっぱり温泉だわ!」


池に駆け寄って手を入れてみると、お風呂にちょうど良いくらいの湯加減になっていた。かすかに硫黄のような匂いがして、温泉だと分かる。


ブルック伯爵領にはいくつか温泉場があって、子供の頃に母と何度か行ったことがあるのだ。


(ポムは温泉を湧かせることもできるの?)


ポムを振り返ったエルナは、その小さな体がゆらりと揺れるのを見た。


そのまま後ろへポテリと倒れる。


「どうしたのポム!?しっかりして!」


エルナは慌てて駆け寄り、その体を抱き上げた。


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