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追放された台所係の不遇令嬢、森で拾った食いしん坊のモフモフにご飯を作っていたら、なぜか冷徹王子に求婚されてしまう  作者: めっちゃ犬
第2章:美味しいご飯とモフモフを堪能する日々

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(2)キノコ狩りへ

朝食の後片付けが終わると、エルナは手頃な大きさの籠をひとつ手に持って、ポムと一緒に小屋を出た。


母と一緒の頃、毎年キノコ狩りをしていた場所を目指す。そこに行くのは久しぶりだが、何度も通った場所なので道は覚えている。


ポムは元気よく跳ね回りながら、エルナのあとをついてくる。


「もしかしたら、黒真珠が見つかるかもしれないわよ」


黒真珠は、色が黒に近い濃い茶色をしたキノコで、傘がくるんと丸まっているためそう呼ばれる。


キノコの王様とも称され、ナッツのような香ばしい香りを持ち、まるで肉のような旨みと食感がある。採れる数が少ないので高級品だ。


「キュッキュー!」


黒真珠を知っているのかどうか、ポムはさらに元気よく跳ねる。


「ふふ、ポムと一緒だと楽しいわね」


一人と一匹は仲良く連れ立って、けもの道よりはいくらかマシと言えるような、細い道を進んでいった。


ここは、母によれば昔はもっと広い道だったそうだ。森の管理がされなくなってからは、両脇に伸びた草にだんだんと侵食されてしまっている。


あの小屋に森番がいた頃は、こうした草を定期的に刈ったり、樹木の余計な枝を落としたりしていた。そうすることで森に光が入り、風通しもよくなって、結果的に植物や生き物の数が増える。


人間が少し手を加えることで、森が豊かになるのだ。当時は近隣の領民にそれらの仕事を任せており、彼らの収入源にもなっていた。


(お祖父さまは、そのことがちゃんと分かっていらしたのよね)


現国王が即位してからは一度も王の狩場として使われていないが、それでも祖父はこの森をきちんと整備していた。それを変えてしまったのは、父のアーサーだ。


「陛下にお越しいただけない森に、金をかけるなど無駄だ」


アーサーは祖父が亡くなると、そう言って森の整備をやめてしまったと聞く。


しばらく歩いたところでキノコ狩りの場所へ着いた。


そこには大木が枝を広げていて、地上まであまり日光が届かず、足元には枯れ葉が多く積もっている。こういった湿った土と枯葉が混ざった場所に、黒真珠は生えるのである。


エルナは少し腰をかがめて、周囲の地面をよく観察した。残念なことに、キノコはほとんど生えていない。 黒真珠どころか、シロタケやリンギールといった、よく食べられるキノコさえほんの少ししかないのだ。


「はぁ~、今年は不作なのかしら」


そういえば、雨が少ない年はキノコは不作だと聞いたことがある。この夏は確かに雨が少なかった。 エルナはがっかりしてその場にしゃがみ込む。


(どうしよう、食べるものがないわ)


畑のサツマイモだって、無限にあるわけではない。森には食べられる薬草などもあるが、当てにしていた秋の味覚が不作なのにはがっかりだ。


「キュウ?」


突然エルナが座り込んだので、ポムがそばに寄ってきて顔を覗き込んでくる。ぷっくりとした頬がなんとも愛らしい。


(可愛いぃ!)


エルナは思わずその頬を両手で包み込み、モフモフとした感触を楽しんだ。それだけで、なんだか元気が出てきた気がする。


(そうよ、森にはまだ、果物とか木の実とかあるじゃない!)


そういえば、山栗やベリーをこの森で採ったことがある。「よし」と自分自身を奮い立たせると、エルナは立ち上がった。下から見上げてくるポムに、腰をかがめて告げる。


「残念だけれど、今年はキノコはないみたい。だけど、あっちに山栗の木があったはずだから」


山栗の木を探して歩き出したエルナは、ポムがついて来ていないことに気がつかなかった。


……フワッ!!


だがその時、後ろで大きな金色の光が発せられ、周辺の大地を包み込んだのだ。


「えっ!?」


突然のことにエルナは驚いて振り返る。


ポムがまだエルナが座り込んでいた場所にいて、その場でポムポムと跳ねていた。そして、まわりを見ろとばかりに、両手を広げて見せた。


「えええ!?ウソでしょ?」


エルナは驚いて目をみはる。木の根元や落ち葉の上に、たくさんのキノコが生えていたのである。特に黒真珠は、これまで見たことがないほどの量だ。


「さっきは生えてなかったのに……」


エルナは自分の目をゴシゴシとこすってみたが、目の前の光景は変わらない。試しに黒真珠のひとつを手に取って、香りを嗅いでみる。香ばしいナッツの香りがした。間違いなく黒真珠だ。


エルナは相棒になったばかりの白い小さな生き物に目をやる。


「ポム、あなたがキノコを生やしたの?」


「キュ!」


ポムは後足で立ち、自慢げに胸を張った。どうやらポムの仕業らしい。あの金色の魔力が作用したのだろう。色は似ているけれど、自分の魔力とは性質が違うようだ。


(でも、これじゃあまるで……)


エルナはある事に思い至って呆然とする。


「キュー!」


そんなエルナに、ポムは「早くキノコを採れ」と催促した。


「う、うん」


まだ動揺は収まらなかったが、エルナはありがたくキノコを採らせてもらうことにした。今は少しでも多く食べ物を確保したい。


それに、これだけの黒真珠があれば、売ってお金に変えることができるだろう。そうなれば、お肉やほかの食材も買えてありがたい。


いつ屋敷に戻れるのか分からないし、備えは多いほうが良いに決まっている。


(もう二度と戻れないかもしれないしね)


父を信じたい気持ちはある。だが、自分に対するこれまでの冷淡な態度を考えると、そういうことも充分にありうるとエルナは思った。


(それに、もしポムの力のことをあの人たちに知られたら大変だわ!)


エルナは気付いて青くなった。


小麦のような、お金になる作物の収穫量が上がれば収入が増える。それを彼らが放っておくわけがなかった。


アーサーたちだけではない。この能力を世間に知られたら、それを利用しようとする人間は、いくらでも湧いてくるだろう。


(この先どうなるか分からないけれど、これからはポムを守ることを一番に考えて行動しよう)


ポムを守ることができるのは、同じ秘密を持つ自分だけだ。そう決心すると、かえって気持ちが落ち着いてきた。


(とにかく今は、食料を確保しないと!)


エルナはカゴがいっぱいになるまでキノコを摘んだ。


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