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追放された台所係の不遇令嬢、森で拾った食いしん坊のモフモフにご飯を作っていたら、なぜか冷徹王子に求婚されてしまう  作者: めっちゃ犬
第2章:美味しいご飯とモフモフを堪能する日々

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(1)食いしん坊の毛玉

翌朝、「クゥクゥ」という愛らしい寝息でエルナは目を覚ました。横たわる体のすぐそばでポムが寝ているのだ。


ポムは自分の大きな尻尾を抱き枕のように抱えて、クルンと丸くなっていた。


(ふふっ、ボールみたいね)


モフモフのボールをチョンチョンと指でつついてみるが、ポムは身じろぎもしないで眠っている。


エルナは起こさないように、そーっとベッドを抜け出した。


昨日、収穫したサツマイモを抱えて裏の井戸へ行き、顔を洗うついでに芋も洗う。


(今朝もこれを食べるしかないのだけど、あまり甘くないのよねぇ)


たわしで擦って芋の泥を落としながら、昨夜のことを思い出す。


「きゅぅううう……」


蒸かしたサツマイモを一口食べると、ポムは残念そうな鳴き声をあげたのだ。


「あんまり甘くないね」


エルナもうなずいた。


放置された畑にあったわりには、よく育っている。だが、サツマイモは収穫したてより、しばらく天日に干しておいたほうが甘みが増して美味しいのだ。


だが、今はほかに食べるものがないし、甘くなるまで干しておく余裕もない。


(なんとか美味しく食べる方法はないかな?)


そう考えた瞬間、エルナの顔がパッと明るくなった。


(そうか、アレがあったわ!)


台所でみつけたアレを使えば、甘くないサツマイモも美味しくすることができる。


自分のひらめきに喜んでいると、愛らしい鳴き声が聞こえた。


「キュー!」


ポムが目を覚ましたらしく、ポムポムと弾むようにこちらへ駆けてきていた。


「おはよう、ポム。朝ごはんにお芋を食べましょう」


「きゅ、きゅぅうううう」


あまり歓迎していない顔つきに、彼女は笑いかけた。


「大丈夫、今日は美味しく料理してあげるから」


「キュウ!」


ポムは黒くつぶらな瞳を輝かせた。


エルナの言葉の意味をちゃんと理解しているし、料理の味もちゃんと分かっているように見える。


昨夜も、ポムは葉を使ったスープやおひたしを喜んで食べていた。どちらにもヒールシャワーを使っていたので、より美味しく感じたのかもしれない。


やはり普通の動物とは違うようだ。


「さあ、朝ご飯を作りましょう!」


エルナはポムを連れて小屋へ戻ると、ペティナイフで洗った芋を輪切りにし、水にさらしていく。


このナイフを使うと、誰でも完璧に均等な厚さにスライスすることができるのだ。母の形見のナイフセットには、宮廷料理人の一流の技を再現できる古代魔法がかけられていた。


古代魔法は、今は失われてしまった魔法の技術である。 その希少性を考えても、ブルック伯爵家の「家宝」と言える逸品だ。


ジャネットに取り上げられずに済んだのは、彼女がこのナイフの価値を理解できなかったからだ。


「ナイフセットが家宝だなんて、バカじゃないの?」


料理に興味がないジャネットは、大事そうにナイフの手入れをするエルナを笑った。


ジャネットにとっての「価値あるもの」とは、身をきらびやかに飾ってくれる、ドレスや宝石なのだ。


(売られたりしないで、本当によかったわ)


切れ味の良いナイフの感触を楽しみながら、エルナは心から思った。


……ぴょん!


「キャッ!?」


突然、ポムが作業台の上に飛び乗ったので、エルナはびっくりして声を上げた。


「うわあ、すごいね、ポム」


小さいわりに、なかなかの跳躍力だ。


ポムの見守るなか、水にさらした芋を鍋に入れ、水をひたひたになるまで注ぐ。 鍋を火にかけ、蜂蜜と塩、ヒールシャワーのスパイスを入れた。


しばらくすると甘い匂いが漂ってきて、ポムがハート型の鼻をヒクヒクさせはじめた。


「サツマイモの蜂蜜煮よ」


蜂蜜で甘みをプラスし、塩がその甘みをさらに引き立てる。スパイスの柑橘系の香りも良いアクセントになるだろう。


「さあ、召し上がれ」


エルナは冷ました蜂蜜煮を木の皿に入れ、テーブルに置いた。


ポムは椅子を経由してテーブルに飛び乗ると、皿に顔を突っ込む様にして勢いよく食べ始める。喉に詰まらせないか、ちょっと心配だ。


「たくさんあるから、ゆっくり食べてね」


そう言うとエルナも食べ始めた。


芋の甘みはやっぱり少ないけれど、蜂蜜の甘さで美味しく食べられる。ヒールシャワーの柑橘の香りが、爽やかさも加えている。


スパイスの効果もあって、体が温まってくる。エルナは体の内側から、元気が湧いてくるのを感じた。


「ねえ、今日は森に食べ物を探しに行かない?」


夢中で食べているポムに話しかける。


畑の芋と周囲の薬草だけでは、やはり不安だ。幸い季節は秋なので、キノコや木の実など、森の恵みを収穫することが出来るはずだ。


「キュー!」


「賛成!」というように鳴いたポムのほっぺに、芋のかけらがくっついている。エルナはそれを指でつまんで取ってやる。


「じゃあ、食べ終わったら出かけようね」


ポムはコクコクとうなずく。そして「おかわり」と言うように、皿をエルナの方へ押し出した。


この毛玉、なかなかに食いしん坊のようである。


「はいはい、たくさん食べてね」


エルナは笑いながら皿を受け取り、蜂蜜煮を山盛りに入れてやった。


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