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8-2:連盟と役割分担

 しかしあのビキニアーマー、防具としてちゃんと機能するのか? 体を覆う面積が少な過ぎると思うのだが……いや、見た目は素晴らしいのだけど……。


「……なあ、ちょっといいかな」

「ん?」


 ビキニアーマーの女性プレイヤーを鑑賞……もとい、観察していた俺に声を掛けてきた男はアロハシャツを着ていた。こちらは明らかに“外の街”で購入したものだろう。南国風の“浜辺の集落”にあっては余り違和感が無い。


「その装備、下から上がってきて今ここについたとこって事だよな?」


 第三十階層までの素材しか使っていない俺の装備はここでは目立つ。俺が他のプレイヤーの装備を見ていたように、俺もまた他のプレイヤーから装備を見られていたようだ。

 ステージを更新したなら、新しい素材を組み入れた方が性能は向上するのに、俺の装備には“海辺”ステージの素材が一切使われていない。そこから俺がここに来たばかりと見当を付けたようだ。正確には二日前なのだが、あの時はすぐに引っ込んでしまっている。本格的に攻略するのは今日からなので“今”で構わないだろう。


「もしかして、第二陣っているのか? そういう話は全く聞いてないんだけど……」

「え? 違う違う。俺は実験開始に遅刻しちゃったんだよ。第二陣とか、そういうのじゃない」

「遅刻?」

「ログイン前にちょっとバタついてね。ほんのちょっとだと思ったら時間加速のせいでここじゃ一か月の大遅刻になった」

「じゃあ後から来る奴、他にはいないんだな?」


 アロハの男は見ていて判るくらいに安堵の方向に表情を変えていた。

 なるほど。第二陣が存在するなら賞金レースの競争率激化に繋がるからか。

 でも……先ほども感じた“浜辺の集落”に漂う雰囲気の違和感。そしてこの男はアロハシャツ。どこからどう見ても賞金目指して攻略を頑張っているようには見えない。第二陣だの競争率だのを気にする必要は無いのではないかと思える。


 その点に探りを入れてみると「俺達だって賞金を諦めた訳じゃないよ」をアロハは笑い、レース状況を教えてくれた。


 現在トップグループは第四十一階層以降の“山岳”ステージを攻略している。“山岳”ステージは“森”ステージよりも高低差に富み、地形もより複雑に入り組んでいる。迷宮の如き洞窟を抜けなければ到達できないエリアも存在するなど、一筋縄ではいかない構成だ。また、敵モンスターも手強く、未だステージボスにまみえたプレイヤーはいないそうだ。


プレイヤーは(・・・・・・)って、なんか含みある?」

「そこ気付いたか。鋭いね。この加速実験に俺達ゲームプレイヤー以外の奴らも参加してるってのは知ってるか?」

「“探求者”の事なら」

「その探究者がな、ボス部屋までは行ってるんだ。片手間の攻略だってのに。しかも『プレイヤーでもないのに初回討伐報酬を取るのは申し訳ない』って戦わずに撤退したらしい。戦ってれば勝てたって口振りだったってんだから、リアルスキルの持ち主ってのは凄いよ」

「……それってもしかして男女の刀使いプラス弓使いの三人組なんじゃ?」

「違うぞ。美女揃いの五人パーティーだ」

「そっちか」


 探究者枠で美女五人組のパーティーと言えば、清一郎の母親を含む天音流剣術道場の御一行様だ。清一郎達でさえ各ステージのボスを無被弾で撃破しているのだから、更に格上となるとガチゲーマーをぶっちぎってトップを独走するくらいは楽勝なのだろう。

 まあ、そこで本当に独走せずに、自分達が部外者であるのを自覚して初回討伐報酬を取らないように身を退いたのは良い判断だと思う。そういうのはプレイヤーが取るべきだからな。


 さて、トップグループが“山岳”攻略中の今、“海辺”に留まっているアロハ達は何なのかというと、特殊仕様の痛覚再現に嫌気が差して、戦闘に消極的になってしまったグループであるそうだ。

 それだけだとレースを投げている様に思えるがさに非ず。

 彼等もまだレースを諦めていない。

 そのカギは第三十一階層到達で解放される『連盟』機能だ。


 『連盟』の何たるかは他のゲームのギルドやクランと大差無い。

 要はパーティー人数の上限を超えて一つの集団として纏まる機能だ。連盟成立や連盟規模の成長によって小さなものから大きなものまで様々な恩恵があるそうだが、最も重要なのは、賞金レースに『連盟』として入賞すれば実際にラスボスを倒したパーティー以外の連盟員にも掛け率は落ちるものの賞金が発生するという点だ。


 行われているのは攻略組と生産組という役割分担だ。

 アロハ達生産組は採取活動をメインにし、回復薬など消耗品を生産して攻略組に供給する。攻略組は少しでも先へと急ぎながら、最前線で得られた素材を生産組へと回す。品質の高い素材で強化した武具を用いれば生産組はより安全に採取活動に従事できるようになる。

 “山岳”の素材で強化した武具で“海辺”の魔物と戦うなら、そりゃ本来得られない筈のオーバースペックだ。楽に狩れるだろうし受けるダメージも小さくなる。痛覚再現に嫌気が差した生産組は大助かりだろう。

 その他攻略組プレイヤーのパーティーに生産組プレイヤーを混ぜてステージボス突破を手助けするなどもしているそうだ。


「それでうまくいくもんなの? サボる奴とか、絶対いるんじゃないか?」

「口約束から契約書レベルまで何かしらの決め事はしてるさ」

「ふーん……」


 そこはお互いの信頼関係とかリアルでの関係性とかもあるんだろう。


 それにしても、だ。

 せっかく他のプレイヤーに追い付いたっていうのに、俺がパーティーメンバーを探すのは難しくないだろうか。連盟という纏まりと役割分担の体制など、既に出来上がっているところに割って入ることになる。

 と言うか、アロハを初めとして“浜辺の集落”にいるプレイヤーは生産組なのだから、これからどんどん攻略を進めたい俺とは確実に折り合えない。生産組になった理由が痛覚再現の忌避なのだから“死に憶え”に付き合ってなんかくれないだろう。


 ……それも悪い事ばかりじゃないか。


 俺がパーティーを組めないのと同様、真理恵さんもパーティーを組めないだろうからだ。


 実は二日前、この“浜辺の集落”で別れる際、真理恵さんのご機嫌があまり宜しくなかったのだ。その上次回の報酬を定めずに保留したままだ。これまでは報酬受領後、次の報酬を伝えられていたのに。「想像以上のヘタレでしたか」と例によって丸聞こえな独り言はどういう意味だったのか……。


 次の報酬が未定で、ここには俺以外のプレイヤーもいる。

 もしや俺との契約は打ち切りかとも思ったのだが……これなら大丈夫そうだ。ここらで俺とパーティーを組めるのは真理恵さんだけだし、真理恵さんとパーティーを組めるのも俺だけだ。誰か他の奴に取られる心配は無い。


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