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5.監査室
部屋の奥、窓際に黒檀の大きな机があった。
その前で、王弟殿下は山積みの書類に目を落としている。
右隣には、ぽつんと一つだけ空いた机。
どうやら、そこが私の席らしい。
「初めまして。本日より配属されました、エレノア·ハワードと申します。よろしくお願いいたします」
「ああ」
それだけだった。
王弟殿下は顔すら上げない。
……なるほど。
ここで人が続かない理由が、少しだけ分かった気がした。
私は黙って自分の席へ向かう。
改めて部屋を見渡すと、ひどい有様だった。
机の上だけではない。
棚にも、床にも、領地から送られてきた報告書や帳簿が積み上がっている。
王弟殿下は次々と書類に目を通しているが、整理まで手が回っていないのだろう。
私は足元にあった一冊を拾い上げた。
昔から父の領地経営を手伝っていた私には、見慣れた書類だった。
私は袖を軽くまくり、散らばった書類を一枚ずつ拾い始めた。
紙をめくる音と、
書類を積み直す音だけが、
監査室に響いていた。




