47. 王弟殿下のやらかし
朝、目を覚ますと、頭がずきずきと痛んだ。
「……しまった」
昨夜は、明らかに飲みすぎた。
普段は酔って余計なことを口走らないよう、酒量には気をつけていたはずなのに。
昨日は勢いに任せて、随分と飲んでしまった。
確実に、何かやらかしている。
少しずつ、昨夜の記憶が戻ってくる。
『エレノア嬢がいなくなって……どんなに寂しかったか……』
「…………」
顔が一気に熱くなった。
言った。
僕は、言ってしまった。
(エレノア嬢……僕を嫌いになっていないだろうか)
今度は、さっと血の気が引いた。
恐る恐る部屋を出ると、食卓には朝食が用意されていた。
温かいスープに、焼きたてのパン。
昨夜に続いて、王宮ではあまり口にしない家庭料理が並んでいる。
昨夜はあまりの美味しさに、つい全力で食べてしまった。
今日は、さすがに遠慮しよう。
そう思っていたはずなのだが――。
気づけば、スープは三杯目だった。
ちらりと、エレノア嬢の横顔を窺う。
「お気に召していただけました?」
エレノア嬢が、ふわりと笑った。
「そのスープ、私が作ったんです」
「…………」
天使かと思った。
もう一杯頼みそうになったところで、迎えに来ていた官吏がとうとう口を挟んだ。
「殿下。そろそろお戻りいただかないと、本日の政務が……」
「……分かった」
名残惜しい。
だが、さすがにこれ以上仕事を放り出すわけにもいかない。
玄関まで見送りに来てくれたエレノア嬢に、意を決して尋ねた。
「エレノア嬢」
「はい?」
「昨日の……返事を聞いてもいいだろうか」
エレノア嬢は、少しだけ笑って――。
こくん。
と頷いた。
「…………」
「やったー!」
思わず、大声が出た。
その瞬間。
屋敷の奥から――。
ガシャン。
という音が聞こえた。




