29. 鉱山(2)
「やったわ! 鉱山が見つかった!」
足が止まった。
「これで領地も安心ね。嫁ぎ先だって、きっと見つかるわ。良かった……」
(……なんだと?)
この貧乏領に、鉱山?
嘘だろう。
いや――。
あのエレノアだ。
腹は立つが、知識だけはある。
そんなあいつが、鉱山を見間違えるとは考えにくい。
俺は一呼吸置いて、扉を開けた。
エレノアが驚いたように振り返る。
その瞬間。
机の上にあった何かを、さっと引き出しへしまった。
見逃さなかった。
「あら、いらっしゃい。カイル様。どうしたの?」
(まずいな)
今ここで機嫌を損ねて、別の男を婚約者に選ばれたら困る。
……あの宝石は先行投資だった。
そういうことにしておこう。
「いや。急にエレノアの顔が見たくなってね」
にこりと笑う。
「次に出かける予定でも立てようかと思ってさ」
「まあ、嬉しい。待っていて。お茶を用意してくるわね」
エレノアは嬉しそうに部屋を出ていった。
(相変わらず、侍女の一人もいないのか。呆れるな)
……まあ、今回は都合がいい。
足音が遠ざかるのを待つ。
俺は机の前へ立った。
そして、先ほどエレノアが何かを隠した引き出しへ手をかける。
中にあったのは、一枚の地図だった。
広げてみる。
山の一角に、丸印がついている。
「…………」
口元が緩んだ。
(これが、鉱山のありかか――)




