26. 接待営業
カイルが、以前と同じように我が家へ通うようになった。
前回は二人で馬を駆り、領地の視察へ出かけていた。
けれど、今回は違う。
「カイル様の領地にも行ってみたいわ」
そうお願いして、立派な馬車を出してもらった。
カイルの領地は、王都ほどではないものの、隣国へ続く街道が通っているため、それなりに栄えている。
人も物もよく行き交い、通行料から得られる収入もなかなかのものだ。
もちろん、私は知っている。
監査室で資料整理をしていた頃、カイルの領地の決算書にも目を通していたからだ。
(……結構、貯め込んでるのよね)
頭の中で、おおよその数字を思い出す。
(これを吐き出させるには、そこそこの額になるわね……腕が鳴るわ)
最初は、二人でお茶をする程度だった。
もちろん私は、店で一番高いケーキセットを頼んだ。
(……とはいえ、たかが知れてるわね)
ケーキ程度では、財布は溶けない。
もっと高価なものを、気持ちよく買っていただかなくては。
そこで私は、徹底的にカイルを接待することにした。
「さすがね、カイル様」
「知らなかったわ、カイル様」
「すごいわね、カイル様」
「センスがあるのね、カイル様」
「そうなんだ、カイル様」
とにかく、多用した。
カイルが何か話すたび、私はうっとりと見つめ、感心したように頷く。
すると計画通り、カイルはどんどん上機嫌になり――。
お支払いも、どんどん気前よくなった。
何度かそんな外出を繰り返した、ある日。
「エレノア。お前に宝石でも買ってやる。ついてこい」
カイルは得意げに鼻を鳴らし、エスコートするように腕を差し出した。
(……その言い方、腹立つわね)
けれど、接待に私情を挟んではいけない。
私はぱっと顔を輝かせ、その腕を取った。
「本当? 嬉しい! さすがカイル様」
もちろん、接待は忘れない。




