25/40
25. 煽ててみた
舞踏会当日。
華やかな人波の向こうに、見覚えのある精悍な顔立ちを見つけた。
――いた。
私は何食わぬ顔で近づいていく。
「もしかして……カイル様?」
今回は私から、懐かしそうに声をかけてみた。
カイルが振り返る。
一瞬、私を見つめ――すぐに柔らかな笑みを浮かべた。
「初めまして、お嬢さん」
丁寧に胸へ手を添え、一礼する。
「こんなにお綺麗な方を、私が忘れるはずがございません。よろしければ、お名前を伺う栄誉をいただけますか?」
「…………」
思わず、ぽかーんとしてしまった。
――え。
本当に分かってないの?
慌てて表情を取り繕う。
「エレノアよ。幼馴染の。忘れちゃった?」
「…………」
カイルのこめかみに、一瞬だけ青筋が浮かんだ。
見逃さない。
「……エレノアか。綺麗になっていたから、本当に見間違えたよ」
「まあ、お上手ね」
私はにっこり笑った。
「カイル様も格好良くなったわ。ほら、あちらのお嬢さんたちも、みんなカイル様を見ているもの」
知らんけど。
とりあえず、煽てておいた。




