19. カイルの見下し
それなりに、仲良くしてやった。
優しく声をかけ、話を聞き、時には手も握ってやった。
あいつは、それだけで嬉しそうに笑う。
触れられた手を、気づかれないようハンカチで拭くのが、いつしか習慣になった。
毎日毎日、相変わらず貧乏臭い格好をして。
こんな女を相手にするのも、すべては俺の愛する恋人ヴァネッサのためだ。
何か金になるものでもないかと、あいつに付き合うふりをして領地中を見て回った。
だが――。
本当に、しけた領地だ。
岩ばかり。
畑も大したことはない。
金になりそうなものなど、何もありゃしない。
せめて領民から少し絞り取って、可愛いヴァネッサのドレス一着にでもなればいいんだが。
そんなことを考えていた、ある日。
あいつが鉱山を見つけた。
「……鉱山だと?」
思わず笑いそうになった。
まさか、こんな貧乏領に。
しかも、馬鹿な女だ。
自分を破滅させる方法まで、ご丁寧に俺へ教えてくれた。
帳簿の見方。
監査では何を疑うのか。
数字のどこに違和感を覚えるのか。
聞けば聞くだけ、嬉しそうに喋りやがる。
――父上。
あなたは昔から、あいつを随分と買っていましたね。
でも、見ていてください。
あなたが思っているほど、あの女は優秀じゃない。
それを、俺が証明してやりますよ。
それに――。
僕たちの未来のために、エレノアはよくやってくれた。
(ヴァネッサ。愛してるよ)




