15. 僕たちの未来のために
それからカイル様は、
「僕たちの未来のために」
と言って、帳簿の付け方や領地経営について熱心に学ぶようになった。
「少し休んだら?」
「大丈夫。早く仕事を覚えたくてね」
「うふふ……ありがとう」
私たちの未来を、こんなにも真剣に考えてくれている。
そう思うだけで嬉しかった。
「それよりさ、エレノア」
「なあに?」
「横領って、どうやって見抜くんだい?」
一瞬、答えに詰まった。
「……どうして、そんなことを聞くの?」
「君が今までどんな仕事をしていたのか知りたいんだ。それに、鉱山が見つかれば、収益をきちんと報告しない業者だって現れるかもしれないだろ?」
なるほど。
あまりにもっともな答えに、私はほっと息をついた。
「うふふ……そういうことね。分かったわ、教えてあげる」
これまで、私の仕事について詳しく聞いてくれる人など、ほとんどいなかった。
だから、嬉しかったのだと思う。
帳簿を見る時にどんなところへ目を向けるのか。
数字に違和感を覚えた時、どんなふうに考えるのか。
監査室で経験したことを、私は雑談のように話していった。
カイル様は、そのたびに興味深そうに頷く。
「へえ。それで?」
「それからね――」
聞いてくれることが嬉しくて。
私は、ついつい話しすぎてしまった。




