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11. 侯爵家
葬儀にも姿を見せなかった侯爵家へ、私は先触れを出した。
母が事故で亡くなったこと。
貧しい領地で父と共に暮らしながらも、母はいつも幸せそうだったこと。
そして、お願いしたいことがあると記した。
返事は、たった一言だった。
「会ってやろう」
侯爵家を訪れると、冷たい視線を向ける執事に屋敷の奥へ案内された。
部屋に入ると、侯爵がこちらを見た。
母とよく似た瞳だった。
その瞳を見た瞬間、少しだけ泣きそうになった。
――この人が、お母様のお父様なんだ。
私は気持ちを整え、幼い頃に母から教わった通り、精一杯きれいにカーテシーをした。
侯爵は何も言わず、顎をくいっと動かして椅子を示す。
私は恐る恐る腰を下ろした。
「で、なんだ?」
「はじめまして。エレノア・ハワードと申します」
侯爵は、表情ひとつ変えない。
「要件は?」
「……我が家には男児がおりません。このままでは爵位と領地を失います。ですので、侯爵家のご親類から、どなたか我が家へ養子に来ていただけませんでしょうか」
「お前にやる親類などおらん」
それだけだった。
執事が扉を開ける。
私はもう一度カーテシーをして、追い出されるように侯爵家を後にした。




