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人畜無害を極めていたらクラスの美少女がやけに構ってくるようになった話。  作者: ちーずとーすと


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エピソード6

電車を乗り継いで自宅前に着くと時刻は19時少し前。


既に見知った相手のシルエットを確認しながら近付くとそれに気付いたのか吏月の方から歩いてきた。


「陽太郎!久しぶりだなぁ、ちょっと背伸びたか?」


「吏月、久しぶりだな、、、ってお前親戚のおっちゃんか!!!」


そうして吏月が近付けてきた拳に答えるように俺も拳をつき出してグータッチ。昔を思い出すその仕草に俺たちはおかしくなって笑い合った。


「お?そっちのかわい子ちゃんが陽太郎の彼女か?」


俺の半歩後ろで待機している御子柴さんを見て吏月が悪戯っぽい顔で茶化す。なんだろう、2人に似たようなものを感じるのは気のせいだろうか。


すると御子柴さんは驚いたように声を上げた。


「吏月ってもしかして、、、えっと、、、藤峰くん?」


「おう!俺は藤峰吏月、、、ってもしかして真帆?!」


何がどうなっているのか分からないが2人はどうやら知り合いらしい。


とりあえずこんなところで立ち話をするのも野暮なので一旦2人をうちに案内することにした。



「ってことで俺の師匠の妹がそこの御子柴真帆なんだよ!いやぁこりゃ偶然だなぁ」


ソファにどっかりと仰け反りながらケタケタと笑う吏月と先の感動の再会(?)に驚いていた御子柴さんが懐かしみながら感慨に耽っている。


「ほんと何年振りだろうねー!」


そんな2人の会話を聞きつつ俺は3人分の夕食の準備に取り掛かっているところだ。


「でも良かったな吏月、入学前に2人も知り合いに会えてさ」


「そうだな!これで学校で浮かなくて済むぜ、、、」


「吏月くんなら"ある意味"浮いちゃいそうだけどね〜」


「おい真帆それはどういう意味だ!!!」


そんな掛け合いをしながら談笑しているあっという間に本日の晩ごはんが出来上がった。


献立はシンプルなオムライスとハンバーグ、味の方は大好評で多分俺は満更でもない顔をしていたのだろう。そんな様子を見ていた御子柴さんからこっそり耳打ちをされた。


「卯月くんの"初めて"もーらいっ!」


「だから言い方!!!!でも嬉しいよ、ありがとう」


それから暫く学校での授業のことや選択科目、行事のことなどを在校生目線で色々たっぷりと教え込んだ。うちの高校は県内でたった数校しかない語学系の特殊学科を設置している為、慣れるまでは少し時間がかかるだろう。まぁきっと吏月のことだから1ヶ月もあれば完全に馴染んでそうなのだが。


そして時刻が21時を回ったところで吏月は引っ越しの荷解きがあるといい自宅へ戻って行った。


そして残された俺と御子柴さんは2人でキッチンに立ち洗い物を片付けることに。最初は1人でやるからゆっくりしていて大丈夫だと言ったのだが一向に退こうとしなかった御子柴さんに最後は根負けして手伝ってもらうことにしたのだ。



何故だか隣で鼻歌を歌いながら上機嫌になっている御子柴さんに俺はさっき思ったことを聞いてみる。


「あのさ、御子柴さんはその、吏月のことどう思う?」


御子柴さんは一瞬きょとんとした顔で首を傾げたあと、何か思いついたようにまた悪戯っぽい顔でニタニタし始めた。


「んー、昔からあんな感じでちょっとチャラいけど顔もイケメンで身長も高いしおまけに何でもできるんだよね〜。」


「あいつは何でも完璧にこなしちゃうんだ、羨ましいこと限りないよ」


先程の会話での"ある意味浮いちゃう"という言葉と今しがた御子柴さんから発された"イケメン"という言葉で分かった。御子柴さんもやっぱりこんなモサい奴よりああいう陽気な人間の方がタイプなんだ、同じような属性だし相性も良いんだろうなと考えてしまう。


いや待てよ、それだと俺が御子柴さんに気があるように言ってるみたいじゃないか。バカ言うなよ卯月陽太郎、いくら御子柴さんが美人な陽キャで親しくしてくれているからと言ってそれは自分に好意を向けてくれているわけじゃない。仲良くなったところでどうせまた何かをきっかけに離れていってしまうんだ。馬鹿なことを考えるのはやめてさっさとこんな曖昧な関係を終わらせてしまえば良いんだ。


すると御子柴さんはそんな俺の顔を心配そうに覗き込んできた。


「ねえ卯月くん、顔色悪いよ?大丈夫?」


「別に大丈夫だよ、平気。」


「でもさっきより辛そうな顔してる」


「だから大丈夫だって言ってるだろ!!」


俺は思わず大きな声をあげてしまった。それに驚いた御子柴さんは一歩後ずさったあと俺の頭に手を伸ばそうとしてきた。そんな彼女の手を俺は冷たく突き放すように振り払う。


「もう遅いし御子柴さんも帰ったほうがいいよ。エントランスまで送るから支度しなよ」


御子柴さんは今にも泣き出しそうな表情で俯いた。


「分かった、、、今日は一日無理言って付き合わせちゃってごめんね。さよなら。」


そう言って1人で玄関を出た御子柴さんの横顔はとても寂しげに写って見えた。


そうだ、これで良いんだ。元から友達なんて作る気はなかったんだ。どうせ裏切られるくらいなら最初から1人ぼっちだっていい。別れの方が辛いことはもう知っているのだから。


御子柴さんが帰った後は正直何をしたか覚えていない。とにかく早く休もうと思って俺はベッドに潜り込んだ。


今日の月は大きな雲に隠れて、まるで自分の心の鏡写しのように儚く消えていった。

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