エピソード10
午前の授業を終えて昼休みを迎えた俺と吏月はせっかくなので一緒に屋上で昼食を取ることにした。
梅雨と呼ばれる季節ではあるものの、雨が降っている時以外は快晴で時折吹いてくる涼しい風が夏の始まりを告げているような、そんな気配がする。
一緒に昼休みを過ごすのは中学以来か。とある一件があってからも吏月とだけは常に行動を共にしていた。
その方がお互い気も紛れて楽だということもあったけど、まだ中学生だったあの頃の俺たちにはあまりにも残酷で虚しさを感じていたというのが大きい。
吏月が留学を決めた理由も、俺が地元から少し遠い学校を選んだ理由も元を辿れば同じ出来事から始まったことなのだ。
「なぁ吏月、こうやって一緒に昼飯食うのはあの時ぶりだな。」
「あぁ、そうだな。まるであの頃に戻ったみたいだよな。」
「まさか、またお前と学校で一緒に飯食うなんて誰が想像しただろうな。」
「おかしな話だよ全く」
それからは留学中に起きた出来事や俺と御子柴さんが知り合った経緯などお互い会話に花を咲かせた。実家のような安心感を覚えるあたり、さすがは親友といったところか。
俺が話し終えると吏月は納得したように頷いた。
「なるほどなぁ、それで真帆とお前は知り合ったのか!!めっちゃ運命じゃん!!」
「俺からしたら計画大失敗だけどな。なるべく人畜無害を貫いてやろうって息巻いてたらまさかの一番目立つ御子柴さんと知り合ってさ、毎日連絡取り合ったり一緒に家で飯食ったり休日は一緒に買い物したり、、、とにかく騒々しい生活がスタートしたってわけ。」
「えっ、お前らそんなとこまで進んでるのに付き合ってないのか?!」
吏月は驚いた、というより驚きを通り越して若干引いたような表情で固まっている。
「断じて付き合ってはないぞ。想像してみろよ、仮にあんな超絶美少女な陽キャと俺みたいなモブが付き合うなんてことがあったら何が起こると思う? そうだよリンチだよリンチ!その辺の川に沈められるだろ。」
呆れたと言わんばかりの表情で大きくため息をついた吏月は俺に続いて話し始めた。
「お前自分のことモブって言ってるけど身長だってそこそこあるし、今はもっさりした髪型だけど中学時代、バレンタインチョコいくつもらったか覚えてねーのか?!」
「えっと、とりあえず靴箱に靴が入らなくなるくらい。あとは机の下に教科書が入らなくなるくらいと後は、、、結構あったな。チョコは軽くトラウマかも。」
「だろ?! もう友達作りたくないってのは俺も気持ちは分かるけど、お前は元のポテンシャル高いんだから真帆と並んでも遜色ないレベルのイメチェンなんてクソがつくほど簡単だろ?なんなら俺がイメチェンしてやってもいいんだぞ?」
「断固拒否!!目立ちたくないし!!」
「じゃあお前がうかうかしてる間に真帆が他の良い感じの男とくっ付いたらどうする?」
「それは、、、ちょっとだけ嫌かも。」
すると吏月は拍子抜けしたのか力なく苦笑いした。
「人畜無害を貫くのか!!真帆を自分のとこに手繰り寄せるか!!二者択一なんだから片方に振り切っちまえよ。友達作りだって別に無理にする必要ないんだし、大体もう俺と真帆がいるんだから普通に友達作りゃいいじゃんよ。どうせ俺ら2人は絶対に裏切らないんだし、失うもんあるか?」
確かにそれはごもっともかもしれない。人畜無害は貫くにしろこのままどっち付かずで御子柴さんを掻っ攫われる方が辛いかもしれない。それに今は1人じゃないのだ。
「わかった、俺イメチェンするよ。人畜無害はなるべく貫きたいところではあるけど、、、。」
そして俺は腹を括って御子柴さんに見合う男になるべくイメチェンすることに決めたのであった。




