エピソード9
季節が巡るのはとても早く感じる。大人になってもそれは変わらないのだろうか。少なくとも学生の間は四季が巡る度に過去のことや未来のことを考えてしまうのだろう。
今年も早いようで今日から6月だ。
本人から事前に聞いていたので俺は今日、親友が転校してくることを知っている。
始業を伝える鐘が鳴り、朝のホームルームが始まった。まずは担任の芳崎先生(通称ヨッシー)がいつものように入室してきた。
「みんなおはよう。それじゃ、いつも通り朝礼始めるぞー、、、っと、そうだ。今日はウチのクラスに転校生がくる。みんな仲良くしてやるように。」
そういうとヨッシーは教室前方のドアに向かって入るように合図をした。
180を超える身長にスラっとしつつも程よく筋肉のついた体格、綺麗な亜麻色の髪に顔はタレント顔負けの王道イケメン。
そんな転校生がもしもクラスに来たら?
クラスを通り越して学校中大騒ぎになるだろう。
そしてそれが今、目の前で起きようとしていた。
扉をくぐり吏月が教室に入ると教室中がざわつき始めた。
「何あのイケメン!!やばすぎる、、、♡」
「高身長に甘いマスク、、、超メロい、、」
「転校生がイケメンなことって本当にあるんだ、、、」
女子の黄色い叫びとは裏腹に男子勢はというと、、、。
「マジか、、、あんなの反則だろ、、、」
「これじゃラブコメ主人公と脇役Aの構図完成だわ、、、」
「あそこまで色々強いと嫉妬する気も起きないよな、、、」
明らかに何かを諦めている様子だ。分かるよ、自分より遥かに強い奴が現れた時ってそんな感じになるよね。絶望を通り越して一周回って拝むべき対象みたいに思えちゃうアレ。
そんなクラスメイトたちの声を宥めるように大きく咳払いをした吏月がついに自己紹介を始めた。
「えっと、どうも〜。今日からこのクラスでお世話になる藤峰吏月です!この前までドイツに留学してたんですが諸事情で帰ってきちゃいました!!好きな事はゲームと運動、小説読んだりアニメ見たり、あとは漫画も好きです!!アウトドアもインドアもどっちも行けちゃうんで気軽に仲良くしてくれると助かります!!」
そんな感じで結構喋った後、自己紹介を終えた吏月はヨッシーに促されて座席に着いた。これで自己紹介タイムが終わったと思いきや一度席についた吏月が突然手を挙げて立ち上がった。
「そういえば言い忘れてたけど、そこの卯月と御子柴とは旧知の仲なんで!!みんなまとめて仲良くしてくれよな!!」
そしてクラスに2度目のざわつきが起きた。
「おいおい待てよ、、、あんなチートキャラみたいな感じで更に御子柴さんとも仲良かったのかよ、、、」
「降参だ降参!!もう帰って寝る!!」
「もう一周回ってくっついて欲しいまであるよな、、、」
「なんか卯月と藤峰って聞いたことあるような気が、、、気のせいか!!!」
男子がこんな声を上げる中、女子はというと意外にも"納得"と言った表情をしていた。
流石は御子柴さん。人当たりがよく性格もかなり良いが故に妬まれる様子は一切ないようだ。
そうして大人しく席に着いた吏月は俺と御子柴さんそれぞれに"よろしくな"と言わんばかりのアイコンタクトを取ってくる。
「またよろしくな、吏月。」
「ようこそ!藤峰くん!」
「おう!2人ともよろしくな!」
そうして3人で目配せをして俺たちの新たな学校生活が幕を開けたのだった。




