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ポイント活用で豊かな異世界ライフ  作者: 朝倉瑞穂
【第1章】

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8/23

第8話 2日目 - 朝から5頭はつらいでござる ニンニン

 鳥の声で目が覚めた。時計を見ると午前6時。昨日は午後8時頃には寝たので、10時間は寝たことになる。自分では気が付かなかったが、疲れていたんだろうか。HPもMPも100%復活している。

 身体を結んでいたツタを外して起き上がろうとしたが、身体の節々が痛い。木に跨がったまま10時間は、さすがにハードだ。木から降りて、背伸びしたが、リアルで腰がバキバキなった。「あいたた」、今日は厳しい一日になると覚悟したが、ふと思いついた。ポーションを作ってはみたものの、まだ試していない。[収納1]からヒールポーションとキュアポーションを取り出し、一気に飲んだ。節々の痛みがスッと無くなり、身体の内から力が湧いてくるようだ。最高のエナジードリンクだ。今日も一日頑張ろう! ちなみに、ポーションの味は、普通。


 アポの実を2個、清水をカップ1杯飲んで、早速、少し薄暗い道を北に向かって歩き出す。[夜目]スキルが効いているのか、暗い割には良く見える。歩き出して気づいたのだが、昨日、一緒に北に流れていた清水の川が無くなっている。どこかで方向を変えたのだろうか。今更、確認に戻る気もしない。時計の方位磁石で確認したが、僕の進んでいる方向が北で間違いない。


 入学祝で、祖父からプレゼントされた多機能型時計を愛用している。曜日・日付や詳細な時間を表示する小さな液晶はあるが、基本的には時針、分針、秒針を持つ3針式だ。側面のスィッチを押すと秒針が北を指す。しかし、この世界で秒針が指す方向が北で間違いないのだろうか。南かもしれない。そもそも、東西南北の概念が、こちらでは違うかもしれない。ビギンの街についたら、1日の時間、月・曜日制も含めて、図書館きっとあるはずで調べてみよう。


 歩き出して直ぐに、いきなり全身にゾワッと鳥肌が立った。全ての感覚が上に逃げることを要求したので、何も考えずにそばにあった木に[跳躍」した。驚いたことに5mの高さの枝に着地した。人間離れした身体能力になっている。下を見ると、ラージフォレストウルフがこちらの方へ走ってくる。5頭も! 昨日、襲われた時、爪撃で足の肉をそぎ落とされたことを思い出し、更に高い枝に[跳躍]した。


 木の根元にたどり着いた5頭のラージフォレストウルフは、僕にめがけて一斉に[咆哮]した。回りの空気がビリビリと震え、身体の力が抜けていく。これが[咆哮]の効果か?僕は石槍を手にし、今度は木から落ちないように用心して、1頭に向けて[投擲]した。狙った頭は外れたけど、肩口へ深く突き刺さった。石槍を[収納]しようとしたが、10m以上離れているらしく、刺さったままだ。次に棒手裏剣を取り出し、残りの4頭に[投擲]したが、警戒していたらしく、躱されてしまった。


 さて、どうしよう。薙刀で接近戦も考えたが、相手は4頭いる。今の自分の実力で戦える自信がない限り、リスクは避けたい。考え抜いたあげく、答えにたどり着いた。「毒肉作戦」(これしか無いんかい)。

 仲間内の肉は、食べないかも知れないので、フォレストウルフではなく、ホーンラビットの肉を使った。ブースの毒を振りかけ、木の下に放ると、1頭のラージフォレストウルフがすかさず飛びつき、毒肉を飲み込んだ。その途端、転げ回って苦しみ、直ぐに動かなくなった。「毒肉作戦」楽勝!

 直ぐに3つの毒肉を作り、木の下に放った。しかし、今度は見向きもしない。死んだ仲間の様子を見て、危ない肉だと学習したようだ。こんなことなら、いっぺんに4つの毒肉を放ればよかった。残り3頭、どうするか。


 僕のスキルは、[収納][鑑定][回復][錬金術][忍術]の5つだが、戦えそうなスキルは「忍術」だけだ。ただし、忍術は本来、潜入、情報収集、情報攪乱、遁走、たまに暗殺の技術だ。正面切って戦うようなスキルじゃない。今のような状況で[忍術]を使うとすれば、逃げに徹することが、一番の選択肢だ。

 それを前提に忍術スキルを見ると、[神足]がある。常人には不可能なくらいに速く、静かに、遠くへ移動する足法だ。武術でいうところの「縮地」かな。

 また。[遁術](逃げる術)の中に[木遁]がある。中学時代に[忍術]の勉強をした時、この[木遁]中に[木走]の術があったのを覚えている。木の幹、枝、草むらを縦横に走り抜ける走法だ。


 [神足]、[木走]とも、実際に使ったことはないけれど、[上忍]の限界まで到達しているのだから、イメージするだけで使えると思う。多分、使えると思う。迷ってもしょうがない。2つのスキルの合わせ技で、このピンチを駆け抜けよう。僕は、薙刀を手に、一気に木を駆け下りた。木から跳んだのではなく、文字どおり、木の幹を走って降りたのだ。

 スピードが速くなったためか、ラージフォレストウルフの動きが、少しゆっくり見える。これならいけると思って、1頭のラージフォレストウルフの首元を薙刀で切り付けた。

 これが、不味かった。[神足]は,微妙に身体の重心を移動させ滑り走る走法だ。薙刀は首元深くに食い込んだが、その反動で[神足]のバランスが崩れ、僕は凄いスピードで、前方へ転げ飛んだ。そして、大木の根元にぶつかって止まった。


 「かっはぁ」、背中をしこたま打った。満足に息ができない。前をみると、2頭のラージフォレストウルフが迫ってきている。

 身体が動かない、このままでは危ない。

 なんとかしないと。

 とりあえず、防御だ。

 僕は苦し紛れに、収納している「鉄の木」を盾にするために[取出]した。


 幸運なことに、本当に幸運なことに、[取出]した最初の1本が先頭を走っているラージフォレストウルフの頭に直撃した。そして、次々と身体に直撃し、ラージフォレストウルフは動かなくなった。

 後ろを走っていた2頭目は、急ブレーキを掛けて立ち止まり、そしてこちらを睨み付けた。数秒目があった後、振り向いて走り去った。


 逃げ去ったと言うことだろうか。ほっと一息ついて、[ハイヒール]を唱えた。骨でも折れたかと思った痛みが瞬時で引いていった。そして立ち上がろうとした。しかし、立てなかった。完全に腰が抜けていた。身体がガタガタ震えていた。

 元の世界で、命が奪われるような恐怖は体験したことがない。この世界に来て、身体は強くなったようだが、心は異常な事態に対応できていない。んっ!状態異常? [ハイキュア]を唱えたら、心がスッーと楽になり、震えも止まった。スキルの力恐るべし。これがあったら、食事が3日間喉を通らなかったあの時も、もっと楽にやり過ごせたのに。


 こんな場所は、はやく離れたかったので、起き上がり、清水を1杯飲んだ。身体がシャキッとして、力が湧いてくる。

 まずは、[収納]だ。鉄の木、石槍、手裏剣、薙刀を[収納]し、次に4頭のラージフォレストウルフと、見向きもされなかった毒肉3つを[収納]した。

 ラージフォレストウルフは[解体]し、毒肉で死んだラージフォレストウルフの肉は[廃棄]した。それから、金剛杖を手に、北に向けて歩き出した。


 歩きながら、先ほどの戦いについて考えた。

 ラージフォレストウルフの襲撃については、事前に察知することができた。そして、5mの高さを楽々[跳躍]できた。感覚や身体能力がかなり強化されている。

また、[遠見]、[夜目]、[跳躍]、[投擲]、[神足]、[木走]の[忍術]スキルは、一度も訓練したことがないのに、意識するだけで使えることができた。これは、この世界の戦いにおけるすごいアドバンテージだ。

 反面、戦い慣れしていないことも痛感した。毒肉を一度に4つ放っていたら、4頭とも仕留められたかもしれない。[神足]も使っている時にバランスを崩し転がる等、危ない場面もあった。とにかく、スキルや身体能力を熟知しなければならない。

 また、持っている武器の数・種類が少ない。「鉄の木」から10cmの針を100本作っていたのに、それを飛ばす道具を作っていなかった。例えば、弓矢やニードルガンのような道具があれば、もっと楽に、遠距離攻撃をしかけられたはずだ。そして、今一番作らなくてはいけないのが[忍刀]だ。近接を薙刀で戦っていたが、[忍術]の[忍具]にあがっているのは、薙刀ではなく[忍刀]だ。おそらく[忍刀]の方がスムーズに使えると思う。


 今後やることとしては、まず[忍刀]を作ること。次に「鉄の木」を中心に素材集めをすること。歩くのと平行して、身体能力確認や、スキルの使い方を習熟すること。とりあえず、3つの方針を立てた。

 この物語は、忍者が異世界で無双する話ではありません。あくまでも「ヒカル」の願いは、錬金術スキルでそこそこに儲けて、趣味に走ったスローライフを送ることです。とはいえ、そういう奴に限って、あまたのもめ事に巻き込まれることになるのですが。

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