第39話 大陸の歴史 - そんなことより、昼ご飯
お盆があったり、夏風邪を引いたりと、今回は書き上げるのに苦労しました。
でもいちばん苦労したのは、スプリングさんの話が長かったこと。
この作品、Berryzの回顧とハロプロの布教のために書いているのですが、読んで頂いている方で、ハロプロのフアンの方、いらっしゃるのでしょうか?
ホログラムが構築されている間、僕は違うことが気になっていた。スプリングさんが言った、「私も200年以上勉強して」の一言。ということは、スプリングさんは200歳以上と言うことだし、そうなると、ライタップルさんは、いくつくらいなんだろう。鑑定かけたら、失礼だろうな。
すぐに、魔法陣の円は拡がり、僕たち3人を包み込んだ。
「これから、この魔法陣の中で話すことについては、一切他言しないことを厳守すること。もし、他言しようとすれば、喉は枯れ、手足は大きく震えることになる」
「「「守ります」」」
魔法陣の仰々しさに比べれば、契約の言葉は、意外にあっさりしてた。
契約が終わった後、スプリングさんは、静かに語り始めた。
「まず最初に、この世界の歴史を知っていただく必要があります。この歴史は、特に、秘密にされている訳ではありません。ただ、ほとんどの人は、おとぎ話だと思っているか、大昔のことと忘れ去っているだけのことです」
「エルフに伝わる記録では、この世界は、5000年以上前から、エルフ族、魔族、獣人族、人族が共存して生きてきたとあります。エルフ族や魔族は魔素の操作、いわゆる魔法に長じ、獣人族は身体能力が高いという特徴がありました。これに対し、人族は特に優れた特徴はありませんでしたが、繁殖力が高く、世界の人口の7割を占めていました」
「エルフ族は大陸の南に、魔族は北に、獣人族は西に、人族は東に国を建て、お互いを認めつつも牽制しながら、種族の歴史を紡いでいました。そして、この世界は魔素に富んでおり、それらを縦横無尽に使いこなせる、エルフ族、魔族は一目置かれ、饑饉、大災害などの厄災が起こる度に、この2種族が魔法の力で解決していたので、長い間平穏な時代が続きました」
「ところが、3000年ほど前から、この平穏のバランスが崩れ始めました。大陸中の森を中心に魔素が増加していったのが原因です。増加した魔素は、動物の身体に入り込み、濃縮され魔石になりました。すると、体内に魔石ができた動物は魔獣へと変貌したのです」
「魔獣に対して、人族は為す術も無く、蹂躙される一方でした。獣人族は、その身体能力で魔獣と果敢に戦いましたが、大型魔獣が現れると、苦戦していました。一方、エルフ族、魔族は、魔法により対抗しようとしました。新たな攻撃魔法の創造、複数人による連携魔法の開発等々、様々な試みがなされました。しかし、戦いは一進一退を繰り返し、果てしなく続きました」
「2500年ほど前には、獣人族や人族の人口は半数近くになり、本来戦いを好まないエルフ族は、数こそ減らなかったものの、身も心も疲れ果てました。そこで、エルフ族は、戦うよりも、魔獣を森から出さないような、大規模結界魔法の開発を進めることにしました」
「一方魔族は、魔獣自体を使役してしまう、強力なティム魔法の開発を進めました。この開発は、小さな魔獣のティムから始め、徐々に大きな魔獣のティムへと進み、計画は、成功するかと思われました。ところが、ティムすることにより、なんと魔族と魔獣が同調し合うようになりました。そして、魔獣の魔素が魔族の体内に流れ込み、魔族の身体に魔石が出来るようになりました。それまで、理性的であった魔族が、魔獣の様に凶暴化し、気が付けば、エルフ、獣人、人の3部族は、魔石魔族と魔獣を相手に戦うような事態になりました」
「3部族は、北から魔石魔族・魔獣の侵攻、東・西・南の森からは、魔獣の侵入と悲観的な状況になりました。魔族の2割はティム魔法を使わなかったため魔獣化を免れており、大陸最北の地に退避していました。この最北の魔族は、このままで行くと、いつかは、大陸全てを魔石魔族・魔獣が占領し、自分たちの命も危うくなると危機感を抱き、ついには、戦うことを決意したのです」
「最北魔族の参戦により、押され気味だった私たちは、どうにか持ち直し、大陸の至る所で戦闘は行われるものの、膠着した状態が続きました」
「大陸の北から順に、最北魔族 → 魔石魔族+魔獣 → エルフ+獣人+人族 → 魔獣の森 と言う、4層の状況だったんですね」
「簡単に言えば、そう言うことなんだけど、魔獣は森の至る所から湧いて出てくるので、背中を気にしながら、手強い魔石魔族・魔獣を相手にしなければならない状況は、片時も気が休まることはなかったそうよ。何よりも、おかしくなった同胞を手に掛けなければならない最北魔族の悲痛な叫びは、大陸全体に暗い陰を落とし、戦いが始まってからの500年は、暗黒の時代と呼ばれているわ」
「スプリングさんも、その叫びを覚えているのですか」
「ヒカル、その質問は失礼というより、無知としか言いようがないわ。エルフは長生きしても1000年。この話は、口承で伝えられたものよ」
「済みません。田舎の育ちで常識がないものですから。でも、暗黒の時代が500年と言うことは、暗黒を終わらせる何かがあったんですね」
「正解。常識はないけれど、頭は良いようね。今から2000年前に、大陸のあちらこちらにダンジョンが現れたの」
「ダンジョン?」
「そんなに不思議そうな顔をしないで。ダンジョンは、力の無い人族に取って福音と言える出来事だったの」
「最初にダンジョンが出現した時は、全ての種族が混乱しました。特に、ダンジョンの半分が、東の人族の国に出現したため、人族は恐れおののいていました。しかし、今と違ってダンジョンから魔獣が出て来ることはなかったので、当面は、放置しても問題がないことがわかりました。エルフ族、最北魔族、獣人族は、戦うのが精一杯でダンジョンに興味を持つ余裕がなかったのですが、戦いにほとんど役に立たなかった人族は、ダンジョンに興味を持ち始めました。ダンジョンはその深さによって魔獣のレベルが上がるため、弱い人族が少しずつレベルを上げるのに最適なシステムだったのです。勿論、ダンジョン探索で命を落とす者は多かったのですが、数だけは多い人族だったので、徐々に深い層まで降りて行ける者が現れました」
「当初から、ダンジョンの魔獣を倒すと、素材や魔石が手に入ることは知られていました。そして、今もその仕組みは解明されていませんが、5層目以降の魔獣からは、武器・防具、魔道具がドロップすることが分かりました。そして、何よりも、人族だけが使用できる魔法書が出現するようになったのです」
「エルフ族と違い人族は、全ての物事に興味を持ち、コツコツと努力を積み上げる気質を持つため、ダンジョンが出現して100年経つ頃には、スキルさえ身に付け、私たちと一緒に戦える人族が多数出現しました。人族は、ダンジョン攻略を冒険者育成システムと連動させ、冒険者のレベル向上に大きく貢献しました。また、ダンジョンで倒した魔物から入手できる優れた武器・防具の分析も進み、[錬金術]スキルを得た者が、それらの複製、向上に寄与できる様になりました」
「ようやく互角に戦えるようになって、更に100年、今から1800年前に、長い戦いを終わらせる転機が訪れました。人族に、勇者、賢者、聖者が複数生まれたのです」
「勇者、賢者、聖者とはどのような人だったんですか?」
「当然、ステータスには、それらの称号が表示されていました。エルフでも特に鑑定能力が高い者が調べたところ、持っているスキル・魔法が、概ね
勇者:[身体強化]、[剣術]、[回避]、[防御]、[俊足]
賢者:[火魔法]、[水魔法]、[風魔法]、[土魔法]、[金属魔法]
聖者:[回復]、[浄化]、[鑑定]、[予知]、[魅了]
など、最高で5つのスキル・魔法を持ち、クラスも上級だったそうよ」
今回の40人の転移者は、スキルを5つまで選べたので、勇者や聖者などが生まれているかもしれない。
僕も、持っている魔法書を全部使って、上級まであげたら、賢者の称号がつくのだろうか。
「勇者、賢者、聖者を組み込んだパーティーが5つ生まれ、そのパーティーが最前線に立って戦うと、徐々に戦線を北の方に押し上げ、勝利が見えてきたのです」
「しかし、正常な判断が出来なくなった魔石魔族は徹底抗戦をして、戦いは激しさを増しました。ついに、魔石魔族は大陸最北に逃げ込み、その時、最北魔族は根絶やしにされました。ここにきて、私たちの中では、この戦いに和睦などない、魔石魔族は滅亡させべし、との気持ちが大勢を占めました。そんな中、5つのパーティの中から、大勇者、大賢者、大聖者のパーティーが生まれたのです」
「私たちは、最北を目指して進軍しました。大勇者の一太刀は、目前の敵をなぎ倒し、大賢者の火魔法は、飛び掛かる魔獣を焼き尽くし、大聖者の癒やしの光は傷ついた味方の傷を癒やし新たな活力を与えました。そしてついに、魔石魔族とティムされた魔獣を滅ぼしたのです」
そっと時計を見ると、午前11時だった。スプリングさんの話は、あと1800年分もあるし、まだエルフの秘密・問題の話は出ていない。昼食に間に合うだろうか。ソワソワしている僕に気付いたのか、スプリングさんは、ちょっと恐い目で、
「もう少しでこの話は終わります。ここから本題に入るので、心して聞いて下さい」
「これで、大陸は元の平穏を取り戻すかと思われたのですが、話はそううまく行きませんでした。大戦が終わってすぐに、大勇者アクバルは、大陸の北部つまり元の魔族領を自分の領土として、国を建てると宣言したのです。同様に、聖者モモックが大陸の中央部、賢者サクラが大陸の南部を自分の領土とすることを宣言しました。それを見た他の4パーティーも、パーティー・マグノリアが大陸の北西部を、パーティー・カメリアが北東部を、パーティー・ティアーズが南西部を、パーティー・キュッテが南東部を次々と自分たちの領土だと宣言し、国を建てたのです」
「当然、エルフ族、獣人族は強く抗議しました。『魔素が濃くなってから魔石魔族を滅ぼすまでの1200年、無力な人族を守りながら戦ってきたのは誰なのか。この勝利は、決して人族だけのものでは無い』という私達の訴えも、相手にされませんでした。それだけでなく、大勇者アクバルが建てたアクバル帝国は、私達を、人族より低い身分に位置付け、隷従を求めてきたのです」
「また、大聖者モモックは、人族こそが神に愛された種族であり、他の種族は不要であると、自らの国をモモック聖教国と名乗り、エルフや獣人を排斥しました」
「エルフ族、獣人族は手を組んで、アクバル、モモックに対抗しようとしましたが、既に戦う能力を手に入れ、数も勝っている人族と戦えば、魔族のように滅亡する可能性もあるので、断腸の思いで断念しました」
「幸い、アクバル、モモック以外の国は、まだ、人族以外の種族にも寛容で、特に、大賢者サクラが建てたサクラ王国は、魔法の使い手であるエルフ族には友好的だったので、エルフ族は、サクラ王国の南に位置するビギンの森の更に南にある『大森林』に移住することにしました」
「一方、獣人族は、アクバル、モモック以外の国で、人族と一緒に暮らし始めました。しかし、他民族に寛容な国であっても、居住と労働などの基本的な権利を認めると言うことだけで、やはり待遇は、人族より劣っており、貧困から身売りをする獣人も出てきました。そのような事から、獣人は、次第に都市を離れて、各地に所在する森に居を構えるようになりました。森で魔獣を狩って素材や魔石を売ることで、生計を立てようとしました。人族も、魔獣の脅威が少しでも減ることは有り難いことであり、素材や魔石も、食糧や魔道具の開発に重要だったため、獣人への対応を改める者も出てきました。また、弱い獣人は、逆に魔獣に殺されることもあり、獣人の中では、次第に強さを重視する風潮になり、強者が弱者を守護・支配するという種族に変わって行きました」
「自然を愛するエルフ族にとって、広大な『大森林』は、食糧や水、薬草が豊富で、気候も穏やかであったため、居住には最適な地域であるということが分かり、殆どのエルフが、移住を希望しました。しかし、ここで大きな問題が生じました。大森林へ行くためには、ビギンの森を通らないといけないのです。ビギンの森は中央に行くほど、魔獣のランクがあがり、ドラゴンさえも生息しているのです。外縁部に沿って進むと、深い渓谷に突き当たり、結局は中央の道を渡って進むしか方法はなかったのです。」
「エルフ族でも、攻撃・防御能力の高い者が慎重に進めば、『大森林』に辿り着くことができましたが、そのような者は、ごく一部でした」
「深い渓谷に橋を架けることも検討しましたが、渓谷には、ハーピーやワイバーンが生息し、橋を渡っている時に見つかれば、防ぎようがありません。船で大陸の南へ回り込むことも考えました。しかし、船乗りの話によると、大陸の南海岸は、常に波が荒れており、危険な岩礁が取り囲んでいるとのことでした。岸は断崖絶壁が続き、港になるようなところも無いとのことでありました」
「ことここに至って、通常の手段での移住は諦めました。そして、次の案として浮上したのが、[転移扉]を利用しての移住でした。運良く、「転移扉]の魔法陣を使えるエルフが5人見つかりましたので、アクバル、モモック以外の各王都に『エルフ憩いの家(後のエルフ組合)』を設け、そこに[転移扉]を設置しました。サクラ王国の王都に[転移扉]を設置したエルフは、複数の仲間に守られビギンの森を抜け、『大森林』の中央に辿り着き、[転移扉]を設置しました。当然、帰りは、瞬時にサクラ王国の王都に転移帰還しました。他の王国に[転移扉]を設置したエルフも、次々とサクラ王国の[転移扉]を利用して、『大森林』の中央に[転移扉]を設置し、各王都の『エルフ憩いの家』に帰還しました。こうして、エルフであれば、どの国からも安全に『大森林』へ移住できるシステムが完成し、数年かけて、エルフの9割が移住を完了しました。そして、この頃には、大規模結界魔法が完成し、『大森林』に住む全てのエルフが力を合わせ、『大森林』を結界で覆ったのです。この結界は『大森林』に入れないだけでなく、入り口付近をぐるぐると回ってしまう[迷いの結界]と呼ばれました。[転移扉]が認めた者でなければ入ることができない『大森林』は、後に『エルフ国』として、アクバル、モモックを除く各国からエルフの統治が認められました。
「[転移扉]は、設置者が死亡すると消えてしまうので、私たちは、500年毎に設置者を更新しました。そのために、特に魔力が強い者を後継者として養成しました。今の[転移扉]は、300年前に設置した物で、順調に稼働していました」
「ところが、1ヶ月前に事件が起きたのです。マグノリア王国のエルフ組合に設置していた[転移扉]が、忽然と消え去ったのです。[転移扉]は設置者が移動させない限り動かないので、私たちは、設置者のムラーノ・シュドに話を聞こうとしました。しかし、彼女もまた、姿を消していたのです」
「何故、シュドは姿を消したのか。私たちは、彼女の姿を捜すと同時に、その理由を考えました。シュドがエルフ族を裏切るとは考えられない。エルフとはそう言う種族だから。じゃあ、誰かに脅されているのか。シュドはエルフの中でも強者だ。彼女を力尽くで従わせることは、そう簡単じゃない。では、弱みを握られたのか。600年も生きているエルフに、弱みはあり得ない。600歳のエルフは、家族愛も希薄になり、家族を人質に取っても、それをもって従わせることは難しい。では借金か? エルフにとって借金は弱みとはならない。数百年かけてでも少しづつ返せば良いだけだ。返せないような額であれば、エルフ国に逃げ込み、自給自足の生活を送る手もある」
「1つ気になる点は、シュドが消える1ヶ月前から、マグノリア王国のエルフ組合の周りを、アクバル帝国の軍部がうろついていたことです。まさか、他国で軍部が他国民を拉致するという暴挙は考えられないことですが、帝国の軍部の仕業と考えると、シュドといえども、不覚を取ることは考えられます」
「しかし、私たちは、シュドの行方を追うあまり、重要なことをおろそかにしていました。マグノリアの[転移扉]が消えて3日後、シュドがエルフ国に設置した[転移扉]も消え去っていたのです。当然それが出来るのは、設置者のシュドだけですが、彼女が、エルフ国にある他の[転移扉]を使ってエルフ国を出た形跡はありません。シュドはエルフ国内に止まっている。彼女の所在が分かり、私たちは安堵しました。それから国内のエルフを動員して、シュドと[転移扉]を捜査しました。[転移扉]はともかく、シュドがいれば、エルフ間の[気配察知]で感知できるはずですが、全く気配を感じません。そして、私たちは恐ろしいことに気付いたのです」
「シュドの気配が感じられないということは、シュドはエルフ国にいないということです。であるなら、シュドは、エルフ国の[転移扉]を[隠蔽]し、マグノリアから消失した[転移扉]の先に転移しているはずです。そして、もしそこがアクバル帝国であったら、そして、もしシュドが帝国の支配下にあったら、帝国の軍隊は、自由にエルフ国へ入り込むことが出来ると言うことになります」
「これが真実なのかは分かりませんが、その可能性があるのならば、対応策を講じる必要があります。ただ、外からの侵略であれば、如何様にも対応できますが、これは、内側からの侵略です。侵略する方は、何時でも好きな時に侵略できるのですが、侵略される方は、昼夜問わずに対応する必要があります」
「私たちは、戦える能力の高いエルフを総動員しました。それらを3グループに分け、3交代制の監視体制を敷きました。[転移扉]を設置しているエルフ国の中央から放射線状にエルフを配置したのですが、1ヶ月近く監視しても敵の動きはありません。エルフ国内といえども魔獣はいます。それと戦いながら監視を続けることは、想像以上に負担が大きく、いつまで続ければ良いのかと言う不満が出始めました。また、帝国軍の仕業であることにも懐疑的で、ただ単に、シュドが個人的な理由により雲隠れしているだけではないかと考えるエルフも出てきました。」
「身も心も疲弊しているエルフにとって、この監視体制は限界が近づいており、早急に対策を講じる必要が出てきたのです」
「それが、オートマタによる監視体制なのですか」
二人のエルフは無言で頷いた。
言いたいこと、聞きたいことは、沢山ある。オートマタ以外に監視方法はないのかとか、[隠蔽]されている[転移扉]を見つけ出すことは、そんなに難しいのかとか。でも、いちばん言いたかったことは、こんな長い話、必要なの? 1ヶ月前の事件から話せば良かったのでは? 時刻は11時45分、昼食に遅れてしまう。
「事情は良く分かりました。オートマタの器作成に協力しましょう。エルフの等身大の器を試作しますので、小さい試作品は返して下さい。等身大の試作品で研究して頂き、オートマタが完成する見込みが立てば、量産体制に移ります。価格はその時に、話し合いましょう」
「先ほどの話を聞いていながら、お金を取ろうと言うのですか」
ライタップルさんが悲しい顔をして言った。そりゃ、お金取るでしょう。10体ぐらいだったらともかく、監視体制の範囲を考えれば、万単位で器が必要でしょう。そんな数を無償提供していたら、ももちに何言われるか分からない。
「とにかく、明日、等身大の試作品を持ってきます。今日はこれで失礼します」
「これだけのものを、1日で作れるのですか?」
スプリングさんが、驚いた顔でこちらを見る。また、やっちまったみたいだ。
「いや、作りかけの物があるので、明日には、何とかなりそうです」
と、苦しい言い訳をして、そそくさと魔法ギルドを出た。これから、ご飯食べて、その後は、楽しいレベル上げだ。




