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第33話 みんな大好き、焼肉パーティー - これは、食の大革命や~

 焼肉パーティーの準備は、[料理]スキルを持つ2人に任せて、リビングに残り、パーティー開始まで何をしようかなと思っていたら、ももちが、話しかけてきた。

「ねぇ、ヒカル、アポの実の種とバナの実の皮は何に使うの?」

「アポの実は魔物寄せ、バナの実はスリップ油を作るのに使うんだ」

「スリップ油って何?」

「例えば、悪の軍団に襲われそうになった時、そいつらの前にスリップ油を蒔くと、ツルツル滑って立ち上がれなく油だよ。多分。」

「それって、摩擦係数が無くなるってこと。逆に、スノボーの様な板の裏にスリップ油を塗ったら、快適に滑れるかもしれない。ねぇ、スノボーの両サイドとテールを少し跳ね上げて、その部分を強化することってできる?うまくブレーキをかけることができたら、坂道で使えそう。それと、鉤縄と槍も欲しいの。」

 [収納1]で指定通りのスノボーをチャッチャと作って、鉤縄と槍は以前作った物を渡したら、

「えー、凄い。なんでも直ぐに作ってくれるのね。ヒカルって便利。いつも横にいて、欲しいもの作ってよ」

「だったら、結婚する?」と、からかったら、

「ばっ、馬鹿なこと言わないでよ。10年早いわよ」

「じゃあ、10年たったら結婚する?」と、追い打ちをかけると、

「その頃は、ヒカルもハゲでお腹が出ているわよ。そんな人とは結婚しません」

と、顔を真っ赤にして、キッチンに駆け込んでいった。

 もしかして、ももち、見かけによらずウブなのか? 弱点だったら面白い。暇があったら試してみよう。


 さて、アポの実から魔物寄せ、バナの実からスリップ油、ブースの木から猛毒が出来るのは分かっているが、ちゃんと抽出して容器に保管することはやっていない。ここらでちゃんと作製しようと思う。

 まず、魔物寄せについては、アポの実を採取した時、落ちて腐っている実から種子だけ[収納]していたので、それから抽出したら、ポーション容器3本分の液体を作ることができた。

 猛毒については、[収納1]のブースの木から抽出したが、容器1本分のみ作った。それだけでも、相当数の殺傷能力がありそうだ。

 スリップ油については、手持ちのバナの実の皮が少なかったので、まだ手を付けていないバナの実を50本程使って皮を取り、容器5本分作った。

 魔物寄せが緑色、スリップ油が薄い黄色、猛毒が黒色なので、ポーションと区別はつくが、その内、芸術スキルを持つニヘイちゃんに頼んで、格好良いラベルを作ろう。


 皮を剥いたバナの実、50本分が残ったが、名案を思いついた。キッチンに行ってミルクと、ついでに、ルルの実を貰ってきた。

 さっき、かき氷製造機を作った要領で、手回しのミキサーを作った。そのミキサーに、スマホで調べたレシピどおりの量のバナの実とミルクと氷を入れ、ハンドルを回した。手動の分、大変だが、回す刃がミスリル製なので、簡単に氷が砕ける。適度なところで回すのを止めた。蓋を開けると、バナナスムージが完成していた。

 次に、アポの実と砂糖と水で、あらごしリンゴジュースを作った。

 ルルの実は、ミキサーよりもジューサーかと思い、[収納1]に入れて、そのままジュース部分を抽出し、ポーション容器に詰めた。きれいなオレンジ色だ。



 バナナスムージーとあらごしリンゴジュースについては、試飲して貰おうと、小さめなコップに注いで、キッチンに持って行った。

 ももちとさきちゃんは、普通に美味しそうに飲んでいたが、ニヘイちゃんは、

「何ですか、この飲み物。普通のバナの実ジュースじゃない。氷が細かく砕いてあって、冷たくて、トロリとしていて、ミルクとの調和が素晴らしい。初めての食感です。夏に売りに出したら、お客様が殺到しますよ」

「でも、ヒカルさん。これって、ミキサーが必要ですよね」

「さすさき。ジャーン、これを見て下さい。ヒカル製手動ミキサー。ゆくゆくは魔石を使って、自動化する予定」

「えー、ヒカルさん凄い。一緒にいたら、いろんな調理器具を作って貰えそう」

「だったら、けっこ」と、言いかけたら、ももちから口を塞がれた。

「ヒカルー、さきちゃんがその気になったら、責任取れるの。今後、この冗談は封印すること」


 ワイワイしながら準備していると、玄関のノックが聞こえてきた。

「少し早すぎたみたいね、私が一番乗り?」

 ももち、ビンゴ。招待していないけれど、当然のように来ちゃったよ、ホーマさん。

「ヒカル、喉が渇いたわ、お水頂戴」

 いつもの清水でも良いけど、ここはひとつ、バナナスムージーを試飲してもらおう。

「ホーマさん、これ、バナの実から作ったジュースです」

 見た目が、ジュースとはかけ離れており、ホーマさんは、いつものようにゴキュゴキュとは飲まなかった。一口飲んで、味わっていた。

「何、これ。氷が細かく砕いてあって、冷たくて、トロリとして、ミルクとの調和が.... これ、売りに出したら、大儲けよ。レシピ教えなさい」

 さすが、商人、ニヘイちゃんと同じ発言。

「レシピは、バナの実とミルクと氷だけです。ポイントは、これを作る道具です。」

「その道具、明日、ギルドに持ってきて。また、申請するわ」

 これで申請する物が3つになった。かき氷製造機も申請することになるのかな。


 それから、続々とパーティー出席者が集まってきた。エバちゃんには、やはり父親が付いてきた。パーティー・絶好調はワインを手土産にやって来た。採取した素材に結構な値が付いたので奮発したそうだ。最後にメイちゃんがやって来て、全員が揃った。

 この世界のパーティーは、参加者が揃わなくても、五月雨式に始めるそうだが、今回は、全員集まってから食堂に移動し、一斉の乾杯でスタートした。肉は食堂の端に素材を並べ、バーベキューの様に、みんなで料理することにした。


「二日連続でフォレストタイガー肉が食えるとは、ヒカル最高だぜ。エバがついて来て欲しそうだったので参加することにしたが、ラッキーだったぜ」

「ヒカルありがとう。お昼に食べ損ねたボアの代わりに、こんなに大きな高級肉が食べれるなんて、最高」

「ヒカル様、すみません。お父さんが勝手について来ちゃって」

「ヒカル様、すみません。私、うっかり口を滑らして。お母さん、一緒に行くってきかなかったんです。」

「ヒカル、お酒も良いけど、さっきのバナの実のジュース頂戴。はまってしまいそう」

 リクエストがあったので、手動ミキサーと材料を取り出して、みんなの前で実演した。これだけのことなのに、凄い拍手喝采が起きた。さらに、一口飲んで、「ホーウ」という賞賛の声があがった。

 ここまで来たら、かき氷のお披露目だ。[収納1]からかき氷製造機と、ルルの実ジュースを取り出し、[収納2]から氷を取り出して、みんなの前で、シャカシャカと氷を削った。ルルの実ジュースをかけて、まずは、ホーマさんに渡した。

「なに、これ。フワフワの氷が口の中で溶けていく。ヒカル、その道具も申請しなさい」

 次々と作って、次々に渡していく。

「砕いた氷じゃなくて、削った氷か。何もかけなくても、酔い覚ましに最高だ。よし、決まった、ヒカル、エバと結婚しろ」

「何を言っているの。ヒカルは、メイと結婚するの」

 親が好き勝手に言っているけれど、当の本人達は、ニヘイちゃんと3人で、かき氷を手に盛り上がっている。


 今日用意した酒は、ワイン数本だけだったので、心許なくなってきた。盗賊の副首領の魔法鞄に入っていた酒・ワインを鑑定すると、樽に入っていた酒はブランデーで、去年できあがったばかりだ。ワインも同様にできあがって1年しか経っていない。鑑定では20~30年熟成を要すると出ていた。ちょっと熟成させてみようと、[収納2]の温度を15℃に設定し、時間を2秒で1年に設定した。樽1個とワイン10本を入れて、待つこと1分で熟成30年相当のブランデーとワインが完成した。

「新しいお酒、追加しました」

と、みんなに呼びかけると、トーベンさんが聞いてきた。

「おい、ヒカル。樽に入っている酒はなんだ」

「ブランデーです」

「ブランデーだと、最近、北の国が新しく作った酒だな。ワインを温めて作る酒らしいが、風味もなんにもあったもんじゃない。どれ、一口分だけくれ」

 そう言って、ブランデーを一口、口に含んだトーベンさんは、

「何じゃこりゃー。強い酒だ、喉にカーッと来る。でも、懐かしいワインの風味が喉の奥に拡がる。結構イケるじゃないか。ヒカル、もっとくれ」

「仕事上、新しいお酒はチェックしたんだけど。そんなに美味しいお酒じゃなかったはず、あら、良い匂い。えっ、何、このまろやかな味。ヒカル、これどこで手に入れたの。」


「何、このワイン、美味しくて表現できないわ。去年、品評会で1位を取ったワインを差し入れたのに、霞んでしまう。」

「うちのギルドの品評会1位だったら、ここ10年で一番出来が良かったはずよ。それより美味しいって、あら、このワイン選外だったワインじゃない。えっ、あの時の味と違う。というか、こんな美味しいワイン、飲んだことがない。ヒカル、どういうこと。魔法でお酒を美味しく出来るの?」

「魔法と言うより、保管方法なんですが。これ以上は、ちょっと、企業秘密です」

「そんなこと言わず教えなさいよ。ヒカルと私の仲じゃない。それがだめだったら、毎週1本、いや2本献上してくれれば良いけど。やっぱり、メイと結婚しなさい。」

「お母さん、何言っているの。ヒカル様が困っているじゃない。ヒカル様、すみません。お母さん、時々暴走するので、困ったもんです。それにしても、美味しい料理ばかりで、それも見たことがない料理まで。挽肉を白い皮で丸く包んで蒸したのが、熱々で肉汁がプシュッっと出て、最高です」

「私は、平ぺったく包んで、焼いたのが好き。表面がカリッカリッになってて、何個でも食べられるんです」

「小籠包と餃子と言うんですよ。さきちゃんとニヘイちゃんが一緒に作ったんですよ」

「私はお手伝いしただけで、全部、サキさんのアイデアです。材料と道具さえあれば、もっといろんな物を作れるって言ってました。タコ焼きとか、カレーとか」

「食べてみたーい」エバちゃんとメイちゃんの声がハモっている。


 そこへ、ももちとさきちゃんが、キッチンからトレーを持ってやって来た。

「食後のデザート、プリンです。1人2個までOKです」

 ホーマさんが、真っ先に手を出した。

「聞いたことがないデザートだけど、上の方、焦げちゃったの?」

「上の焦げている部分と、下の黄色い部分を、一緒に掬って食べてください」

 一口食べたホーマさんから、悲鳴があがった。

「ヒーッ、何なの何なの、この表現できないほろ苦が甘さは。バナナスムージーと言い、かき氷と言い、お酒と言い、あなた達は、食の大革命でも起こす気なの?」

「食の革命と言うような大げさな物じゃないですが、その内、ユーカー商会の食堂部門で提供する予定です」

「その食堂、ビギンの街でも出店するの?」

 僕が少し言い淀んでいると、

「私、領都に異動願いを出すわ。異動出来なかったら、ユーカー商会で働くことにする」

 こがしプリンは、プリンを食べたことがない女性達には凄く人気があり、マイミーさんは、あっという間に2個目に取りかかっていた。後ろでは、コフスさんとラムスが両手にプリンを持って立っていたので、6個食べる気かも知れない。


 そんな具合に、わいわいと騒いでいる内に、午後9時になったので、お開きにすることにした。トーベンさんが、ブランデーの樽を抱えて名残惜しそうにしていたので、

「どうぞ、お土産に持って帰ってください」

と、言ったところ、喜んで肩に担いで帰って行った。それを見ていたホーマさんも、残ったワインを鞄につめて持ち帰った。

 とりあえず、大盛況だったので、良しとしよう。


 後片付けは、食器の汚れやゴミを[収納1]からの[廃棄]で直ぐに終わり、残り物も[収納1]保管で無駄にせず済んだ。

 さきちゃんが、ワインとブランデーが欲しいと言ったので、ワイン10本ブランデー1樽を熟成の上、渡した。多分、料理・菓子作りの幅が拡がるだろう。


 4人でお茶を飲みながら寛いでいると、ももちが、突然、立ち上がった。

「女の子が門から入って来た。男の人が後ろからついてきている。襲われている訳じゃなさそう」

「どうして分かったの」

「使い魔のフクちゃんが教えてくれた」

「フクちゃんって?」

「フクロウのフクちゃん。賢いし、夜目が利くから見張りには、最適なの」

ネーミングのセンスは別として、早くも[テイマー]スキルを使いこなしている。


 直ぐに、入り口のノッカーが鳴った。

「どちら様ですか」と、扉越しに聞くと、

「スカーレットです。ヒカル様にお願いがあってきました」

「ヒカル殿、夜分に申し訳ございません、アルトでございます。頼み事が頼み事だけに、このような時間にひと目を忍んで参りました」

 扉を開けると、スカーレット嬢が、いきなり僕の胸に飛び込んできた。

「ヒカル様、お願いです。ハープを、ハープを救ってやってください」

「スカーレット様、落ち着いてください。取りあえず、座ってお話しましょう」


 リビングのソファーに座ったスカーレット嬢は、僕の他に人がいることにようやく気付き、

「この方達は、どなたですか」

と、聞いてきた。

「右から、ももち、さき、ニヘイと申します。僕が新しく設立したユーカー商会のメンバーです。また、僕がリーダーを務める冒険者パーティー・ベリーズのメンバーでもあります。こちらは、ビギンの街の代官、ゲッター男爵のご令嬢、スカーレット様と、ゲッター家の執事、アルト様です」

「僕たち4人は、一心同体ですので、お話は4人で聞かせて頂きます」


 スカーレット嬢は、少し迷っていたが、意を決して、話し始めた。

「いとこのハープは、犯罪奴隷になることは、決定しているのですが、まだ幼いので、経済奴隷の扱いを受けることになると思います。ただ、最初から経済奴隷だった者と違い、人としての尊厳は守られない場合が多いと聞いています。」

「ハープは、賢く、心優しい子です。もし酷い扱いを受けたら、ハープの心は壊れてしまうかもしれません。ハープは、今回の謀反のことは、全く知らなかったのです。それなのに、罪の意識を感じて、自ら命を絶とうとしました。ヒカル様に救って頂いたので、なんとか生きている状態です。これ以上、あの子に辛い思いをさせたくないのです。ヒカル様、どうかあの子を救ってやってください」

 僕が何か言う前に、ももちが、口を開いた。

「救うって言うことは、ヒカルが買い受けると言うことになるんでしょう。最低でも、5000万モグは必要だと聞いているけど、それはどうするの?」

「5000万モグは大金ですが、男爵家として払えない額ではありません。男爵様も、最初は手を差し伸べることを考えられてましたが、身内が身請けすることは、法で禁止されています。それだけのお金が動くと、王都が気付く可能性が高いと思われ、男爵家の存続も危ぶまれます。男爵家としては、どうしようもないのです」


 僕は、みんなを見回した。

「ヒカル様、私、ハープ様のことは存じています。平民に優しい方で、孤児に対しても、いろんな支援をされています。それに、聖女様が胸をお痛めになっているのを見るのは辛いです。」

「ヒカルさんにお金の余裕があれば、ヒカルさんの思うとおりにすれば良いかと思います」

「反対したら、私ひとり悪者になりそうな雰囲気。ヒカルにお金があれば、身請けしても良いけど、その代わり、一生懸命働いて貰うわよ」

「スカーレット様、ハープ様はいつから売りに出されるのですか。」

「4月に入ってからだと聞いています。ヒカル様、よろしくお願いします」

 スカーレット嬢の沈んだ顔が、パッと花が咲いたように明るくなった。

「丁度、良かった。僕らも拠点を領都に移すので、3月中には領都に向かう予定です」

「えっ、この街を離れられるのですか」

スカーレット嬢の顔が、途端に暗くなった。

「4~5日、この街で準備を整えてから、領都に行く予定です」

「そうですか、領都ですか、領都ですか」

「お嬢様、もう、こんな時間です。黙って出てこられたので、早くお帰りになられた方が良いのでは」

「はい、わかりました。ヒカル様、今日は、有り難うございました。よろしくお願いします」

 2人が帰った後、僕は深いため息を吐いた。また、厄介事を抱え込んだかな。

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