第32話 レベル上げの準備 - ちゃんと錬金術師しました
ハウスに戻る前に、午前中に行った道具屋に寄り道し、素材を購入することにした。
盗賊のポーチに入っていた魔石は、中以上だったので、小魔石を補充することにした。緑と青は大量に持っているので、残りの赤、白、茶、銀、透明、黒を100個ずつ購入した。特に目的はないが、[付与]スキルで使う場面があると思う。
魔法鞄作成に必要な黒魔石中が手に入ったので、3人の魔法鞄を作ろうと思い、なめし皮を20枚追加購入した。また、同じ色だと区別が付きにくいので、染料も10色分購入した。
他に何か面白い物はないかと探していたら、背中に視線を感じた。振り向くと、ももちがこちらを見ていた。
「ももち、食材の買い物は?」
「肉と、果物と、調味料は、買わなくて良いのか聞きに来たの。ヒカルこそハウスに戻るんじゃなかったの?」
「鞄・防具をつくるのに、素材が足りなかったので、買い足していたんだ」
「あんなに沢山の小魔石も? 楽しそうに選んでいたけど」
最初から見てたんかい。
「肉も果物も調味料も僕が持っている。でも、ルルの実があったら買ってきて」
「了解です。それじゃあ、ヒカル、無駄遣いしないでね」
あいつは、僕の母親か。
見たい物は沢山あったが、買いたい物は買えたので、店を出ようとした時、ガラスの材料が目に入った。石英と白石だ。白石は石灰岩みたいだ。安かったので大量に仕入れた。これで、ポーション容器作り放題だ。
ハウスに着いたのは、午後2時を回ったところ。焼肉パーティーは7時からなので、時間は十分にある。
やりたいことは、3つ。魔法鞄の作製、ポーション容器作製、武具・防具の作製だ。
最初に、魔法鞄作成に取りかかった。全体の意匠は、盗賊のウエストポーチを真似したが、星やハートの飾りを付けて、可愛く仕上げた。色は、ももちが桃色、さきちゃんが黄色、ニヘイちゃんのは黒色に染色した。
染色後、魔石小全色を鞄に[付与]するイメージを浮かべたら、
「赤魔石小2個で熱耐性、青魔石小2個で水耐性、茶魔石小2個で物理耐性を付与しました」
と、アナウンスが流れた。茶魔石は土だけで無く、皮にも[付与]できるようだ。いろいろと試してみる価値ありだな。
ここまでは、[錬金術]を、素材を置いている[収納1]内で発動させて作っている。実際、手指を使っての作業ではないので、格段に早い。10分足らずで完成している。指先の器用さは求められないが、頭の中にしっかりとしたイメージを展開する必要がある。このあたりは、ステータス300のおかげで楽に出来ている。
ウエストポーチとしては、完成したので、ここからが魔法鞄作成の本番だ。魔石は、午前中に合成した黒魔石中を使う。
先ずは、[闇魔法]スキルにポイントを割り振った。闇魔法(初級)[ 10]が、闇魔法(中級)[100]まであがった。そうすると、魔法鞄は、黒魔石の持つ闇空間特性を、鞄の中に移すことによって作製できることが分かってきた。
魔法鞄を作製するイメージを、[収納1]内では作り出すのが難しかったので、とりあえず、ももちのポーチを左手に、黒魔石中を右手に持った。そして、黒魔石がポーチに吸収され、ポーチの内部空間が拡がっていく状況を思い浮かべた。
1分くらいそうしていたら、突然、右手の黒魔石がどんどん小さくなり、黒いモヤモヤが左手のポーチに吸い込まれていく。黒魔石がなくなった瞬間、「所有者の設定は、どうしますか?」との声が、頭に響いた。ももちの顔を思い浮かべると直ぐに、「ももちを所有者に設定しました。内部容量は、10m立方となります」と声が響いた。
イメージが掴めたので、さきちゃんとニヘイちゃんの分は、[収納1]内で作製したが、数秒しか掛からなかった。
二つ目は、ポーション容器の作製だ。レシピにある石英、白岩、清水は[収納1]にある。灰は、鉄の木を[収納2]に入れ、500℃に温度調整したが、変化はなかった。スマホで検索したら、木が発火する温度が500℃程度となっていたので、そのように温度調整したのだが、鉄の木自体が熱耐性を持っているのだろう。[収納2]を1000℃に設定し直したら、白い灰になった。
さらに[収納1]から[収納2]に石英、白岩、清水50Lを移し、温度を1600℃に上げ、素材を混ぜ合わせ、ドロドロにする。次に温度を700℃程度に落とし、ポーション容器の形に成形する。後は時間を掛けて冷やすだけだが、早く手に入れたいので、[収納2]の時間経過を1000倍にして10分放置後、取り出した。透明度が高い容器が500本程できあがった。石英、白岩、灰は残っていたが、清水は使い切っていた。
ガラスの製造過程や温度については、すべてスマホの検索で情報収集したが、この世界でも、ちゃんと通用したのが嬉しい。
容器と素材を[収納1]に戻し、ハイヒールポーションとハイキュアポーションを各200本分つくり容器に入れた。
三つ目は、明日からレベル上げをするための、武具、防具作りだ。
まず、防具だが、しっかりした物は、窮屈で重たい。戦争の最前線に行くわけではないので、普通の衣服を強化することにした。
皮製のベスト、皮製のショートパンツを作製し、ベストは、ももちが白地に桃色のストライプ、さきちゃんが白地に黄色のストライプ、ニヘイちゃんが白地に黒色のストライプにした。ショートパンツは3人とも黒一色にした。
染色後、魔法鞄と同じように、魔石小全色を服に[付与]するイメージを浮かべたが、
「それぞれの服に、赤魔石小4個で熱耐性、青魔石小4個で水耐性、茶魔石小4個で物理耐性を付与しました。ベストの両サイドポケットには、黒魔石小4個で、50cm立方の闇空間を設定しました。所有者は、桃色がももち、黄色がさき、黒色がニヘイに設定しました。」
と、アナウンスが流れた。デザインはともかく、ある程度の防御は可能だ。おまけに、マジックポケットまでできるとは。
本当は、ワームの皮の方が防御効果は高いのだろうが、あれを身につける気はしない。適当な時期に売りに出そう。
僕とももちについては、最前線で隠密活動をすることも考えられるので、危険を考慮して鎖帷子を作ることにした。ミスリルで極小リングを作り、それを結合させてミスリルの布を作った。その布をシャツの形に変形後。赤、青、銀の魔石小を使い、熱耐性、水耐性、物理耐性を[付与]した。試着すると、厚手のTシャツなみの軽さで、しなやかに伸び縮みする。また、鉄の剣程度では傷つけることができない強さだ。
武器については、さきちゃんは弓道部だったので、盗賊から頂戴したロングボウを参考に、鉄の木とツタの紐を使って、少し小型・軽量のロングボウを作った。当然、緑魔石で強化した。矢の方も、鉄の木で作製し、矢尻は緑魔石で強化した。あとは、使って貰いながら、改善していこう。
ニヘイちゃんは、防御に徹して貰うので、自衛の武器として、ミスリルの剣を持って貰おう。
ももちには、既に、忍刀と苦無は渡しているので、手裏剣、手甲、撒菱を追加して渡すことにする。
これだけの仕事をしたのに、まだ午後3時半だ。時間が空いたので、今夜のお楽しみに、かき氷製造機と氷を作ることにした。かき氷製造機といっても、大層な物ではなく、上からハンドルをゴリゴリ回して、底の刃で氷を削り取る簡単な物だ。ただ、削る刃については、奮発してミスリル製にした。これでできたかき氷にルルの実のジュースをかけたら、深い甘味の中にかすかな酸味がある爽やかなデザートになるだろう。エバちゃんとメイちゃん、喜んでくれるかな。とニヤニヤしていたら、
「ワタル、何をニヤついているの」とももちから声をかけられた。家の中まで、忍び足を使うのは止めて欲しい。
夕食の準備開始まで、1時間以上、暇があるので、みんなに、先ほど作った装備を渡し説明した。
まず、魔法鞄だが、さきちゃん以外は、とても喜んでいた。色・デザインともに文句はでなかった。さきちゃんには、[収納]スキルを持っていることがバレると、貴族や大商人から無理矢理囲い込まれるので、普段は、魔法鞄を使うよう、説明した。そして、容量が10m立方あることを説明した途端、ニヘイちゃんが固まった。しばらくして、
「そ、それって、大商人が持っている魔法鞄並の容量じゃないですか。私のような駆け出しの商人には勿体ないです」
と、震えた声で言うので、
「今は駆け出しかも知れないけれど、ベリーズとユーカー商会は、一心同体で頑張るので、直ぐに大きな商会になるよ。だから気にしないで」
と答えた。
次は、皮製の服だ。見た途端、ももちが首をひねった。
「ご、ごめん。僕は、服のセンスがないので、それが精一杯なんだ。もし気に入らなかったら、作り直すから」
「せっかく作ってくれたんだから、あんまり文句は言えないけど。でも、私の桃色は分かるけど、なぜ、さきちゃんが黄色でニヘイちゃんが黒なの?」
「そ、それは、何となく、というか、似合いそうだから」
「2人には、そんなイメージを持っているのね。でも、今度から、作る前に聞いてよね」
「はい、わかりました。それと、上下とも、熱耐性、水耐性、物理耐性を付けたし、ベストの両サイドポケットは、50cm立方の容量があるマジックポケットになっているから」
「四次元ポケットじゃないのね」
「はい、そこまでの物は作れないよ」
なんか、ももちが厳しい。鎖帷子も、なんか言われるかな。
「これは、僕とももちだけなんだが、ミスリル製の鎖帷子です」
「ええー、うそっお。これ柔らかくて、硬いよ」
「一応、熱耐性、水耐性、物理耐性を[付与]しているし、鉄の剣くらいじゃ傷も付かないよ」
「ありがとう、こういうのが欲しかったの。これで忍者を頑張れる」
すごく喜んでいる。忍者らしさが受けたのか。
「ついでにこれも、魔法鞄に入れといて」と、手裏剣、手甲、撒菱をわたすと、満面の笑みだ。予備の忍刀も渡すことにした。
さきちゃんには、ロングボウを渡したが、見た目より軽いことに驚いていた。和弓とは違っているので、ロングボウが使いにくかったら、その内、和弓作製に挑戦すると伝えたら、喜んでいた。
ニヘイちゃんは、「土魔法があるので、武器は要らない」といっていたが、魔法鞄があるので邪魔にはならないだろうと、ミスリルの剣を渡した。
最後に、ハイヒールポーションとハイキュアポーションを50本ずつ渡したら、ももちが、興奮していた。
「合わせて7500万モグよ。日本円で2億円以上よ。手が震えるー」
「マジックポケットと魔法鞄に入れて、いつでも使えるようにしてね。それと、使用後の容器は捨てないでね」
焼肉パーティの準備をする頃になったので、料理担当のさきちゃんとニヘイちゃんへ、フォレストタイガーの肉を50kg渡した。
その他、[収納1]で眠っている調味料、ホーンラビットの肉、アポの実とバナの実を500個ずつ渡した。
ももちが、羨ましそうにしていたので、同じように渡したら、大層喜んでいた。忍者たる者、いかなる時も食糧を携行し、非常時に備える必要があるとのこと。魔法鞄を手に入れたので、とにかく、食糧を入れたかったそうだ。
みんなに、アポの実の種、バナの実の皮は、捨てないで取っておくようお願いした。




