第31話 ベリーズ誕生 - キャプテンは、さきちゃん
ハロプロを知らなくても、なるべく楽しめるように書いているのですが、今回は、タイトルからして、趣味にはしっています。
「ニヘイちゃん、近くで美味しい昼ご飯を食べられる店、知らない」
「この近くだと、冒険者ギルドの食堂か、ムーンライトという宿屋の昼ご飯ですね。」
もっと、高いレストランを紹介するかと思ったら、割と庶民的。うすうす気付いていたけれど、ニヘイちゃんって、倹約家?
ギルドの食堂は、昨日食べたので、ムーンライトにすることにした。ん?ムーンライト、そう言えば、マイミーさんのパーティーのコフスさんお勧めの宿屋が、ムーンライトって言ってたな。
ムーンライトは、南東地区、噴水広場を東へ50mの大通りに面したところにあった。冒険者ギルドも近く、飯が美味ければ言うことない。
ムーンライトに入ろうとした時、ももちが聞いてきた。
「ヒカル、今、何時?」
「あと、10分で正午だよ」
「じゃあ、先にロシナンにご飯をやってから戻ってくる」
「ご飯食べてからでは、だめなの」
「昨日、ロシナンと話して、ご飯は、出来るだけ朝の6時、正午、夕方6時の3回で、おやつは時々あげる事になったの」
「テイマーのスキルって、そんな細かいことまで話ができるの」
「話をするというより、なんとなく分かるの」
「分かった。さきに入っておくね。注文はどうする?」
「ヒカルと同じもので」
そういって、ももちは、ものすごいスピードで走って行った。[俊足]? 人前で簡単にスキルを見せて良いの?
ムーンライトのドアは、西部劇の酒場に出てくるような、内と外の両方に開くスィングドアだった。押して入ると、目の前には、食事用のテーブルが8つ並び、奥がカウンターになっていた。テーブルは、半分しか埋まってなかったので、奥の方の4人掛けテーブルにした。
席に着くと直ぐに、10歳程の少女が注文を取りに来た。日本なら労働基準法違反だが、異世界(小説)では良くある話。
「いらっしゃいませ。初めてのお客さ、あっ、ニヘイお姉ちゃん久しぶり」
「久しぶり、ハナちゃん。ちょっと見ない間に、ずいぶん大きくなって。」
「ニヘイお姉ちゃんも、ますます綺麗になって。隣の人はカレシさんですか」
「そういうのじゃないの。今日のA定食はなに?」
「今日は、なんと、ラージフォレストボアの肉入りスープですよ」
「私は、それにする。ヒカル様とさきさんも、それで良いですか」
「私は、白いパンだったら、なんでも」
「僕もももちも(3回目)、A定食で」
「それじゃ、直ぐにもう一人来るので、A定食4つで」
「承知しました。丁度、ボア肉終了しました。」
10歳程とは思えないほどの、客対応。
「ああいう子は、文字や計算はどうやって覚えるの?」
「教会の学校で、午前か午後のどちらかで勉強します。貧しい家の子以外は、全員行ってます。成績が優秀な子は、街の奨学金で、領都の学校に進学できますが、年に1~2人です」
優秀な子に教育費をつぎ込む、それはそれで、この世界では効率の良いシステムかも知れない。あとは、貧しい家の子の教育だが、それは、転移前の世界でも、教育を受けることができない子はいたので、どうしようもないことなのだろうか。
しばらくすると、A定食が3つ来た。ももちの分は、着いてから出すとのこと。定食の内容は、ラージフォレストボア肉入りスープ、ハムサラダ、スクランブルエッグ、白パン2個だった。ボアの肉がゴロゴロ入っている。ハナちゃんによると、ムーンライトを常宿にしている冒険者から、格安で譲って貰ったので、儲けを考えずにA定食の値段で提供しているとのこと。丁度僕らの注文で、ボア肉はなくなったそうなので、ラッキーだった。
「いただきます」の時に、ももちが戻ってきた。すかさず、ハナちゃんがももちの分を持ってきた。
「はい、A定食の追加分です」
A定食と聞いて、ももちが、スープを凝視している。冒険者ギルドのA定食が、オーク肉だったことを思い出したようだ。
「大丈夫だよ。人型の肉じゃないよ。イノシシだよ」
「良かった。イノシシだったら、良く山で獲って、食べてたから。」
「すごいな、正真正銘のジビエじゃないか」
「そんな風に『すごい』と言われたことなかった。小学生の時は、貧乏でお肉を買うお金がないとか言われたし。川で修行していたら、家にお風呂が無いので、川で身体を洗っているとか。大体、500年続く百地家が、貧乏な訳が....」
「話は続いているのですが、とりあえず、いただきます」
ボア肉は、味がしっかりして、それでいてクドく無く、昨日食べたフォレストタイガー肉にひけを取らない美味しさだった。ニヘイちゃんに聞いたら、市場価格は、どちらも同じくらいで、めったに食べることはないとのことであった。
白パンを食べ終わったさきちゃんに、僕の分を1個あげると、
「わたし、太っちゃう」と、騒ぎながら、ペロリとたいらげた。泣きながらあんパンを食べていた昨日が懐かしい。
食事も終わり、店を出ようとした時、スィングドアが開き、見覚えのある3人が入ってきた。
「おっ、ちゃんと街へたどり着けたんだな、ヒカル」
「コフスさんからの情報と、マイミーさんから頂いた鞄のおかげで、なんとかたどりつきました。コフスさん、採取の首尾はどうでした。」
「魔法鞄一杯に入っている。後でギルドに売りに行くつもりだ。そんなことより、森の中で、フォレストタイガーに、いきなり出くわして、ラムスが大けがしたんだ。それで、ヒカルから買ったハイヒールポーションが半分残ってたので、振りかけたら直ぐに直ったんだよ。すごい効き目だ。ヒカル、採取物の売り上げで、もう1本買うからよろしくな。ところで、そちらの3人は誰なんだ」
「今度、パーティーを組むことになった、さき、ももち、ニヘイです。それから、ハイヒールポーションだったら、商業ギルドに、沢山卸しましたので、そこでも手に入ると思いますよ」
そんな話をしている最中、耳障りな声が聞こえてきた。
「どうして、売り切れなんだ。ボアが食えると思って楽しみにしてたのに」
「申し訳ありません。ボア肉が目当てで、いつもはB定食を頼むお客様まで、A定食を注文されたので、直ぐに売り切れました。オーク肉のA定食なら、ご用意できますが」
「売り切れるのは当然だ。300モグでボア肉が食えるんだから。どうして、もう少し多めに仕入れ....」
「ラムス、止めなさい。ハナちゃんが怖がっているじゃないの。ごめんねハナちゃん。A定食3つお願いね」
「大体、姉貴が昼飯前に、風呂に行くって言ったからこうなったんだ」
「そんなこと言って、あの臭いのまま、ここに来るつもりだったの。出入り禁止になったわよ」
「姉貴は良いよな、生活魔法とそこそこのMPを使って浄化できるからな。」
「あんたは、魔法書を買うお金を使い込んだから、魔法を覚えられなかったんでしょう。自業自得よ」
「別に、おれは、風呂より昼飯が先でも良かったんだ」
「だから、出禁だって言ってるでしょう」
怒り顔の美人さんも素敵だけれど、ここは、泥沼になる前に仲裁だ。
「こんにちは、マイミーさん」
「ヒカル、ごめんねうるさくして。あら、2~3日見ない間に、たくましくなったんじゃない。」
「ありがとうございます。実は、偶然にもフォレストタイガーの肉が手に入ったので、今夜、焼き肉パーティーをするんです。お肉は沢山ありますので、良かったら、『パーティー・絶好調』の皆さんも参加しませんか」
「あら、フォレストタイガーの肉って、いつ以来かしら。喜んで参加させていただくわ。これで、肉、肉騒いでいるラムスも少しは静かになるわ」
僕は、パーティハウスの場所を教えて、ムーンライトを出た。パーティーハウスに住んでいることに、マイミーさんは驚いていた。
なお、マイミーさんを焼き肉パーティーに誘った時に、例によって、ももちが白い目で見ていた。
次は、冒険者ギルドで、さきちゃん、ニヘイちゃんの冒険者登録と、デスデス団の情報収集だ。
4人で、受付に行ったら、エバさんが、受付から出てきてニヘイちゃんに抱きついた。
「ニヘイちゃん良かったね、メイちゃんから聞いたよ。」
「ヒカル様、ありがとう。ニヘイちゃんは良い子だから、大切にしてくださいね」
いや、別に、結婚する訳ではないんだが。
「今日は、こちらのさきちゃんと、ニヘイちゃんの冒険者登録をお願いします。さきちゃんは、僕やももちと同じニホン村の出身なのでサクラ王国です。ふたりとも人族で、職業は商人です。」
ももちの時に手間取ったので、事前に情報を伝えた。それで、手続きは、スムーズに済んだ。2人とも、ももちと同じGランクスタートだ。
「パーティーは?」 と、聞かれたので
「えっ、メイさんから聞いたのですか。7時から、ハウスで始めますので、エバさんもどうぞ」
「あら、ありがとうございます。参加させていただきます。それで、冒険者パーティーは、どうされますか?」
パーティーって、そっちの方か。横でももちが大笑いしている。
「勿論、4人同じパーティーでお願いします。それと、パーティー名を変更できますか?」
「できますよ。できたばかりのパーティーですので、こちらの台帳を変更するだけです。」
「ひかる、どうして、変更するの? ももち、『ピーチピーチ』って言う名前気に入ってるのに」
「なんかほら、『ピチピチ』の女子高生みたいに聞こえるじゃないか」
「そっか。んーっ、仕方ないか。じゃあ、桃の次に好きなのは苺だから、『ストロベリー』はどう」
「ちょっと長いな」
「じゃあ、『ベリー』を複数形にして『べリーズ』は、どうかな」
「わかった、それにしよう。エバさん、パーティー名を『ベリーズ』に変更してください。それとリーダーの変更も出来ますか」
「リーダーは、通常、そのパーティーでランクが高い方がなりますので、ヒカルさんになるかと」
「なに、なに。ももちをリーダーにしようと思っているの」
「違うよ。さきちゃんが、弓道部のキャプテンをやってたし、[統率]スキルも持っているので、適任かなって思ったのさ。それじゃ、『ベリーズ』のリーダーは、僕で、キャプテンは、さきちゃんということにしよう」
「冒険者パーティーのキャプテンのお仕事が何なのかは、分かりませんが、一生懸命頑張ります」
「エバさん、それと、明日から領都に行く準備をするので、研修を受けることができないんですが。」
「研修を受けるのは、1年間有効です。領都のギルドでも受けることができますよ。私も4月から領都のギルドで働きますので、よろしくお願いします。」
「エバさんも領都へ異動ですか。メイさんから聞かれたと思いますが、僕らは領都に『ユーカー商会』を設立する予定です。よろしくお願いします。それと、ギルド長にお話があるのですが。」
僕らは、直ぐにギルド長室へ通された。
「おぉ、ヒカル、昨日はご苦労だったな。あの後、スカーレット嬢がハープ嬢に付きっきりで、『死ぬのは、両親の思いを裏切ることになる』と説得して、少しは落ち着いたみたいだ。」
「そうですか。それにしても、奴隷落ちは、確実なんですよね」
「ああ、そうだ。誰か優しい奴に買われれば良いのだがな」
そう言いながら、横目で僕を見るのは止めて下さい。でも、念のために、
「ちなみに、身請けしようとしたら、いくらぐらい掛かるのですか」
「俺じゃあ、詳しいことは分からないが、元貴族の娘だから、5000万モグはするだろうな」
払えない額じゃないけど、払う理由が無いな。
「ゲッター男爵には姪に当たるのですから、男爵が見受けされるということはないのですか。」
「犯罪奴隷だから、身内が買うのは禁止されている」
と言いながら、僕を見るのは止めてください。5000万モグも出したら、絶対、ももちから何か言われる。
「ところで、僕がギルド長にお話したかったのは、今度、領都で商会を設立することにしたので、しばらくしたらここを離れるということと、デスデス団の情報が欲しいということです」
「領都に行くのは、残念だけど、致し方ないな。おまえ見たいな優秀な人材を、こんな田舎で燻らせる訳にはいかないからな。」
「それと、デスデス団の情報を知ってどうするのだ。まさか、ニヘイの親の敵討ちなんか、考えているんじゃないのか」
「とんでもない、相手は200人いる盗賊団ですよ。敵うわけないじゃないですか。ただ、アジトの情報とか分かっていたら、今後、商売をやる上で、避けて通ることが出来ますから」
「ふーん。今、領都でも本格的に盗賊を討伐することを検討している。くれぐれも先走るなよ。デスデス団のアジトは、領都の西の『西の森』にある。しかし、どこにあるのかは、分からない。見つからないように転々としているようだ。」
「Bランククラスの首領は、お前が倒したが、まだ、Cランククラスは4人いると思われる。その他は、殆どがD、Eランクだ。やっかいなのは、魔法攻撃できる者が、10人程確認されている。1人では、風、火、水、土魔法攻撃が一度に襲ってきたら耐えようがない。10人の魔法使いには、10人の魔法使いが必要だ。もう一度言う、くれぐれも先走るなよ」
「その、本格的な討伐は、いつ頃になるんですかー」 と、ももちが突っ込む。
「いつになるかは、分からない。体制を整えるまで、しばらくはかかる」
「それまでは、盗賊の恐怖に怯えていなくちゃならないんですかー」
「だから、辺境伯も冒険者ギルドも焦っている。そんな中で、ヒカルが首領と、副首領2人を倒したのは、とても評価されているし、感謝もされている」
「でも、まだ200人はいるんでしょうー」
「ももち、それ以上は止めておけ。僕らは僕らなりに、用心すれば良いんだ。僕らなりに」
トーベンギルド長に、情報提供のお礼を言って、冒険者ギルドを後にした。
「僕は、みんなの鞄や防具を作るため、先に帰っているから、みんなには、今日の焼き肉パーティーの買い物をお願いしたい。ベリーズの4人と、メイちゃん、エバちゃん、パーティー・絶好調の3人、合わせて9人分お願いします。」
「ヒカル、きっと、両ギルド長も来るから、11人分だよ」




