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ポイント活用で豊かな異世界ライフ  作者: 朝倉瑞穂
【第1章】

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第28話 自分のこととか、これからの目標とか - ニヘイ、ミルクを吹き出す

 ステージ上は、エバちゃんのソロパートだ。僕はここぞとばかり、黄色いペンライトを振っていた。後ろで振っている奴のペンライトが頭に当たる。もっと手を上に挙げて振れよと、文句を言うために振り向いた。額にパカーンと料理用のお玉が当たって目が覚めた。

「ももち、普通に起こしてくれよ」

「ウフフ、お寝坊さん、もうすぐ朝ご飯だよ」

「新婚さんごっこも要らないって」

「じゃあ、早く2階のダイニングに来てよ。みんな待ってるよ」


 朝7時だ。みんな待っていた。朝ご飯のメニューは、ロールパン、多分ウサギ肉入り豆スープ、スクランブルエッグ、サラダ、フルーツ、ミルクだ。ホテルの朝食のようだ。

 ももちが、僕の方を見て、ニヘイさんを見て、テーブルを見た。テーブルには、3人分しか用意されていない。ももちの目線はそういうことか。

「ニヘイさん、3人分しかないよ。」

「私は、給仕しますので、後でいただきます。」

「そんなこと言わないで、一緒に食べよう。我が家の家訓では、『食事は、家族全員で食べるべし』となっているので、ご先祖様から叱られる」

「私は、家族ではないので、奴隷ですから」

「奴隷なら、ご主人の命令は絶対だね。『今日から、ニヘイさんは家族の一員で、一緒にご飯を食べること』」

 強権を発動してしまった。この手は、今後封印だな。ニヘイさんは、渋々了承して、自分の食べ物を持って席についた。渋々だったけど、どこか嬉しそうな顔をしている。


「みんな、食べる前にスプーンをこれに換えて」

「ワオ、フォークスプーン。ももちのアドバイス、聞いてくれたのね。あと、合体させるナイフの方も作ってね」

「それは、今、イメージを膨らませているところ」

 イメージすれば、[収納1]内で簡単に作れるところが、チートだな。


「それでは、手を合わせて下さい。頂きます」

「ニヘイさん、これは、食事を始める時のかけ声です。今度説明しますね。」


「食事中ですが、食べながらでも良いので聞いて下さい。昨日からこのハウスで、一緒に暮らすことになったけど、まだ、お互いのことが良くわかりません。そこで、自己紹介とこれから何をしたいのかを、話していこうと思います。その時、持っているスキルも話して貰えればと思います」

「話したくないことは、話さなくて良いの」

「さきちゃんだけでなく、ももちもニヘイさんも秘密にしたいことは言わなくても良いですよ」


「それと、自己紹介の前に、1つお願いしたいことがあります。それはみんなの呼び方です。僕は、3人のことを、さきちゃん、ニヘイちゃん、ももちと呼ぶことにします。」

「どうして、私だけ呼び捨て」

「名字だから。名字にちゃん付けしたら、職場の中年おっさんみたいになるでしょう。田中ちゃんとか、佐藤ちゃんとか。『もも』って呼んで良いなら、ももちゃんにするけど。」

「ももちで良いです。」

「それと、『様』付けは禁止。ニヘイちゃんも、他の人のことは、ちゃん付けか、さん付けで呼んでね」


「では、最初にニヘイちゃんへ、僕たち3人の事を話すね。信じられないような話だから、信じなくても良いけど、とりあえず、聞いていてね」

「僕と、さきちゃんと、ももちは、この世界ではない『日本』という国から、女神に呼ばれて来ました。来るときに、この世界で困らないように、5つのスキルを貰いました。女神からこの世界へ呼ばれたのは、40人ですが、貰ったスキルと、この世界のどこに転移したのかは、わかりません。これから、僕と、貰ったスキルの紹介を始めます」

 ごく簡単に説明したけど、すでにニヘイちゃんは、困惑気味の顔をしている。


「僕の名前は、ヒカル・テラダ。ヒカルと呼んで。19歳です。お店で買い物をしていた時に、突然死んで、この世界に呼ばれました。昨日さきちゃんにあげたパンとお茶は、その時、手に握っていたものです。」

「僕が女神から貰ったスキルは、[収納]、[鑑定]、[回復]、[錬金術]、[忍術]の5つです」

「ヒカル様さん、[忍術]は聞いたことがありませんが、他のスキルは、どれか1つ持っているだけで、莫大な財産を築けるスキルではありませんか。それを4つとは」

「そう、昨日までの4日間で、僕は既にお金持ちになったんだ。実は僕の[収納]は、時間が停止する20m立方の[収納1]と、時間調整、温度調整が可能で、生きているものも入れられる4m立方の[収納2]があるんだけど、現在[収納1]には、アポの実2万個、バナの実5千本、フォレストタイガー4頭、数百匹のホーンラビットなどが入っている。そして、ヒール系やキュア系のポーション素材も沢山入っていて、[錬金術]を使えば、ハイヒール、ハイキュアとも、軽く1000本くらいのポーションが作れるんだ」

 さきちゃんは話が飲み込めないようだけど、商人の子ニヘイちゃんは、目を丸くしている。そして、ももちは、

「ヒカル、昨日商業ギルドで、ハイキュアポーションは、最低でも80万モグで引き取ると言われたよね。それが1000本で8億モグ、日本円で24億円! もう働かなくていいじゃん」


「それもそうなんだけど、『24億円で遊んで暮らして、お金が無くなったら、森で薬草探して、ポーション作って売る』 そんな暮らし絶対飽きちゃうよね。だいたい、この世界で24億円を使う『遊び』ってあるの? 贅沢な暮らしだけど、豊かな生活とは言えないよね」

「実は、[忍術」スキルで、ゴブリンや盗賊を退治して、感謝されたりしているんだ。僕の[回復]スキルが、司祭様より強力なのも判ったんだ。5つのスキルを使いこなして、何かをやる方が、ずっと面白いと思う」

「と言うことで、僕の当面の目的は、『ユーカー商会』の復活だ」


「ブッホ」 ニヘイちゃんが、飲んでたミルクを盛大に吹いた

「ヒカル様さん、どうして『ユーカー商会』なんですか。作るのでしたら『ヒカル商会』なのでは」

「ただ作るだけだと、面白くないでしょう。潰れた商会を復活させる逆転劇、格好いいじゃない。僕たちのスキルを使えば、直ぐに軌道に乗ると思うし、その内、ニヘイちゃんに経営を任せるから。」


「『僕たちのスキル』って、さきも役に立つの?」

「商会の一部門として、料理スキルを生かしたスイーツショップってのはどう。さきちゃんも[収納2]が使えると思うから、冷たいデザート作り放題だと思うよ」

「ももちの、ももちの忍者道場も、ユーカー商会で建ててくれるの?」

「道場くらいは、ポーション売れば簡単にできるけど、お客さん来るの?」

「忍者の実績を示せば、門下生はどしどし集まるわ。とりあえず、デスデス団を壊滅させれば、注目を集めるわ」

「ひとりで?」

「もちろん、ヒカルと一緒にやっつけるの」

「考えとく」

 ニヘイちゃんは展開の早さに、あわあわしている。


「次は、さきちゃんの自己紹介だ」

「名前は、さき・きよみず。高校を卒業したばかりの18歳」

「高校と言うのは、16歳から18歳まで通う、学校のことだよ」

「あっ、そうか。この世界、高校なんて無いんだね」

「『高校』はありませんが、16歳から2年間、貴族の子女が通う『高級学校』があります。姓もあるし、さき様さんは貴族なのですか」

「僕たち3人は、普通の人間だよ。日本では、みんな姓を持っていて、殆どの人が高校に行くんだ。それと、ニヘイちゃん、呼びにくかったら、しばらくは、『様』、『さん』どちらでも良いよ」


「私は、4月から、お菓子職人になるための学校に行く予定だったの。卒業・入学祝い用のケーキをを取りに行く途中、車、鉄の馬車にはねられて死んじゃったの。あのケーキ、5号サイズ(直径15cm)で9000円したのよ。一口食べて死にたかったー!」

「さきちゃん、落ち着いて」

「あっ、はい。それから、[収納]、[回復]、[弓術]、[料理]、[統率]のスキルを貰って、こちらの世界に来たの。私、高校の時は、弓道部のキャプテンだったの、でも、うまくみんなをまとめられなくて、もっと統率力のある人間になりたいと思って、[統率]のスキルを取ったの。この世界でやりたいことは、美味しいスイーツ沢山作って、みんなの笑顔を見たいです。以上です」

「スキルやステータスにポイントを割り振っていないけど、理由があるの?」

「どうすれば良いか分からなくて。てか、[鑑定」って、そんなところまで判るの。」

「一通りはね」

「もしかして、スリーサイズも?」

「それは、分からない(多分)。ポイントの割り振りは、後でアドバイスするから。次、ももちの自己紹介お願いします」


「ももちは、もも・ももち、18歳です。日本の伊賀というところで生まれました。伊賀には、百地、藤林、服部と言う忍者の三大流派があって、ももちは、百地流のお母さんと、藤林流のお父さんの間に生まれた、とってもすごい忍者です。」

「ということで、スキルは、[忍術]、[回避]、[俊足]、[暗器]、[テイマー]を選びました。[回避]とか[暗器]を止めて、ヒカルやさきちゃんのように、[収納]や[回復]を取れば良かったと反省しています。これからのことですが、お金持ちヒカルにくっ付いていれば、百地流忍術道場は建てて貰えそうなので、あとは、百地流を広めるだけです」

「ももち、この世界には、「魔法鞄」と言うのがあって、[収納]ほどではないけど、見た目より沢山の物を入れることが出来るよ。[回復]スキルは無くても、魔法鞄にポーションを山ほど入れておけば同じことだよ」

「なるほど、ヒカル、魔法鞄とポーションよろしくお願いね。」

「その代わり、『ユーカー商会』の手伝いお願いするよ」

「闇の仕事だったら、任せて頂戴」


「にへいちゃん、[忍者]というのは、この世界で言えば、斥候とか隠密とか、場合によっては暗殺者のような仕事を、誰にも知られずにやってしまう、すごい職業なんだよ。僕とももちがいれば、簡単ではないけど、デスデス団を潰すことが出来そうな気がする。次は、ニヘイちゃんの番ね」


「ニヘイです。18歳です。生まれてからずっと、ビギン育ちです。両親が、『ユーカー商会』を設立して、結構利益を上げていたのですが、去年、事業に失敗して、さらに、商品を沢山積んだ馬車をデスデス団に襲われ、二人とも行方が分かりません」

「負債を返すため、私は、兄のイッペイ、弟のサンペイと一緒に奴隷になりました。ヒカル様に買って頂いて、少しホッとしています」

「スキルは、[商業]、[料理]、[芸術]を持っています。それと生活魔法が使えます。秘書業務、家事全般が得意です。」

「ちょ、ちょっと、ニヘイちゃん、魔法が使えるの?」

「生活魔法だけですが」

「そ、それでも魔法、魔法だよ」

「ももち、落ち着いて。生活魔法は、二人とも、後で覚えて貰う予定だ。そのほかに、ニヘイちゃんも含めて、他の魔法も覚えて貰う。」

「ヒカルさん、どうやって覚えるの」

「いろいろな魔法書を持っているから、あとで、好きな魔法書をあげる」

「ヒカル、太っ腹」


「ニヘイちゃんの目標は、僕と同じ『ユーカー商会』の復活で良いのかな」

「はい、よろしくお願いします。」

と言いながら、少しだけ目を伏せた。それをももちは、見逃さなかった。

「ヒカル、ニヘイちゃんには、商会の復活よりもっと大事なことがあるよ。」

「ご両親のこと? それとも兄弟のこと?」

「どちらも重要だけど、まずは所在のはっきりしている兄弟をどうにかしなきゃ」

「成る程、了解した」

「ヒカル様、私のために、そこまで迷惑をお掛けできません」

「『私のため』って言うけど、仲間のために、仲間の家族のピンチを救うのは当然のことだろう。お金で解決することなら、さっさと、やってしまおう」

 ニヘイちゃんは、また泣いている。さきちゃんとニヘイちゃんは、涙もろいということで、良いのかな。


「これまでの話を踏まえて、今日のスケジュールを発表します」

「まずは、トーベンさんの人材派遣所で、ニヘイちゃんの奴隷からの解放と、ニヘイちゃん兄弟の身請けについて相談」

「次に、商業ギルドで、みんなの登録、商会の復活について相談、頼まれていたフォレストタイガーの肉と魔石の売却、できれば『ももちナイフ』の申請、観光マップもさきちゃん用に1枚貰っておこう」

「それから、ニヘイちゃんが知っている美味しいレストランで昼ご飯を食べて、昨日買いそびれた服を買おう。あと、この世界の地図も欲しいな」

「それが済んだら、冒険者ギルドに行って、さきちゃんとニヘイちゃんの冒険者登録をして、パーティーを組もう。デスデス団の情報があったら聞いておこう」


「以上ですが、ご質問はありますか」

「ハーイ、ハイ、ハイ。お金は足りるの? 『ももちナイフ』はもうできたの? どうして、ももちには観光マップが貰えないの?」

「お金は十分あります。無くなったらポーションを売ります。『ももちナイフ』については、もう少しでイメージが完成するので、できあがったら、ももち名で申請してもらいます。そして、ももちは、この街のことは、[諜報]スキルで調べているから、観光マップは要らないでしょう」

「あの観光マップ、可愛いから、ももちも欲しい、欲しい」

「わかったよ、ももちとニヘイちゃんの分も貰うよ」


 女性に対して口下手な僕だけど、朝からテンポ良く話ができた。これもステータス300の効果かな。つい五日前までは、人間不信で引きこもっていたのに、もう、3人の仲間を作っている。また裏切られたら、今度こそ立ち直れないかな。

 その時は、その時。ビギンの森にこもって、隠遁生活を送ろう。


 今日も、バタバタした一日になるだろうな。

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