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ポイント活用で豊かな異世界ライフ  作者: 朝倉瑞穂
【第1章】

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20/24

第20話 3日目の終わり - 楽しめそうだ、ビギンの街

 ビギンの森から流れていた川は、ビギンの門(おそらく南門)の手前で左右に分かれている。おそらく、川を利用して人工的に堀を作ったのだろう。

 跳ね橋を渡って門をくぐると、幅10mほどの道が、北へまっすぐに続いていた。僕は、ゲッター男爵に促されて、門衛所に止めてあった馬車に乗り込んだ。馬車には、既に女性1名が座っており、そこに、ゲッター男爵、スカーレット嬢、僕が乗り込み、計4人で乗ることになった。


 乗り込んで直ぐに、スカーレット嬢が、「お母様」と女性に抱きつき、涙を流しながら喜びあっていた。それから、スカーレット嬢が、先ほどと同じ様に、僕の紹介を始めたが、ゲッター男爵が、途中で遮った。

「スカーレット、その話は明日だ。ヒカル殿も疲れていることだろう。今夜は、ゆっくり休んでいただく。」

「ヒカル殿、屋敷に部屋を用意した。食事も運ばせるので、今夜は、風呂でも入って、のんびりしてくれ。」

「ありがとうございます。風呂は助かります」

「今夜は、今回の件の処理があるので、お相手出来ないが、明日の夜、ささやかではあるが、感謝・歓迎の宴を開かせていただくつもりだ。」


 もう日は沈んでいたが、道の両脇には、なんと、等間隔に街灯が立っており、そこそこに明るい。

 しばらく進んで行くと、広場があり、行く手を塞ぐように噴水があがっていた。噴水はさきほどの街灯よりずっと明るい灯りに照らされ、その周りに男女が数組、肩を抱いて座っている。

「この辺りは、『噴水広場』と呼ばれていますのよ。あのように、恋人達が夜遅くまで語り合ってると聞いています。」

と、スカーレット嬢が、うっとりとした目で見つめている。


 噴水広場は、いわゆる「ロータリー交差点」となっており、馬車は、そこを、時計回りに半円を書くように進み、北への道を少し行ったところで、左手にある門をくぐり、邸宅の車寄せで止まった。男爵邸は、お城とまではいかないが、例えば、国立博物館のような佇まいで、圧倒される。

 4人が馬車から降りた途端、1人の少年が駆け寄って、マーガレット嬢に抱きついた。

「お姉様、ご無事で良かった。」

「ありがとう、ドゥーリル。心配させてごめんなさい」

「お姉様、この方は?」

「私を助けてくださった、ヒカル様。ヒカル様はとってもお強くて」

 執事風の若い男と話していた男爵が振り返って

「マーガレット、いい加減にしなさい。食事して、早く休みなさい」

「わかりました。では、ヒカル様、また明日、お会いしましょう」


「では、ヒカル殿」

 と、男爵が言いかけた時、次の馬車が到着した。馬車からは、アルトじいや、スパーク騎士団長、ホルス副団長、騎士風の男の4人が降り立った。当然、スパーク、ホルスは拘束されている。


「アルト、早かったな」

「謀反を起こした、いや、起こしかけた騎士らは、抵抗することなく拘束されました。今は、他の騎士達がこちらへ連れてくる途中です。今回の件は、迅速に処理する方が宜しいかと思い、一足先に戻った次第です」

「さすが、筆頭執事、的確な判断だ。ワシも、今日中にある程度のことは処理しようと思う。ヒカル殿には、今夜はお休み頂くことにした」

「それもそうですが、ヒカル殿にはお休みの前に、お願いしたいことがあります。魔法鞄に入っている遺体を、私どもにお預け頂きたいのです」

 僕も、鞄や[収納1]に入れている遺体を、早く出したかったので、一も二も無く了解した。


 アルト執事に案内されたのは、男爵邸の北隣にある騎士団の施設だった。騎士団の独身宿舎、食堂・娯楽室等の厚生施設、屋内・屋外鍛錬場があるそうだ。敷地は結構広い。

 僕は屋内鍛錬場へ案内され、そこで、遺体を出すように言われた。屋内練習場は、体育館のような作りだが、床は無く、整地された地面だった。床を汚す心配もないので、その場に、騎士1体、従士6体を、[収納1]から盗賊の魔法鞄経由で取り出した。

 ソルグスと盗賊の遺体について尋ねると、

「ソルグス殿については、こちらで身元を確認し、家族等がいれば、お悔やみと感謝の意を表すので、この場に出して頂きたい。盗賊の3体についても、こちらで討伐の届けを出しておきます。報奨金は、後日支払われることになるでしょう」

「盗賊の剣や魔法鞄はどうしましょうか。」

「盗賊の持ち物については、討伐された者の所有になります。ソルグス殿が亡き今は、ヒカル殿の所有となります。」

「ソルグスさんの馬はどうなりました。馬についているサドルバッグも魔法鞄になっていて、その所有者は、僕になっているのですが。」

「馬は、冒険者ギルドに預けてあります。ヒカル殿は、報奨金や、盗賊の持ち物の内、紋章等がある物の取り扱いについて、明日にでも冒険者ギルドでお話することになります。その時に馬の件についても、お話しできるよう、ギルド長に伝えておきます。


 本日は、本当にありがとうございました。お嬢様や私がこうして生きていられるのも、謀反の芽を、早々と摘むことができたのも、すべてヒカル殿のおかげです。詳しくは、明日お話しするとして、今日は、ゆっくりとお休み下さい。お部屋までは、この副執事に案内させます。」

 と、先ほど男爵が話していた若い男を紹介された。僕は、アルト執事にお礼を述べて、副執事に案内され男爵邸に戻った。


 案内されたのは、2階の20畳(約8m×8m)ほどの部屋だった。天井は普通の家の2倍ほど高く、正面に、天井近くまである窓があった。窓辺にベッドが置かれ、左手には、ワードローブ、チェスト、ライティングデスクが置かれている。見るからに重そうで、天然木で作られていることは、インテリアに疎い僕でも分かる。右手には、バスタブ、本物の暖炉、小さめの食卓が置かれている。家具は、細かい模様が刻まれ、敷かれている絨毯の模様も美しい。登録有形文化財に指定されている、明治時代の洋風建築の1室の様な雰囲気だ。


「ご挨拶が遅れました。私はゲッター家の副執事を務めます ザークと申します。この館やビギンの街のことでしたら、いつでも私にお尋ね下さい。後ほど、メイドに夕食を持ってこさせますが、他にご入り用の物がございますでしょうか。」

「もしあれば、この街の地図が欲しいのですが。明日、散策でもしようかと思いまして」

「それでしたら、商業ギルドが、旅行者向けに作成している『観光マップ』が丁度良いでしょう。各ギルドや教会、宿泊施設、食堂、店などが絵入りでわかりやすく描かれています。それに、あまり好ましくない所や、危険な所も載っていますので、この街を安全に回れますよ。後で、食事と一緒にお届けします」

 そう言って、ザーク副執事は去って行った。


 取りあえず、僕はベッドに転がって一息ついた。3日ぶりのフワフワ布団だ。

 さて、やらなければいけない事は、いろいろあるけれど、先ずは、ステータスチェックだ。


名前[ひかる・てらだ]、種族[人間]、年齢[19歳]

称号[転移者]、職業[忍者、錬金術師]、レベル[9]

HP[268/300]、MP[290/310]

スキル:ポイント[9212]

 収 納(中級)[100]   →

 鑑 定(中級)[100]   →

 回 復(中級)[100]   →

 錬金術(中級)[100]   →

 忍 術(上忍)[100]   →

 生 活 魔 法[ 10]△

ステータス:ポイント[8512]

 STR(筋力)[300]

 VIT(体力)[300]

 DEX(器用)[300]

 INT(知力)[300]

 AGI(敏捷)[300]


 レベルが5から9に上がっている。コフスが3、ソルグスが7だったことを考えると、僕の歳で9レベルは、少し上がり過ぎの感もある。ゴブリン軍団を討伐し、盗賊を討伐し、謀反を防いだとしても、転移3日目でこの上がり様だと、1年後は100を超えているのではないか。それと、レベル5で、ステータスが、100ポイントUP出来たのなら、あと1レベル上がれば、またUP出来るかもしれない。

 HP、MPの最大値が、100増えているのも嬉しい。残ポイントを気にせず戦える。あまり戦う気はないけれど。

 MPが10ポイント、プラスされているのは、生活魔法のボーナスかな?

 割り振り用のポイントも、今日1日で8ポイント増えている。ポイントはいくら増えても嬉しい。

 そして何よりも驚いたのは、生活魔法の横に、ポイントUP用の△が付いていることだ。他の人の[鑑定2]から、ここは、[10]固定だと思っていたのだが、上げることが出来るとは。上げた場合、どのような違いが出てくるのか、一つずつ検証しながら上げていこう。


 擬装用のステータスも少し、弄っておこう。今日の活躍を考えると、もう少し上げておかないと怪しまれる。ということで、次のとおり、少しずつ上げてみた。


名前[ヒカル]、種族[人間]、年齢[19歳]、出身地[サクラ王国]

称号[---]、職業[錬金術師]、レベル[3]

HP[120/120]、MP[120/130]

ス キ ル:錬金術(初級)[ 40]

      生 活 魔 法[ 10]

ステータス:STR(筋力)[ 20] VIT(体力)[ 20]

      DEX(器用)[ 25] INT(知力)[ 25]

      AGI(敏捷)[ 15]


 ここまで済んだ時、ドアがノックされ、メイドさんが食事を運んできた。食卓に食事の載ったトレイを置いた後、二つの物を差し出してきた。1つは、先ほど話のあった観光マップ、もう1つは、身分証だった。


「身分証については、男爵様の署名入りですので、この街にいる間は、いつまでも有効です。これを見せれば、どの商店も、無制限で販売してくれると思います」

「制限とは?」

「例えば、特別な調味料などは、爵位を持たれている方や裕福な方以外には販売されません。あと1時間程したら、食器をお下げに参りますので、ごゆっくりどうぞ」


 そう言って、メイドさんは出て行った。スカーレット嬢、男爵夫人、このメイドさんと言い、揃って美人なのは、ゲッター邸の特徴なのか?マイミーさんも美人だったし、この世界は美人が多いのか? オラ、わくわくするぞ。


 貴族の夕食とは、どんなものか楽しみにしていたが、パン、シチュー、デザート、ジュースという、意外と、地味な食事だった。

 ただ、パンは、異世界(小説)で良くある、黒くて堅くて、スープに浸さなければ噛み切れないものでなく、白くふっくらとしたロールパンで、バターが付いていた。

 シチューは、キャベツ、にんじん、タマネギ、ジャガイモを使ったクリームシチューで、サイコロ大の肉がたくさん入っていた。何の肉か鑑定すると、ホーンラビットだった。塩・胡椒が、しっかりと効いており、元の世界で食べたシチューに匹敵する、というより、今まで食べたシチューの中でも、上位に入るおいしさだった。

 デザートは、さっぱりとしたヨーグルトの中にアポの実、バナの実、ブドウが入っており、その上にイチゴのソースがかかっていた。アポの実、バナの実が、通常のリンゴ、バナナより数段美味しいので、このデザートも、不味いわけがない。

 特筆すべきは、ジュース。ジュースが衝撃的だった。オレンジジュースなんだが、甘いとか、甘酸っぱいとかいう普通の表現では事足りず、口に入れた瞬間に、濃厚なオレンジの風味がガツンと広がり、そして、まろやかな甘みが舌の回りに絡みついて、喉をスーッと落ちていく。この情熱的な味は、癖になりそうだ。毎日でも飲みたい。

 夕食は地味に思えたが、どれも美味しく、あっという間にたいらげた。フォークを付け忘れていたのが残念だったが、5徳ナイフを作っておいて良かった。


 メイドさんが来るまで時間が余ったので、貰った観光マップを開いた。

 彩色こそされていないが、細かい所まで丁寧に描かれており、現代の観光マップと比べ、遜色ないものだった。異世界、恐るべし。


 ビギンの街は、四方を2000メードの壁で囲まれいる。ビギンの森から流れてくる川が、南門近くで二手に別れ、それぞれ、壁に沿って北門まで流れて合流しており、街を囲む堀となっている。東南角、西南角に釣りや投網の絵が描かれており、魚が捕れるようだ。


 2000メード(メートル)四方は、400万平方メートルになるが、これが、どのくらいの広さなのか実感がわかない。スマホで調べてみたら、新宿御苑で58万平方メートル、京都御苑で65万平方メートルなので、そこそこの広さがあるようだ。住人は約1万人と書いてあったので、かなり密集している。


 街の中央を、南北に幅10mの、東西に12mの道路が通っており、その交わった所が、噴水広場である。それ以外は、細い道が、碁盤の目のように通っている。

 東西南北に門があり、門衛所がある。門に入るためには、堀に架かった跳ね橋を渡らなければいけない。跳ね橋は、緊急時以外は一日中降りている。門もいつでも通行可能だ。緊急時って何だ?


 大雑把に言うと、壁から500m以内には、小さい住居が建ち並んでいる。何カ所かは、斜線が引いてあり、「注意を要する」と書いてある。500mから800m以内は、少し大きめの住居となっている。


 噴水広場を中心とした400m四方は、北西には、代官屋敷(ゲッター邸)、裁定所(裁判所?)、納税所、銀行、病院、赤い屋根の教会などの公的機関や、劇場、闘技場があり、北東には、各ギルド、宿泊施設、商店、食堂、住居などがある。総じて、北半分は、どの施設も広い敷地を持っている。


 南東は、北東と比べて、小さめの宿泊施設、商店、食堂、住居などがある。南西は、小さめの商店、食堂のほか、噴水に近い所に大きな公衆浴場、市場があり、遊技場もある。遊技場が何をするのかは分からないが、そばにドレスを着た女性の絵が描かれているので、賭場などの「あまり好ましくない所」なんだろう。

 副執事の言った「危険な所」が、マップの「注意を要する」所にあたるのだろうが、「危険な所」って何が危険なのだろうか。暇なときに行ってみよう。今のステータスなら、大概の危険は危険にならないだろう。


 そして、街の北壁の外に農地が広がっている。肉(魔物であるが)も捕れれば、魚も捕れる。おまけに野菜も採れるので、食糧は充足している。森の資源・素材を売れば、かなりの収入にはなるので、豊かな街と言えるだろう。


 そんなことを考えながら地図を眺めていると、メイドさんが食卓を片付けにやってきた。

「ごちそう様でした。どれも美味しかったんですが、特にジュースが格別でした」

「ジュースは、ルルの実を搾っただけなんですよ。最近は、フォレストワームのせいで、森の果実が採れなくなり、ルルの実も在庫が少なくなって。こんなことなら魔法鞄に沢山しまっておけばと、後悔しています。でも、冒険者ギルドがワーム討伐に本腰を入れると聞きましたので、近い内に、市場で買えるようになると思いますよ」

 てっきり、「オレンの実」だと思っていたのに、「ルルの実」か。異世界語もなかなか難しいな。


「明日9時に、冒険者ギルドへお越し頂くよう、旦那様から言伝を預かっています。近い距離ではございますが、馬車でご案内いたしますので、8時45分には車寄せまで起こしください。朝食の方はどうされますか?」

「お願いします。」

「では、8時にお持ちします。昼のディナーはどうされますか。」

「昼にディナーですか?」

「ええ、夕刻7時には、男爵様が感謝・歓迎の宴を開かれると聞いておりますが」

「でしたら、昼はこちらで適当に済ませます」

「承知しました。お風呂は、右の青いレバーが水で、左の赤いレバーがお湯となっています。お好みで調整してください。何かご用がございましたら、食卓の呼び鈴でお知らせ願います。では、ごゆっくりお休みください」


 とりあえず、久しぶりの風呂に入って、直ぐに寝よう。

 風呂は、水の勢いが強いのか、直ぐにたまった。部屋の隅に、仕切り1枚で置いてあるバスタブに入るのは、ちょっとだけ居心地が悪い。でも、首まで湯につかったら、まったりした気分になって、眠たくなった。身体を洗うのが面倒くさくなって、浄化もどきで済ませた。


 寝間着が用意されてなかったので、今まで着ていたシャツ、パンツを浄化もどきして、寝間着にして、ベッドに寝そべった。

 明日は、冒険者ギルドでの用が済んだら、街をブラブラして、よさげな食堂で昼食を食べよう。午後は、図書館でも探して、少しはこの世界のことを調べよう。あっ、冒険者登録をしなくては、それから、ポーションを売って......zzz

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