第14話 森を抜けたけど - 僕って巻き込まれ体質?
当初の予定では、10話くらいでビギンの街に着いてたはずなのに、すったもんだが多すぎて
まだ着かない。メインキャスト8人の内、まだ、ヒカル1人しか出ていないとは。
無駄が多いのですかね。創作というのは、思った以上に難しいです。
横になって眠ったおかげか、今朝はすっきりと目覚めることができた。毛皮と板と紐を回収し、10mの高さの枝から飛び降りた。高さを怖がらず、一気に飛び降りることができた。試しに、その場で[跳躍]したら、一回で10mの枝に楽々飛び乗ることができた。ステータスの値が、全て300にアップしたので、身体能力が上がってきている。達成感は感じるが、人間離れしていく自分が少し怖い。
朝食は、いつものアポの実と清水のセットにバナの実が加わった。栄養価も高く、バナの実のおかげで、ちょっとだけ満腹感も味わえるが、そろそろ肉も食べたい。手持ちの肉では、フォレストタイガーの肉が高級そうだが、昨日の、助けを求めたときの顔を思い出すと、食べづらい。しかし、凍えたトラには、悪いことをしたな。あいつ、あれから、どうなったのだ...... あっ、忘れてた。[収納2]に放り込んだままだった。酸素は足りたのだろうか。僕は慌てて、フォレストタイガーを取り出した。
目の前に現れたフォレストタイガーは、心なしかやつれて見えたが、それでも、顔を上げて僕の方を見ている。お詫びに、ホーンラビットの肉を2匹分あげたが、少し離れた木の根元へ運んでいって、食べようともせず、こちらを見ている。
たすけて貰ったお礼でも言いたいのか、それとも仲間にでもなりたいのだろうか。一緒にいれば、食いっぱぐれはなさそうだからな。トラを従えて歩くのは格好良いが、[テイマー]のスキルは持っていないので、仲間にするには、今ひとつ不安が残る。
フォレストタイガーのことは無視して、昨晩、暗いうちにはやれなかった作業ををやることにした。(野生のトラが近くにいるのに、無視するって、どれだけ根性が座ってきたのだろうか。ステータス300の影響かな)
やれなかった作業とは、各ポーションの色の確認だ。昨日、コフスに使ったハイヒールポーションは、鮮やかな赤だった。他のポーションの色も調べてみる。
まずは、[収納1]内の昨日貰ったポーションの空き瓶から、瓶以外の不純物を[廃棄]して、洗浄済みの状態にした。それから、ヒールポーションを入れて[取出]した。アイドルカラーのピンク色だった。同じような作業で、キュアポーションを入れたら水色、ハイキュアポーションは青色だった。エクストラ系ポーションの素材の花の色から推測すると、通常→ハイ→エクストラの順に
ヒール系は、ピンク → 赤 → エンジ色
キュア系は、水 色 → 青 → 群青色
と濃くなっていくみたいだ。ガラスの容器を使うのも訳がわかった。最後に、ハイヒールポーションを空き瓶に入れ、マイミー鞄にしまった。
朝からの作業は、これで終わったが、フォレストタイガーは、まだこちらを見ている。もっと肉が欲しいのかな。昨日、サービスで[収納2]に、フォレストウルフの肉を2匹分放り込んだけど、あれぐらいでは腹の足しにならなかったのか。と考えたとき、重大なことに気が付いた。食べれば排泄するよね。20℃の4m立方の密室に、そんな物体があれば、ウゲゲ。僕は、再び慌てて、[収納2]から不純物を全て取り出すように念じた。そして出てきた物を見て、思わず叫んだ。
「なんじゃ、こりゃあ!」
目の前には、トラの赤ちゃんが2匹いた! 叫ぶと同時に、例のフォレストタイガーが跳んできて、僕と赤ちゃんの間に割って入った。
「お礼を言いたい」とか、「仲間になりたい」とか、顔が赤くなるような恥ずかしい勘違い。僕は、フォレストタイガーを前にして、両手を開いて、言った。
「まて、まて、まて、赤ちゃんには手を出さない。子供が生まれたって、知らなかったんだ。済まなかった。お詫びの印に、ほら、ホーンラビットの肉を置いておくから」
僕はゆっくりと後ずさりして、[神足]でその場を離脱した。
あんなの気付かないよ~ [収納2]で子供産むって! でも気付いて良かった。気付かないで2~3日経っていたら、あの赤ちゃん飢え死にしていたよ。とりあえず、結果オーライということで、気持ちを立て直そう。
時間を見れば、午前8時。朝からバタバタして気付かなかったけれど、昨晩は、12時間以上も眠っていたんだな。さて、もう少し歩けば、森が終わる。そろそろ人に会っても怪しまれない格好をしよう。まず、手甲を外して、忍刀と共に、[収納1]へ。次に、鉄の木で水筒を作って、清水を入れて腰から下げる。今日は暖かいから、フライジャケットを脱ぎ、マイミー鞄に入れておこう。ついでにアポの実を3個程入れて、荷物があるように膨らんで見えるかな。マイミー鞄を背負い、金剛杖を持って、さあ、北に向けて出発だ。旅人と思って貰えれば嬉しいな。
森が終わりに近づいているためか、出てくる魔物は、ランクが低いホーンラビットとフォレストウルフのみになってきた。金剛杖で軽く倒して、[収納1]へ回収する。魔物相手の緊張感など全くなく、エクストラ系ポーションの素材も見当たらないので、[猿飛]を使って先を急ぐことにした。ひたすら進むこと、2時間あまり、急に目の前が明るくなった。
森を出た。辺りは草原で太陽がまぶしい。そして、回りを見渡した僕は、突然しゃがみ込んだ。
いました、あの人型の緑色の魔物。異世界(小説)で噂に聞いたとおりの魔物、ゴ・ブ・リ・ン!
ゴブリン、コボルト、オーク、ハーピー、ドライアドなどなど、人型の魔物とは遭遇したくなかった。
アーチャー(弓使い)やメイジ(魔法使い)は別として、普通のゴブリンは、今の僕の力があれば、簡単に蹴散らすことができると思う。でも、人型で小学生低学年くらいの身長だよ。それをやったら、いじめ、蹂躙、虐殺になっちゃうよ。戦いたくないよ。
草の陰に隠れて、[鑑定3]発動。
[種別 (ゴブリン)、ランク(G)、出生地(ビギンの森)、スキル(武器攻撃、集団攻撃)]
やっぱり、低ランクだ。戦ったら楽勝だけど、僕のことに気付いていないようだから、ここはやり過ごそう。
と、思ったけれど、「ゴブリンの集落は、急激に発展して、村落に被害を与える」と、(小説で)誰かが言っていた。とりあえず、村落を作っているか確認して、冒険者ギルドに報告することにした。
[隠密]スキルを使って、慎重に後を付ける。森の縁を東へ10分くらい歩くと、ありました、ゴブリンの村。森の木を使って、簡素な小屋を建てている。ゴブリンの数は、見えているだけで50人。そして、ゴブリンの2倍近い身長の、ピンク肌でマッチョの豚鼻が3人。[鑑定3]してみると
[種別 (オーク)、ランク(E)、出生地(ビギンの森)、スキル(武器攻撃、統率)]
奴がオークであるのは、鑑定をするまでもなく分かっていたけれど、ランクがラージフォレストウルフと同じなので、意外と低い。[猿飛]、[隠密]の併用で全滅させるのも可能だが、戦いたくない。ここは、素直に退却だと、後ずさりした時、聞こえてきました。
「イヤー、やめて。じいやを殺さないで」
「お、お嬢様、この隙にお逃げくだされ」
ベタな展開。転移後の僕の行動には、シナリオがあるの? これ、絶対、助けに行くパターンだよね。ハイハイ、分かりました。助けに行きますよ。
マイミー鞄と金剛杖を[収納1]して、忍刀を背負い、[猿飛]、[隠密]、[忍刀]を発動させた。
お嬢様の声のした方向の掘っ立て小屋から数人のゴブリンが出てきた。[聞耳]を使うと、お嬢様の泣き声が聞こえる。僕は、その小屋に忍び込んだ。
ゴブリンはいない。お嬢様がじいやにすがって泣いている。お嬢様の背後に回り、口を塞いだ。
「しっ、静かに。君を助けに来た。奴らが気付かない内に、静かに逃げ出すよ」
お嬢様は、首を横に振っている。塞いだ手を離すと、
「じいやが、じいやが、じいやを助けて」
じいやは、脇腹を刺されて出血しているが、生きてはいるようだ。僕は、フィッシングベストのポケットからハイヒールポーションを取り出した(ように見せかけた)。ポーションを脇腹にかけると、みるみるうちに刺された場所が塞がっていく。ついでに、ハイヒールポーションとハイキュアポーションを取出、無理矢理じいやに飲ませた。
「おぉ!死んだと思ったが、生き返った。おまけに腰の痛みも無くなったぞ」
「じいや、じいや、そんなに大きな声を出すと、奴らに気付かれる。」
と、言ってるそばから、ぼくの背中越しに
「ウギャ」、「ウギギィーッ」、「ウゲウゲウゴー」と声が聞こえた。




