第10話 トラ! トラ! トラ! - 前門の虎、後門も虎
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森を歩いていたら、Dランクのフォレストタイガーと出会った。戦ったら勝てるかもしれないけど、自信があるわけではない。何よりも、顔が怖い。
ここは撤退だ! と思って横目で右手を見ると、木々の隙間から黄色と黒の縦縞が見える。ゆっくりと後ろを振り向くと、これまた、縦縞が見える。ここは大阪か! 左手にはいない様だが、そっちへ追い込んでいく罠のような匂いがプンプンする。
とりあえず、どう対処するか、ゆっくり考えるため、近くの木に2回[跳躍]して、10m程の枝の上に立った。3頭のトラがゆっくりと木の根元によってきた。そして、1頭が木を登ってきた。トラが木登りをする? そう言えば猫は木に登るのだった。あせった。あせって頭の中が真っ白になった。トラが真っ直ぐに迫ってくる。ん? 真っ直ぐ? 僕は慌てて鉄の木の槍を取り出し、後3mに迫っているトラの頭めがけて[投擲]した。
トラは木に登っているため両手が塞がっており、僕の投げた槍をまともに受けて、そのまま木の下に落下した。槍は深く刺さっており即死状態だ。僕は槍を直ぐに[収納]した。そして、次のトラめがけて[投擲]したが、さすがに躱された。もう一度槍を[収納]し、[投擲]しようとしたが、トラは油断なくこちらを見ている。至近距離でなければ、[投擲]は通用しない様だ。
こうなったら、接近戦をしかけながら逃げ切るしかない。僕は苦無を両手に持ち、[木走]、[跳躍]、[神足]を頭に描き、一気に木を駆け下りた。そして迫り来るトラに向けて、それぞれに苦無を[投擲]した。それから、目の前の木に駆け上がり、枝の上に立ち振り向いた。1頭のトラは眉間に苦無が刺さり倒れていた。もう1頭は肩口に苦無が刺さっていた。
僕は最後の苦無を手に持ち、再びトラに向かって木を駆け下りた。トラもこちらに向かって突進してくる。[神足]を使っているため、ゆっくり近づいて来るように見える。僕は、トラの目の前で[跳躍]し後頭部に向けて苦無を[投擲]した。空中でバランスを崩したため、着地の瞬間転がったが直ぐに起き上がることができた。3頭目のトラも倒れていた。
転がったため脇腹を痛めたが、[ヒール]で直ぐに治った。初めてのまともな接近戦を終えて、心臓がドキドキするが、達成感は半端ない。ひょっとして僕って強いのか? と言うより、スキルが優秀なのか? とりあえず、[木走]、[跳躍]、[神足]、[投擲]の4つの忍術スキルを合わせて、[猿飛]と名付けよう。
苦無3本を回収し、フォレストタイガーを[鑑定]した。
[名称(フォレストタイガーの死体)、用途(黒魔石中、爪、牙は中級武器の素材、毛皮は中級防具、防寒用の素材。損傷の少ない毛皮は、インテリア用として高額取引される。肉は高級食材)]
でました、高級食材。なんかもう、[収納1]の魔物の死体だけで、一儲けできそう。黒魔石は何に使うのだろうか。
ちょっと疲れたので、早いけれど昼ご飯にする。火起こしする気も起きないので、例によって、木の枝に跨がり、アポの実と清水で済ませる。昨日から4食アポの実で少し飽きたけれど、虎の子のあんパンに手を付けるほどでもない。
2個目のアポの実を囓りながら、ステータスを見たら、レベルが4にあがっていた。HP、MPの最大値が150になっている。割り振りポイントがどちらも2ポイント増えている。早く割り振りの「△」が出てくれないと貯まる一方になる。
名前[ひかる・てらだ]、種族[人間]、年齢[19歳]
称号[転移者]、職業[忍者、薬師]、レベル[4]
HP[118/150]、MP[118/150]
スキル:ポイント[9203]
収 納(中級)[100] →
鑑 定(中級)[100] →
回 復(中級)[100] →
錬金術(中級)[100] →
忍 術(上忍)[100] →
ステータス:ポイント[9003]
STR(筋力)[200]
VIT(体力)[200]
DEX(器用)[200]
INT(知力)[200]
AGI(敏捷)[200]
食後1時間は、武器作製とスキルの訓練にあてた。
最初に、鉄の木を使って、槍と薙刀を10本に増やしミスリル並に強化した。また、苦無も100本に増やしミスリル並に強化した。緑魔石小が少なくなってきた。
次に鉤縄(カギナワ 鉄製のフックが付いた縄)を1つ作った。縄はロープを5m使い、鉤は鉄の木から作り、ミスリル並に強化した。更に、撒菱を鉄の木から300個作ったが、緑魔石小が無くなるので、強化はしなかった。
これだけの量の武器を持ち歩ける忍者はいない。[収納1]のおかげで楽をさせてもらっている。転移した際、僕以外に[忍術]スキルを取得した者が1名いた。もしも出会ったら、高く売りつけよう。
スキル訓練については、[木走]、[跳躍]、[神足]、[投擲]の連携を何度もおこなった。特に[神足]のバランス維持については、念入りにおこなった。途中、[猿飛]をイメージしたら、見事に4つのスキルが一辺に発動した。これは便利だ。というか、[忍術]は柔軟性があるスキルだな。
訓練後、清水を飲みながら一服ついでに、サバイバルナイフを作ることにした。 この世界に転移した際、身につけていた服・靴、服のポケットに入っていた物、手に持っていた物は持ってくることができた。本当は、コンビニの買い物かごいっぱいに、あんパンとかエクレアとかプリンを持っていれば良かったんだけどね。
ポケットの中に入っていた物に、カード型のサバイバルツールがある。材質は、高級ナイフに使われているS30Vステンレス鋼で、硬くて錆びにくく、刃こぼれしにくい特徴を持つ。このツール、持ってるだけで気分が高まり、どんな逆境でも生きていけそうな気分になる(あくまでも個人の感想です)ので、いつもポケットに入れていた。。
しかし、この世界では役に立たない。ネジもボルトも缶詰も(多分)無いこの世界でドライバー、ナット、缶切りは必要ないし、5cm定規にいたっては、長さの単位が同じだとも思えないので、役に立たない。今後、必要な機能を考えると、ナイフ、ノコギリ、錐、スプーン、フォークくらいだ。そこで、S30Vステンレス鋼と鉄の木を使って、折りたたみ式の五徳ナイフを作ることにした。鉄の木をベースにS30Vを被せたような合金をイメージして、[合成・分離]、[変性・変形]を総動員して作り上げた。念のためナイフの背には、5cmの定規を刻み込んだ。完成品を手に持つと、この世界でも逞しく生きていける気がする。気分は重要だよね。
ついでに、[強化付与]しようとしたら、「銀魔石がないので、強化できません」とのことであった。木の強化が緑魔石だったので、銀魔石は金属の強化かな。
時計を見たら、午後1時を少し回ったところだったので、北に向かって歩き始めた。歩きながら、[遠見]、[聞耳]の訓練をした。
[遠見]を意識しながら景色を見ると、遠くの物がハッキリと見えるようになる。もっと見たいと思うと、ズームアップしたように大きくなる。簡単に言えば50倍ズームの双眼鏡のようなものだ。これを肉眼だけで実現できる[忍術]ってのは凄いもんだ。
忍者の[聞耳]については、「些音聞金」という金属製のプレートを壁にあてて聞く術であるが、単純に遠くの音に耳をそばだてるだけでも、音が増幅されて聞こえて来る。
虫の歩く音、小鳥のさえずりを楽しみながら歩いていたが、遠くの方から人の声が聞こえてきた。えぇ~! 人の声~?
次回のタイトルは、「第11話 ファーストコンタクト - どちらが異世界人?」の予定です。




