訓練初日…
「ゼェ〜ゼェ〜…」
早朝から、シゲルの訓練は始まっていた。
『明日、儂のとこに来い』の言葉は呆気なく裏切られて、朝6時から叩き起こされ早朝ランニングをしていた。
「なんじゃ?まだ、10キロも走っとらんじゃろ?だらしないのー」
「ゼェ〜ゼェ〜…だらしないって、殆ど登山だぞ!!」
「だからなんじゃ?簡単にへばってたらすぐに殺されてしまうぞ。時には2時間、3時間走らねばならぬ時が来るかもしれん。」
「ゼェ〜ゼェ〜来ないかもしれないよな。」
「まぁ、そうじゃな〜…しかし訓練ではやっておかなきゃ、実際なってからじゃ遅いからの〜」
(正論だ。しかし、この爺さん全然息が上がってねぇ…バケモンか?)
すでに登山道を1時間以上走っているのに、シゲルは普段通り話している。
「しょうがないのー。少し休むか…
ケンジ君、バトルフィールドは何処になるか分からんから、絶えず過酷な訓練をせにゃ勝ち抜けんぞ。」
「はぁ…シゲさんは…はぁ…どれくらい…はぁ…前から…はぁ…このゲームに…はぁ…参加してるんです?…はぁ…はぁ…」
「そろそろ4ヶ月になるかの〜
何もしてないより、こっちの方が楽しいわい!」
「ゼェ〜…死ぬかもしれないのに?」
「もう片足は棺桶に入っておるから、いつ死んでも同じことじゃよ」
(いつ死んでもいいなんて、俺にはそんな覚悟ないからな…)
「そんなに動けるのに片足は棺桶に入っているなんて、冗談キツイっすよ。」
「若い子たちにはまだ未来があるからの。老いぼれが先に死ぬのは当然の事じゃよ。わしが生きとる限り、そう易々殺させにゃせんよ。その為にお主も、強くならなきゃならん。」
「はい。シゲルさんの訓練に耐えてみせますよ。」
「良し!じゃあセーフハウスまで走って帰ったら朝飯でも食べるとするかいのー。帰りは降りだから少しペースを上げるぞい!」
「いっ!ペース上げるんですか?」
「わしの訓練に耐えてみせるんじゃろ?」
「分かりました。頑張りますよ。」
2人は登って来た登山道を降り始めた…
セーフハウスに戻って来たケンジは既に疲労困憊の状況だった。それを見たハジメはケンジにシャワーを浴びる様に促しながら、シゲルとの会話を始める。
「あの子モノになりそうかい?」
「まだランニングしかしとらんから、なんとも言えん。じゃがええ根性しとるぞ。」
「あたしの見立てでもイケてると思うのよね。」
「お前さんの占いでも生き残れそうなのかい…じゃあ後は本人次第じゃな…」
「この後も訓練するんでしょ?」
「当然じゃよ!」
「じゃあ、スタミナ着くご飯用意しなきゃね。」
「あぁ、よろしく頼む…」
「任せときな!」
シャワーを浴びたケンジはハジメ特製の生姜焼き定食を見て愕然とする。
「さぁ、ドーンと食べな!」
正しく、ドーンの言葉通り豪快に盛られたご飯…
(どんだけ盛ってるんだよ…丼飯2杯以上あるだろ!?ハジメさんの性格は豪快そうに見えたけど、ご飯の量も豪快だったなんて…)
ケンジは、食べ切れないと分かりつつ食べ始める。
「ん!んまい。」
「だろ!あんた、大分疲れていただろ?スタミナはちゃんと回復させなきゃね。」
「モグモグ……でもハジメさん。
流石にこの量は食べ切れませんよ…」
「何だらしない事言ってるんだい?」
「店で食べる量の2倍はありますよ?!」
「食べなきゃ夜までスタミナ持たないよ!」
そこまで言われたら食べない訳にはいかない、、、
結果、朝食に1時間を費やしてやっとの思いで食べきったのだ。満腹のケンジにシゲルがお茶を啜りながら話をする。
「お主、この後昼まで寝ておってよいぞ。」
「えっ?いいんですか?」
「その腹じゃ走ったりは出来んじゃろ!」
「すんません…食べなきゃハジメさんに悪いと思って…」
「謝らなくてよい!わしもちょっと反省したわ…」
「え?」
「なんでもない。とにかく昼から射撃の練習するからの!」
「わかりました。」
突然の休憩拡大に素直に喜ぶケンジ、折角の休み時間はシゲルの言葉に甘えて、自室で睡眠をとり体力回復に努めた。
休憩時間はあっという間に過ぎて、射撃訓練の時間になった。
「さて、そろそろ始めるかのー。
まずは動かない的を撃ち抜くのじゃ。
的は10個じゃ。よし、行くぞい。
はじめ!」
パン!パン!パン!パン…
「良し!10個撃ち落とすまでに14発か…
なかなかよい感じじゃな!じゃが、的を狙うまでの時間がかかり過ぎじゃ!」
シゲルは、新たな的を準備して自分で撃ち始めた。
パパパパパパパパパパン!
何という早撃ち!
ものの3秒ほどで全ての的が撃ち抜かれた。
「遅くとも5秒以内で撃ち抜くくらいにはならんといかんぞ!」
「次は、前後左右に的が動くからの、30秒で出来れば上出来じゃが…行くぞ!」
パンパン……パン………パン……
「クッソ!なかなか当たらねー!!」
パン…パンパン……パンパンパン……
「そこまで!残念じゃが1分経ったから終わりじゃ!」
「もう1分経ったんですか?」
「まぁ初日から出来るもんはなかなかおるもんじゃないから、気を落とすな…」
「やっぱり、実弾は反動がデカイですね。」
「しかし、おぬしは射撃はした事あるのか?」
「一応サバイバルゲームはやっていたので…」
「ふむ、おぬし先程はグロック17じゃったが、89式で試してみるか?」
「AKってありますか?」
「おぬしが使いたがってたのは、AKじゃったか?そこにAKMならあるぞ…」
「えっと……あった…やっぱりこの形いいっすね!」
「まずはそこのカウンターに肘をついて的を狙ってみよ。」
「はい!……よし!」
「ではいくぞ。」
次々と的が姿を表す。ケンジは順調に的を撃ち抜く…
ダンダダンダンダンダダンダダン!
(ほぅ、なかなかやりおる。ライフルは慣れてるようじゃの。)
最後の的を狙った時、カチ!カチ!……
ケンジ、まさかの弾切れ!
「マガジンの弾数まで考えてなかったじゃろ!」
「…すいません……」
「今はいいが、実戦だとそれでおぬしは死ぬ事になるじゃろう。いつも発射弾数を意識して残りの弾を把握するのを忘れないようにするのじゃよ。」
その後、数回の射撃訓練を終わった所にトオルが姿を見せてシゲルに話し掛ける。
「シゲさん、ケンジ君どうですか?」
「おートオルかい。そうじゃな…
今のところ、70点くらいかのー。まだ射撃訓練しかしとらんから、その内シュミレーションせんとな!
また、システムの構成をユキに頼んどいてくれるか?」
「分かりました。相手の動きなどのシュミレーションは私が作るのでユキにシステムの構成を作らせますよ」
「うむ。頼んだぞい。
おーい、ケンジ君、そろそろ上がるぞい!」
「はい!あっ!?トオルさん来てたんですか?」
「どうかな?訓練の方は?」
「まだまだですね。シゲルさんに指摘される事がいっぱいで、もっと訓練しなきゃダメですよ。それにこんなに射撃をしたのは初めてで肩が痛いです。」
「AKMか…まぁその内なれるさ。引き続きシゲさんの訓練を受けてもらって、数日後に実戦シュミレーションをやってもらうよ。」
「実戦シュミレーション?バトラーシステムですか?」
「まぁ、似たようなものかな?僕たちが相手だと、すぐに君がやられてしまう。だから、銃を持った的をフィールドに何体か設置する。ユキにシステムを組んでもらってるから、敵も撃ってくるからね!そこで射撃訓練をしてもらうよ。」
「実弾ですか?」
「流石にそこはペイント弾だが、強化してるペイント弾だから当たれば怪我するよ。
私達は、命を賭けたサバイバルゲームをしてるって事を忘れちゃいけない。」
「そう…ですね…」
ケンジは、トオルの話に自分の置かれている状況を改めて理解した。
「さあ、今日はこれくらいにして終わらせよう。」




