ユキとマサの苦労…
「そういえば、ユキに頼んでいたシステムが出来上がったから、明日から取り入れるから覚悟しとくんじゃぞ」
「はい!(遂に本格的な訓練だ。)」
この会話の1週間前……
トオルは訓練システムをユキに作成してもらう為にユキの部屋の前に来ていた。
「ユキ、いるかい?」
ガチャ…ゆっくり扉が開き、ユキが顔を出す。
「ユキにお願いしたい事があるんだけど、いいかな?」
ユキは扉を大きく開けてトオルを部屋へと招き入れる。
「じゃあ、お邪魔するよ。」
トオルが部屋に入ると薄暗い部屋には数台のパソコンが起動していて、パソコンの冷却ファンが小さく畝り(うねり)をあげていた。
「トオル…お願いって……なに?……」
「あぁ、ケンジ君の実戦訓練用の敵の動きなどを制御するシステムを作ってもらいたいんだ。」
「システム……作るの…簡単じゃ……ない。」
「それは、十分分かっているよ。でもこれを作れるのはユキしか居ないのも分かるよね?」
「……うん………分かる……」
「じゃあ、簡単に入れてもらいたい内容を伝えて行くよ。」
コクンと頷くとユキはパソコンに向きトオルの話すシステムの内容を確認しながら、キーボードを打ち込む……
そこには、ケンジの位置の確認はサーモグラフィーを使用し、的となる人形には自動砲台を使用、
人形にはキャタピラを付け移動可能にする。グレネードの代わりに硝煙弾を撃ち込む事も出来る様にしたい。などなど…
「結構、無理なお願いかな?」
「やるだけ……やって……みる…」
「人形や武装装置なんかは比較的直ぐに用意出来るから10体連動して出来る様にしてくれないかな?」
「…分かった……」
ユキは表情を変えずにパソコンと向き合ってタイピングを続ける…
「出来上がったら、私のデスクまで連絡くれないか?」
「………………………」
「もう集中してしまったかな?!じゃあ私は戻るよ?」
トオルの言葉などもう耳に入ってない…
ユキの集中力は途轍もない。集中し始めると食事を忘れる事もしばしばある。数日部屋から出ない事だってある位なのだ。
兄であるマサはサイバー警察に所属していたが、ここまで集中して作業をする人は見た事がなかった。初めてユキの集中力を見た時は正直気持ち悪かった。自分でもそれなりに長時間パソコンと向き合っていられるが、それも丸一日が限度だ。
ユキの異常な行動に心配な兄は、度々トオルに無理をさせ過ぎだと抗議するしていた。
「ユキ……食事を持ってきたよ!」
「…………………………」
「はぁ……やっぱりダメか…」
ユキの食事を持ってきたマサが諦めの溜め息を吐く。
トオルがシステムの作成を依頼して既に3日、ユキはほとんどパソコンと向き合っている。
「あっ………兄さん?……」
「あっ!ユキ…食事を持ってきたよ。」
「いつも………ありがとう……」
「なぁ、そんなに急いでやる必要があるのか?」
ユキのベットに腰を下ろしてユキに話始める。
「私は……出来る……事を……やるだけ……」
「いや、分かるんだけど…集中し始めたお前は周りが見えなくなるから、何日もパソコンと向き合ってあまり休んだりもしてなさそうだし……」
「大丈夫…時々……寝てる……」
「分かった…なんか欲しいものあるか?次の食事と一緒に持ってくるよ。」
「じゃあ……レッドブル……」
「分かったよ。
ユキ!絶対に無理だけはするんじゃないぞ」
「…うん!……分かった……」
マサは他にも話をするつもりだったが、ユキの作業の邪魔をする訳にはいかない。静かにユキの部屋をあとにする。
2日後……
「ユキ、居るかい?」
ガチャ!ドアが開いてユキが顔を出す。
お風呂上がりの様で頭にタオルを巻いた状態でユキはトオルを部屋に招き入れる。
「出来た……コレが…システムを…組み込んだ…MO」
「ありがとう!ユキ…ゆっくり休んでいいよ」
そう言って、MOを受け取り部屋を出るとコウジの射撃場に向かう。
部屋に残ったユキは疲れた身体をベットに預け、そのまま寝息をたてて熟睡し始めた。




