氷の覇王達の弱さ
王は目の前の男の気配が大きく変わった事実に伝う冷や汗をぬぐった。
。
「こんなに楽しいのは初めてだ。感謝する」
危機感を抱く王とは反対に笑みを浮かべるカルマ。
現状マルドアは意識を保つのがやっと。メルフィは流石にタフでまだ動けはするが、今までのような動きは期待出来ない。王は利き腕である右が使えない現状。だが、二人より足は動く。
不意に何かが動いたのが分かった。飛び退いて避ければ、髪に蹴りがかする。いつ放ったのか、動いたことすら気づけなかった。
「こっちだ」
聞こえた声は背後から。動こうと思った直後背中に蹴りが入り、咳き込む王。庇うようにメルフィが殴りかかればその拳は止められる。続いて蹴りあげればそれも容易に防がれ、それを理解した直後頭突きが鼻っ柱に叩き込まれる。
「ぐっあっ!」
驚きと痛みに神経が持っていかれ、ハッとしたときには腹部に蹴りがめり込んでいた。
「メルフィ!!」
転がって踞るメルフィにレオナが叫ぶ。
「大丈夫・・・だから・・・」
そう言う彼の口、鼻、額至るところから流れる血が足元にいくつも落ちた。
その時、這いずって近付いたマルドアがカルマの足を掴む。獣のような荒い呼吸を繰り返しながら、鋭い瞳でカルマを見上げていた。
そんなマルドアをカルマは無表情に一瞥したかと思えば、掴まれていない足でマルドアの顔面を蹴り抜いた。
だがその隙を見逃さず、メルフィがカルマの顔面に、王がカルマの腹部に拳を叩き込んだ。僅かに仰け反るカルマ。だが、目はギラギラと獲物である二人を捕らえた。
まずいと思った刹那、メルフィの腹部に膝が叩き込まれる。胃の中の物が全てなくなるような一撃だ。その場に膝をつき、吐き出す。
王はカルマの顎を狙って振り抜く。だがその拳は僅かに前髪をかするだけにとどまった。
「愚直な拳だ」
その言葉と共に王の視界が一瞬痛みと共にブラックアウトする。だが、直後浮かんだディーナの顔が王をその場に踏みとどまらせた。
「覇王。愛や恋といった恋情の定義は何だと思う?」
王は問いの真意が読めず、黙ってカルマを睨み付けていたが、カルマは問いかけておきながら答えを求めず続ける。
「世には吊り橋効果というものがあるらしい。恐怖の興奮を恋の興奮と履き違えるのだそうだ。つまり、恋情など勘違いでしかない。お前たちが俺の妹達に向けるその情も勘違いだ。いつか同じような思いを抱く相手が現れる。もう眠っていいんだ」
カルマの優しい声音に三人の男が吼えた。
『ふざけるな!!』
王はカルマの胸ぐらを掴み、マルドアとメルフィは地に這いつくばりながら叫んだ。
「ならばお前の彼女達に抱く思いも勘違いということだろうが!!そんな奴には絶対渡さん!俺の人生はディーナなしでは叶わん世界だ!!」
カルマは王の顔面に容赦なく拳を叩き込んだ。流石の王も倒れ込み、小さく呻く。カルマは立ち上がることすらままならなくなった男たちを見下ろしながら口を開く。
「虫けらのように地を這う身でありながら、それでも吠えるか。身のほどをわきまえろ。三人で俺を倒せぬ者共が愛しい者を確実に、完璧に守れると思うのか?」
奥歯を噛み締め、悔しげに答えを口にしない男達。その時




