氷の覇王の戦い
カルマの顔面を狙ったメルフィの蹴りは、僅かな動きで避けられた。続いて王の拳はカルマの腹部を狙うがカルマは膝で腹部を庇い、王はその膝に思いきり拳を打ち付けるはめになる。
一瞬顔を歪める王の腕をつかんで引き寄せ、カルマは思いきり投げ飛ばす。王は咄嗟に受け身はとったものの強打には変わりなく、ダメージを全て緩和することは出来なかった。
そんなカルマにメルフィが横蹴りを放てば、腕で防がれ、反射的に舌打ちする。メルフィは拳を振り上げるカルマに気づき、避けるのは難しいと防御の姿勢をとるが、視界の端に何か映った。それが何か悟る前に衝撃が顎から脳天に突き抜ける。左の拳はフェイントの右拳による攻撃だ。
視界が一瞬真っ白になった。
「メルフィ!!!」
その声で我に返り、脚に力をいれ、真っ直ぐ前を見据える。獣のような鋭い瞳にカルマは愉快そうに笑った。
「加減したつもりはなかったがな」
その声と共に後ろに蹴りを放つカルマ。後ろに迫っていた王の蹴りと交差し、王の方が弾かれ、バランスを崩す。カルマは踏み込んで拳を振り抜くが、間一髪王は避けて見せ、カウンターをカルマの頬に叩き込む。
鈍い音と手応えに王は一瞬油断した。カルマは拳を作っている王の腕を引き、膝と肘で挟み込んだ。
ゴキィッ!!
嫌な音と共に王の短い悲鳴が聞こえた。
「陛下!!!」
飛び出しそうになったディーナをイルリカが止める。
「離して!イル姉!!」
「信じて」
姉のたったその一言でディーナは立ち止まる。姉の瞳には不安と心配の色が拭えていなかったが、確かな強いものも感じた。
再び男の戦いに目を向け、目を見開く。
マルドアがカルマの足にしがみつき、動きを止めていたのだ。
「陛下!メルフィ!」
予想外だったらしくカルマは一瞬隙を見せた。気づいた時には目の前に拳が二つ迫っていた。
王とメルフィの渾身の一撃は見事に決まり、カルマは地面を転がる。
メルフィは膝が震え、王の右腕は次第に腫れていっているのが分かった。
今までの動きを見ていて皆が感じている。
三対一でもカルマは格が違うと。その強さが分かっているからディーナはもう立たないでと祈った。
大好きな人が傷つくのも、大切な人が傷つくのももう嫌だ。




