王の剣の心配
メルフィはひたすらに鍛練を続けていた。
皆が寝静まった夜中の訓練場。少し前まで他の団員達がいたが、皆それぞれ満足したあと寝静まった。それを見計らって訪れた。
何も考えず無心で剣を振るう。何かを振り払うように。
だが不意に殺気を感じ勢いよく剣を振り抜く。金属のぶつかり合う音が甲高く薄暗い訓練場に響いた。
「なんの真似ですか。団長」
メルフィは斬りかかって来た相手、ギドを鋭く睨む。
「隙あるように見えたんだけどなー。まぁ、これくらいは防げねぇと副団長なんざ勤まらねぇよな」
ギドはニッと笑いながら続ける。
メルフィも応えるように遊ぶようなギドの剣をさばいていた。
「なぁメルフィ」
「何です?」
「お前本当に良いわけ?」
「何がです」
「レオナちゃんのこと」
その名前が出た瞬間明らかな隙が生まれ、ギドはメルフィの剣を弾き飛ばした。
「名前だしただけで滅茶苦茶動揺してんじゃねぇか」
苦笑するギドにメルフィは黙ったまま剣を拾いに行く。
「僕は何もする気はありません」
「本当にいいのか?」
「くどいですよ。団長」
「お前過去のことそんな気にしてんの?」
ギドの言葉にピクリと反応する。
「そんなって何ですか?」
「自分の両親殺したことだよ」
ガキィィイン!!
鋭い金属音が訓練所内に響き渡った。
「過去の傷を抉るような真似、貴方はしないと思ってましたよ」
本気で斬りかかったメルフィの剣はギドによって簡単に防がれた。
「必要ならするぜ?」
「今が必要だったと?貴方はどうなんですか。過去に囚われているのは貴方も同じでしょう」
鋭く睨んでくるメルフィの額にギドはデコピンを入れる。
「バーカ。俺とお前を一緒にすんじゃないよ。俺は守れなかったことには悔いてるが、幸せだったことには感謝してる。お前みたいに一生幸せにならねぇみたいな馬鹿な覚悟はしちゃいねぇよ」
「僕の人生を貴方に指図される覚えはありません」
メルフィは剣を納め、ギドに背を向ける。
「そうやって逃げ続けんのか?」
「・・・貴方が守れなかったことを悔いていたように、僕にとってはこれが贖罪なんですよ」
歩きだしたメルフィの背に何かが迫り、咄嗟に剣を抜いて弾き飛ばす。飛んできたのはナイフだとすぐに分かった。だが、直後飛んできた拳は避けきれず、跳んで衝撃は殺す。
「地味に避けるんじゃねぇよ!腹立つ!何なんだよ!この城のヤローどもは!!腑抜けばっかか!!」
「いきなり八つ当たりとはどういうつもりですか」
メルフィは切れた口元を拭いながら言う。
「ただの八つ当たりじゃねぇよ。お前自身にもムカついてる」
「僕の思考で貴方にとやかく言われる覚えはないんですが」
「お前の贖罪はただの自己満足だろうが。親理由に逃げて、それが贖罪か?馬鹿言ってんじゃねぇよ」
ギドの言葉にメルフィはカッとなった。
「あんたに何が分かるんだ!!分かったようにほざいて!!あんたの考えが僕の考えだと思うな!!僕がどうなろうがあんたには関係ないだろうが!!放っておいてくれ!!」
本気で感情を露にして怒鳴るメルフィは二度目だった。走って行くメルフィを追う真似はせず、ため息をつく。
「なぁ。アフターケア頼んでいい?」
「えぇ。勿論ですよ」
当然のようにされる闇の中での会話。薄暗い光の中から現れたのはライドだった。
「俺・・・結構あいつのこと大事に思ってんだけどなぁ・・・。関係ないって言われちまった・・・」
落ち込むギドの肩をライドはポンと叩く。
「私に気付かないぐらいには彼の心に響いていましたよ。貴方は人の心を動かすのがお上手だ」
「荒波たてんのは得意なんだよな。だから代わりにならしてやってくれや」
「えぇ。承知しました」
ライドはメルフィが去って行った方へと歩いて行った。
「・・・マル坊の方はラディに頼んどくかなぁ」
そんなことを呟きながらギドは歩きだした。




