歌姫の姉荒ぶる
ディーナとイルリカはもう席を外していいということで、二人は廊下を歩きながら話をする。
「イル姉が喧嘩買うなんて珍しいね。どうして?面倒ごと嫌いなのに」
「・・・何でかしらね」
イルリカの答にディーナがえ?と聞き返すとイルリカはただ・・・と続けた。
「私がくだらない女だと判断されて、そのせいで選んでくれた方の評価も下がるのは・・・ちょっと苛立ったから」
イルリカの表情はいつもと変わらないがディーナはふとレオナの言葉を思い出した。
【イル姉ってマルドアさんのこと好きなのかな?】
もしかして、もしかすると・・・そうなのだろうか・・・。
ディーナはチラリとイルリカを見上げる。
二人はとてもお似合いでそうなってくれたらマルドアが兄になるのかと思うと嬉しかった。
「頑張ってね!お姉ちゃん!」
「え?勉強のこと?勿論よ。でも貴方も教養なんか学んだ方がいいかもね」
「あ、うん!」
勉強のことではなかったが自分が教養を学ばなければならないことも事実なのでとりあえず頷いておいた。
「あーもう!まだイライラするぅ!!誰か付き合って!!」
「何してるのレオ姉!!」
イルリカは勉強をするということでディーナは邪魔にならないよう一人にし、変わりにレオナを探していた。メイドに聞けば、なんと騎士団の訓練場にいると聞き顔を出してみるとレオナは木剣を振り回し、その周りには兵士達が倒れていた。
「ディーナァァアア!!!」
ディーナの姿を認めると、レオナは木剣を投げ捨てディーナに抱きつき頬ずりをした。
「ど、どうしたの?」
「こんなに可愛いのに!こんなに可愛いのにぃぃぃい!!!」
その言葉でレオナが荒ぶっているのはアルルがディーナを「ブス」と言われたのを気にしているのだと分かった。
「私のために怒ってくれてありがとう。レオ姉」
ディーナはよしよしとレオナの頭を撫でるとレオナは少しだけ落ち着いた。
「ディーナさん。その人連れて行ってもらえますか・・・」
ゲッソリしたメルフィが現れ、ディーナはギョッとする。
「だ、大丈夫ですか?」
「その人のせいで仕事になりません・・・っ。いきなり『ストレス発散させてー!!』と飛び込んできたかと思えば兵士の一人の木剣を奪い取って手合わせに参加してきて・・・。しかも客人で、更に女性ということで兵士達もまともに手出しが出来ずこの状況・・・。というか何で無駄に強いんですかその人」
メルフィは頭痛がし始めたのか痛そうに頭を抑えている。
「レオ姉はいつも私達の代わりに喧嘩してくれてたからかと・・・」
ディーナの真面目な答にメルフィはそうですか・・・と息を吐く。
「兵士達幸せそうだからいいんじゃね?おっぱい近くで見れたんだし「あなたは黙っててくださいギド団長。それから女性に対して失礼です」
確かに倒れてる兵士達の中には幸せそうにしている者達が何人かいた。
「別に見られて減るもんじゃないしいいけど」
レオナは自分の胸を揉んで見せる。
「揉まないでください!!」
メルフィは上着を脱いでレオナにかける。
「大体胸元が開きすぎです。風邪を引くでしょう」
「だって胸開いたやつじゃないと苦しいんだもん」
「だもんじゃありません。サイズ大きめの服を買えばいいでしょう」
「そしたらダボダボになって太って見えるんだもん」
「誰も気にしませんよ」
「アタシが気にするの!!」
ギドは二人の会話を見て「これで付き合ってないんだぜ?」と心の中で呟いた。
レオナはふと思いついたようにメルフィの上着の匂いを嗅ぎ始めた。
「嗅がないでください!汗臭いでしょう!」
「うん」
素直に頷かれ自分が言ったのにちょっと傷ついたメルフィ。
「でも、好きな匂い」
そう言ってニコッと笑うものだからその場に居た者達全員が硬直した。
「ディーナさん・・・」
「は、はい」
「頼むからその人連れてってください・・・っ」
「りょ、了解です!」
プルプルと震えるメルフィを見てディーナは即座に了承し、レオナの背中を押す。
「え!?怒ったのメルフィちゃんと好きって言ったじゃん!」
「あーもう!さっさと行ってください!!」
レオナとディーナの姿が見えなくなったところでメルフィはその場にしゃがみこむ。
「なあ。メルフィ。もう素直になっちゃえば?」
「何の話ですか知りませんよ!!」
やけになったように叫ぶメルフィにギドはうーんと唸る。
「何でそこまでかたくなな訳?」
「・・・僕は、色恋沙汰にうつつを抜かしてる訳にはいきませんから」
すでに手遅れな気ぃするよ?という言葉を言っても無駄なようなのでギドは黙っていた。
そして、メルフィをこんなにかたくなにしてしまったのは自分だろうということも反省した。




