歌姫と王の手足
「ラシオンとベネが怖いから怯えてんじゃん。オレは自分で怯えさせないと面白くないのー!」
先頭に居た中性的な人物はぷんぷんという形容詞が似合うような言い方をし、眼鏡の青年をラシオン。ダークグリーンの髪の男性をベネと呼んだ。
最初は気遣ってくれているかと思ったため、後半は聞かなかったことにしよう。
「む、スマン。この顔は生まれつきだ」
「こん中で一番怖いんはお前やと思うけどなぁ。アルル」
「否定はしないよ」
アルルと呼ばれた少年か少女はニッコリと笑い、語尾に星がつきそうな調子で言う。
ビクビクしていたディーナだが相手をこの城で見たことがないことを考え客人かと思う。だが、客人なら案内がいないのはおかしいとも思い悩んでいると。
「あんた達誰?」
迷いも恐れもないレオナにディーナがギョッとする。
「レオ姉!!失礼だよ!」
「だってアルルとかって奴も失礼だったし。お互い様」
「へえ。オレとタイマン張る気?」
バチバチと火花を散らし始めるアルルとレオナの間にディーナがわーっ!と割って入る。
「あ、あの、私はディーナと言います。皆様はどういったご用件でここに来られたのでしょうか?」
ディーナの言葉に三人が同時にピクリと反応しディーナを凝視する。慣れていない視線にディーナはしどろもどろになる。
「え、あ、あの・・・?」
「ふーん・・・君がねぇ・・・。どれぐらい美人かと思ったけどブスじゃん」
アルルがそう言った瞬間レオナの蹴りがアルルの前髪を掠めた。
「謝れ」
「レオ姉!やめて!!」
ディーナが腕を掴んで引っ張るがレオナは殺気むき出しでアルルを見る。アルルは愉快そうに笑っていたが、その脳天に拳が振り下ろされた。
「いった!何すんのさベネ!!」
「相手が誰であろうと女性に対し失礼な物言いだ。謝れ」
ベネの威圧に押されアルルはブスッとはぶてながらも悪かったよ・・・と呟く。
「い、いえ気にしてませんので。姉が失礼も致しました」
「アタシは謝んないからね!」
レオナはアルルを威嚇し続けている。
「話進まんので僕が進ませてもらうけど、これから幹部会議でディーナさんと姉のイルリカさん?探してんねん」
「幹部会議・・・?」
「そ、本当は地方で仕事してるんだけど君とお姉さんのことでこっちに戻ってきたんだ。オレはアルル・オルカ。財務省長官。君らの顔覚えとくから」
アルルはディーナと変わらない年のようにも見えそんな人が長官とは・・・と呆然としているとラシオンは外交労働省長官。ベネは農設省長官だと聞かされた。
財務省とはその名の通り全ての財務を管理する役職だ。給与などはここが決めていると言ってもいい。外交労働省は国と国との交易、国の労働についての基準、管理を行っている。ここが労働者の働きぶりを財務省に提出している。農設省は農畜産業についての主な内容、建物の建設などの管理を行っている。農畜産業に関わることはここに連絡をすればいい。ここで申請内容を吟味し、財務省にいくら出せるかを確認。出た金額内で相応の処置をとる。という形だ。
勿論ディーナがイルリカから聞いたうろ覚えの知識のためもう少し色々あるとは思う。
話を聞いた後ディーナが王の元へ案内し、レオナには先に王に連絡をするよう頼んだ。レオナはアルルを見ながら渋っていたがディーナに促され素直に動き出した。
「あの・・・アルル君は幾つなんですか?」
「子供扱いしないでくれる?オレ確実にお前より年上だからね」
「え・・・もしかして19歳ですか?」
「26」
ディーナは暫し思考が停止した。26と言えばマルドアと同じ年だ。
「ええ!?」
「驚きすぎでしょ。いくらオレが童顔だからって」
「ご、ごめんなさい。アルルさん・・・」
「別に呼び方そこまで気にしないから好きに呼んでいいよ。それより、君歌が上手いって聞いてるんだけど」
ズイッと顔を近づけられディーナは思わず仰け反る。
「聞かせてくれない?」
「え、えと・・・」
別に歌ってもいいのだが、アルルの何か企んでいるような視線が気になり動揺していたその時。
「ディーナ!!」
不意に聞こえた声は一番好きなもので、抱きしめらたと分かるのと同時にフワリと香る匂いも一番好きなものだった。だが、何より相手の存在に驚く。
「陛下!?」
「わお。お早いご登場で」
アルルはディーナを抱きしめている王を見てニヤリと笑う。
「お前達、来るなら連絡を入れろ」
「アポなし突撃訪問に意味があるんや。取り繕われちゃ意味ないんで」
「取り繕う?」
王が聞き返すとベネが威圧的に王を見下ろしながら言う。
「最近王の身勝手な行動が多い。今回はその点などについて話し合いに来た」
暫し王とベネはにらみ合っていたが、やがてディーナとイルリカも同席の会議となった。




