氷の覇王の癒し
ディーナは執務室のドアをノックし声をかける。
「陛下。失礼します」
部屋に入ると王は少し驚いた様子でディーナを見つめ問いかける。
「どうした?」
「あの、マルドアさんに言われて手紙に一筆添えに参りました」
「ああ。助かる」
王がしたためた手紙にディーナは姉達のこと自分のことについて軽く説明し、安心するように結んで終えた。
「これは明日の朝にでも出そう。馬を走らせれば数時間で着く」
王が手紙を封筒の中に納めたところでディーナは声をかける。
「ケーキをご一緒に食べませんか?」
ディーナはケーキの箱を王に見せながら提案すると、王は少し考え込んだ後答える。
「そうだな・・・少し休憩にするか」
王はディーナに向かって自分の膝をポンポンと叩く。
「え・・・」
「来い」
その一言にディーナは顔を赤くしながらそっと王の上に座る。王はそんなディーナを包み込むように抱きしめた後息を吐く。
「少し・・・疲れた・・・」
ディーナは心底悩んだが、そっと王の頭を撫でる。
「よく・・・頑張りました・・・」
王は驚いて目を丸くしていたが、この可愛い生き物を今すぐ犯していいだろうかと悪魔がささやき始めたのを理性という天使で倒す。
「す、すみません!不快でしたか!?」
「いや・・・大丈夫だ・・・」
王は頭を撫でていたディーナの手をとりそっと頬を寄せる。ディーナは甘えてくれていると分かる王の仕草に嬉しいやら可愛いやらで内心パニックになっていた。
「ケーキ!ケーキ食べましょう!」
ディーナに言われ王はああと頷いて、ディーナを膝に乗せた状態でケーキを食べ始めた。落ち着いたところでディーナは意を決め口を開く。
「あの・・・陛下。今日は姉達が申し訳ありませんでした」
「何を謝ることがある?」
「ご迷惑を・・・」
「迷惑などかけられてはいない。姉達の心配は最もだ。お前を愛しているからこその行動の何処に咎める必要がある」
王はそっとディーナの頭を撫でる。
「イル姉は何か・・・?」
相変わらず不安そうに見上げてくるディーナに王は真っ直ぐ見つめ返して答える。
「お前がどれだけ家族に愛されているかを聞かされただけだ。いい姉を持ったな」
ディーナは少し照れくさそうに笑った後、はいと頷いた。
家族に愛されているこの宝を世界の何よりも愛し、大切に慈しむことを改めて心に誓った。
そしてもう一つ、臣下の幸せを願ってもいるのだが、何を決めるにせよ動くのは本人だ。それに自身がギドのように上手く人の心を動かせるとも思えないことを考えるとただケーキを頬張るしかなかった。




