少年に振りかかる災難
「お兄ちゃんが起きる前はね!アタシ達三人で少しずつお兄ちゃんのお口にお水入れてたんだよ!」
「え・・・」
「グラスの中に葉っぱをつけてね!そこから一滴ずつ落ちる雫をお兄ちゃんの口に入れてたんだ!」
明るく語っているが大変だったに違いない。
「す、すまなかった」
ひとまず謝罪するがレオナはキョトンとした顔をする。
「どうした?」
「何で謝るの?」
何で・・・
「大変だっただろう?ずっと眠っている俺に水を飲ませるのは」
「楽しかったよ!ちゃんと一滴ずつじゃないとお兄ちゃん死んじゃうからねーってお母さんに言われてみんなで気をつけてそーっとそーっとやるの!」
俺の生死はもしやゲーム感覚だったのか・・・と思った。だが、そのお陰で今生きているのだから・・・
「ありがとう」
「その言葉が欲しかった!!」
レオナは二パッと笑って去って行った。それと同時にディーナも歌をやめ、気付いた少年はディーナに声をかける。
「元気な姉だな」
「は、はい・・・」
姉に反してディーナは随分と内気な性格のようだ。姉達といたときは結構堂々としていたように思うが。だが、見知らぬ男、しかも火傷だらけの妙な人間と二人きりにされて何も思わない訳はないかと内心で納得する。
「歌・・・好きなのか?」
「はい。皆が褒めてくれるので・・・」
「確かに美しい声だった。なんて歌なんだ?」
「え、えと・・・こ、小鳥のさえずり」
「小鳥のさえずりという曲なのか?」
「ち、ちが・・・」
ディーナは何故かしどろもどろで動揺しているため、少年は首を傾げる。
「ディーナが歌うってるのは自分の自作曲です」
その台詞を言いながら部屋に戻ってきたのはイルリカだった。新しい上掛けを少年の上にかけながら口を開く。
「歌ったのは小鳥のさえずりを聞いて思いついた曲だったからそう答えたのであって、曲名などはありません」
「君が長女か。しっかりしてるな」
「当然のことをしてるまでです」
少年は年の割りにクールな少女に少し苦笑した。
「おにいちゃーん!スープできたよー!」
そんな元気な声と共にレオナがスープの器を持って走ってくる。
「レオナ走らない!」
とイルリカが言った直後だった。フラグの如くレオナはつまずき、スープは宙を舞い、少年に降りかかった。
少年が傷からスープが入った痛みと、スープの熱による痛みとで悶え苦しんだのは言うまでもない。




