火傷の少年と母
「おかゆできたわよー」
土鍋を持って現れたクレアは少年の傍に置いた後、小さな器におかゆを移してスプーンとともに差し出す。
「熱いから気をつけてね」
「あ、ああ・・・」
少年は器を持とうとしたが、火傷によって上面の皮膚がなくなっており、器を通しての熱が神経を激しく刺激する。
「ぐあっ!」
小さな悲鳴をともにおかゆは少年の上掛けの上に落ちる。
「あら大変」
あまり声に慌てが見えないクレアがすぐに器を回収し、イルリカが上掛けを取っ払う。おかげで少年の足におかゆが刺激を与えることはなく済んだ。イルリカはすぐに上掛けを洗濯するため抱えて部屋を出て行った。
「す、すまない・・・」
眉を下げる少年にクレアは微笑む。
「私の配慮の方が足りなかったわ。痛いわよね」
クレアは土鍋のおかゆをスプーンですくい少年に差し出す。
「ゆっくり食べて」
少年は暫しためらっていたが、ゆっくりと口に運ぶ。だが、嚥下した直後に吐き出しその背をレオナとディーナが心配そうに擦る。
「胃がびっくりしちゃったのね。レオナ。お水もってきてくれる?」
「はーい!」
レオナが駆けていき、クレアは少年の手や胸の汚れた部分を拭く。
「俺は・・・何故生きて・・・っ」
拳を握り締める少年の瞳からは涙が零れ落ちた。
「貴方には貴方の役目があるからでしょ?」
クレアの言葉に少年はそっと顔をあげる。
「誰しも人は何かを成すために生まれてくるの。もしかしたら馬や牛のお世話をするために生まれたのかも知れない。もしかしたら、工場で服やズボンを作るために生まれたのかも知れない。もしかしたら、誰かを愛し、子を育むために生まれたのかも知れない」
クレアは優しく笑ってディーナの頭を撫でた。
「貴方が私達の娘と出会って、ここで治療されて生きてるのには必ず理由があるわ。だから、その『何故』はこれから探していきなさい。自分のためでもいい。勿論誰かのためでもいい。人は生きることに意味があるわ。死んじゃったらそれでおしまいだしね」
クレアは土鍋を持って立ち上がり、スープを作ってくるから待っててと出て行った。少年は自分の両手を見つめ考え込んだ。その時不意に美しい歌声が耳に届き振り返れば背中を撫でてくれていた少女が歌を歌っていた。
幼さのある声だが美しく、落ち着く歌声だった。
「ディーナの声綺麗でしょ!?」
不意に目の前に差し出されたグラスに驚く。直後、先ほどレオナと呼ばれた少女が顔を出した。
「あ、ああ・・・。とても・・・」
「アタシも大好きなんだ!ディーナの声!」
レオナはニッコリと笑い、そんなレオナから少年はグラスを受け取る。
「水・・・ありがとう」
「どういたしまして!」
少年は水を少しずつ胃におさめた。




