三姉妹と火傷の少年
イルリカを先頭に三姉妹はいつものように川に魚を取りに来ていた。川魚はガイアの特産品であり、ガイアでは物心がつけばもう働き手だ。
ディーナは楽しそうに歌を歌い、レオナはそんなディーナに合わせて歌を歌っている。が、音がかなり外れていることにイルリカは苦笑した。レオナはディーナと違って酷く音痴だ。
その時蝶がレオナの目の前を通り過ぎ、レオナは顔を輝かせて走り出した。
「レオナ!待って!!」
川は危ないことを三人は散々言われているから、ディーナはかなり慎重に動くし、イルリカも注意する。だが、レオナだけはあまり危険性を理解していない。このまま川に落ちでもしたらとイルリカはぞっとした。早く追いつかなければと足を速めた直後
「キャアア!!!」
レオナの悲鳴に目を見開く。
「レオナ!?」
駆けつければレオナはしりもちをつきおびえていた。その視線の先をたどり、驚愕した。
川べりに血まみれの少年が倒れていたからだ。
すぐに大人達を呼んで少年を家に運びこんだ。
少年は十代後半だろうというところだが、全身に火傷を負い、特に顔が酷かったため、はっきりとは断言できない。包帯でグルグル巻きにされた少年をシンがミイラ男と言ってお父さんに殴られていた。
少年は何日も眠り、寝息だけはたてる少年の口に1滴ずつ水をたらすのが姉妹の役目になっていた。勿論大量に入れると窒息死してしまうため時間をかけて1滴ずつ、1滴ずつ落としていた。
ある日、少年が目を覚ました。と言っても顔は包帯に覆われているため、動いたことで目を覚ましたと分かったのだが。
「俺は・・・死んだのか・・・?」
恐らく目の前が真っ暗だからそう思ったのだろう。そんな少年にイルリカが答える。
「生きてますよ」
少年はイルリカの声に驚いた様子で勢いよく飛びのき、全身の痛みに悲鳴をあげた。
「大丈夫!?」
そんな少年にディーナが心配そうに触れ、少年は再び肩を跳ねさせる。
「包帯とろうか?」
レオナがそう言って勝手に包帯をとってしまった。まだ血の滲む顔は火傷でただれ、左目は皮膚と皮膚がくっついてしまって開きそうにない。だが、右目だけはまっすぐイルリカを見た。
「おはようございます」
「お前達は一体・・・」
「あら、目が覚めた?」
ひょっこり顔を出したのはイルリカたちの母であるクレアだった。
「あなたが川べりで死にそうだったのをうちの娘達が見つけてね。勝手に連れて帰らせてもらったわ。ここに危険はないから安心して」
ニコリと微笑む母の言葉に少年はまだ困惑している様子だった。
「おかゆ作るからちょっと待っててね」
少年はふと顔に触れ目を見開く。そして自身の腕を見る。焼けただれた皮膚から自分の顔も同じだろうというのが分かった。
「・・・ここは何処だ?」
少年の問いにイルリカが答える。
「ウルアークにある小さな村ガイア」
「ガイア・・・。なるほど。俺は運河からガイアの近くの川に流された訳か」
「お兄ちゃんは何処から来たの?」
無邪気なレオナに少年は小さく笑った。
「何処だろうな」
「分かんないの?変なのー」
唇を尖らせるレオナをイルリカがペンッ!と叩く。変なのと言ったことを叱られてるのだとレオナは頭を押さえてごめんなさい・・・と言っているが、少年はイルリカが気を使ってくれたことを察した。
「お前達・・・俺が怖くないのか?酷い顔をしてるだろう」
「怖くないよ」
即答のディーナに少年は目を丸くする。三姉妹の中で彼女が一番小心者な気がしていたからだ。
「お兄ちゃんみたいな人村にもいるしねー」
レオナの言葉で少年が合点がいったように頷く。




