王の憂い
ギドが執務室に入るとマルドアが王の執務机の前に立って話をしているのが分かった。
「おい。ノックぐらいしろ」
マルドアがギドに気付き、いつものようにキッと睨むも、ギドは飄々と答える。
「別に俺にバレて悪いような話なんてしねーだろ?正直忘れてたんだけど」
マルドアは大仰にため息をつき、腕を組む。
「報告だろう?何か分かったのか?」
マルドアに促された途端、ギドの表情が真剣みを帯びた。
「俺達の後をつけてた奴がいた。かなり腕の立つ奴だ。案外質問には答えてくれてな。『ある方が会いたいと願ってる方を探しに』ってことだったから、今日来てた奴はどこぞの臣下だろうな。今日のことは見たまま報告するってよ。しかもそいつは俺と刺し違えてなら倒せる自信があると断言しやがった。俺を殺せる奴だ。よっぽどだろう」
「探し人・・・」
「レオナちゃん、メルフィ、そんで嬢ちゃんの三人の誰かだな」
マルドアは少し考えてから答える。
「・・・お前を殺せるほどの腕の者がいる可能性が高い国としては・・・『バランギアス帝国』ぐらいしか思いつかん」
バランギアスの名に王もギドも目を見開く。
バランギアスとはウルアークやフルールがある大陸と大河を挟んで北にある巨大な国だ。領土はウルアークの5倍。軍事力をもって北の大陸を統一した軍事国家だ。統一を果たしてから領土拡大に動いている様子は見られず近年大人しいが、その兵の実力は南大陸中にも広まっているほどだった。
「バランギアスが動いていると・・・?」
バランギアスの兵力で攻め込まれればウルアークはひとたまりもない。
「あくまで可能性です。判断できる材料が少ない。それにバランギアスだとしたら会いたいと言っているのは恐らく帝王・・・カルマ様でしょうね。となると、帝王が会いたいと言うような人間が三人の中にいるとは・・・」
「俺はディーナを求めたぞ」
王の言葉にマルドアは唸る。
「そういえばどこぞの馬鹿王子もディーナの歌声を聞いて誘拐したんでしたね・・・。ですが、バランギアスは美より剛を愛する国家です。ディーナを狙っているとは・・・」
「それにまだバランギアスと決まった訳でもないしな」
そうは言うが、ギドはバランギアスの名で姿すら見えなかった奴の気配に合点はいっていた。
王は暫し考え口を開く。
「ギド。1週間ディーナの警護についてくれ。メルフィはレオナに。ライドを動かしても構わん。うちの兵は上がいなくなっただけで統率が崩れるような輩ではないだろう?」
「まあな。多分クレドがまとめてくれるだろうし」
団員1の腕を持つ少年の名に王は一つ頷く。
「マルドアはバランギアスの内情を少し探ってみてくれ。表面上で構わん」
「分かりました」
「ガイアのディーナの実家へは俺が直接手紙を書こう。大事な娘を三人も預かっている訳だしな」
ひとまず話は落ち着き、マルドアはある程度の事情を知らせるためギドとともに客間に向かった。




