歌姫の姉の心
ギドも戻ってきたところで、いつもはマルドア、ギド、メルフィはそれぞれ別で食事なのだが、王の計らいでイルリカ、レオナも含め全員で食事を楽しんだ。
しっかりと食事を堪能した後、ディーナはイルリカとレオナを部屋に案内する。マルドアと王は仕事があるということで執務室に向かい、ギドとメルフィは一緒に客間に来た。
「美味しかった~!」
レオナはソファにボスンと座った後さてと!と動き出す。
「じゃあケーキ食べよー!ディーナも!」
「私は・・・その・・・後で・・・陛下と二人で・・・」
段々と赤くなっていくディーナをレオナはほっこりと見ていた。
「なら仕方ないね。メルフィ食べよー」
「は!?」
予想外の指名でメルフィは驚く。
「トマトはイル姉のだから駄目だけどキャロットとヨーグルトは選んでいいよー。アタシどっちも好きだし」
「生憎僕は甘いものは苦手ですので」
「えー。一口も駄目なの?」
「一口ぐらいはいけますが・・・」
「じゃあオッケー!!」
何がオッケーなのかレオナはキャロットケーキを箱から出すとフォークで小さく切ったものを刺し、メルフィに突き出す。
「はい。一口」
「わざわざいいですよ・・・」
苦笑するメルフィにレオナが答える。
「美味しいものは皆で楽しみたいの!」
真っ直ぐ見つめてくるレオナにうぐぐと唸っていると横からギドがひょっこりと顔をだした。
「お前が喰わねえなら俺が貰うぜー」
あーと口を開けるギドにメルフィは反射的にギドを押しのけ頬張った。
「どう?」
「・・・思ったよりは・・・いけます」
「じゃあ食べる!?」
「思ったよりです!一つはいけません!」
「えーじゃあもう一つどうしよ・・・」
うーんと唸るレオナにイルリカが口を開く。
「私が貰っていい?」
「え?イル姉二個食べるの?大丈夫?」
イルリカは首を左右に振って否定をする。
「ヨーグルトは疲労回復にいいって聞いたことがあるから」
レオナは暫し瞬きを繰り返していたが、そっか!と笑う。
「分かった!じゃあもう一個は残しとこーねー」
レオナは箱の蓋を閉めた後、美味しそうにキャロットケーキを頬張った。
「いや~甘酸っぺえな~」
ハハハと笑うギドをメルフィが睨む。
「ギドさんも欲しかった?ケーキ」
「いんや。もう胸いっぱい。腹いっぱいだ。メルフィはもういいのか?」
「いいって言ってるでしょう!!」
むきになったように叫ぶメルフィにギドは楽しそうに笑っていた。
「んじゃ、俺用事あっからメルフィはゆっくり食ってな」
「だからいいと!!」
ギドはハッハッハッと相変わらず豪快に笑い、片手を振りながら去っていった。
「ギドさんって面白いねー」
「どちらかと言うとギドさんの方が面白がられていたように見えたけど」
イルリカはそう言いながらケーキを頬張る。メルフィはため息をついて片手で顔を覆った。
「あの・・・イル姉」
ディーナがおずおずと声をかければイルリカはケーキから視線を外し、顔をあげる。
「陛下やマルドアさんに何と・・・?」
イルリカは表情を変えず数度瞬きをするとまた一口ケーキを頬張って飲み込んだ。
「ご本人に聞かれたら?」
「え・・・」
「その後私を責めるなりなんなり好きになさい。私は後悔してないから」
「イル姉・・・」
何を言ったの?ともう一度問う気にはなれなかった。もし、イルリカが陛下やマルドアに失礼なことを言ったのだとしたら、それは自分のためであるとディーナは知っていたからだ。




