歌姫の姉の手先
どうにかディーナは街の人達から開放してもらい、再び街を歩く。すると、道の端でうずくまって鼻をすすっている少女の姿が見えた。大人達は親を探すような素振りをしている。そんな中、レオナとディーナは迷うことなく声をかけた。
「どうしたの?」
「大丈夫?」
少女は二人に少し驚いたようだったが、視線を下げて言葉をつむぐ。
「ラビィが死んじゃった・・・」
死んじゃったという言葉に目を見開くディーナに対し、レオナは問いを重ねる。
「ラビィって?」
少女は後ろに隠していた物をすっとだす。それはぼろぼろにくたびれた人形だった。首がとれ綿が出てこようとしている。ディーナは人形だと分かって少し安堵する。
「ラビィはね・・・。ずっと一緒なの。起きてからずっと、寝る時も一緒なの。でも・・・転んでラビィの首がとれちゃった・・・。お母さんがそろそろラビィとお別れしようっていうの・・・。でも嫌だから・・・っ」
少女の目からぽろぽろと涙がこぼれる。
「お母さんは何でラビィとお別れしようって言ったの?」
「ラビィがもう疲れてるからって・・・」
「そっか・・・。お母さんラビィずっと貴女の傍にいたから疲れてるって思ったんじゃないかな。休ませてあげようって」
「ラビィが・・・?」
きょとんと丸くした瞳で見上げてくる少女にレオナはうんとうなずく。
「でも、まだ傍にいたい?」
少女は少し考えてうなずいた。
「もう少し・・・傍にいたい・・・」
「分かった!」
レオナは笑って少女の頭を撫でると、ポケットから裁縫セットを取り出した。
「イル姉に『女子のたしなみだから』って持たされてて良かった。一度も使ってないけど」
「レオ姉。私がやろうか?」
すぐにディーナが申し出たが、レオナは私がやるからいーよと笑う。
「ここをこーして・・・あれ・・・こうだっけ・・・あ、こうか!嫌違うか・・・えーと・・・」
大人しくレオナの様子を見守っていた三人だったがメルフィがあーもう!と声を上げる。
「人形が魔物みたいになっているじゃないですか!!貸してください!!」
メルフィは大変なことになっているレオナの縫い目を全て切り、縫い直し始めた。それはレオナの3分の1以下の時間で終わった。
「はい」
少女は返された人形を見て目を輝かせる。
「ラビィ治った!!ありがとう!!」
嬉しそうに人形を抱きしめて笑う少女にメルフィは「良かったね」と優しく微笑んで頭を撫でた。
「お母さんに見せてくる!ありがとう!お兄ちゃん!お姉ちゃん!!」
少女は大きく手を振って駆け出して行った。
「アタシは何も出来なかったからいいのにねー」
「貴女の裁縫道具でしょう」
メルフィは裁縫道具をレオナに返しながら言う。レオナは少し驚いていたが、ニコリと笑った。
「メルフィって手先器用なんだねー」
「貴女が不器用すぎなだけです」
二人の様子を眺めていたディーナは微笑んで口を開く。
「姉さん楽しそうです・・・」
「メルフィもなんやかんやでなー」
なんてギドも呟いていたらレオナがあ!と声をあげた。
「あっちにお花屋さんもあるよ!ディーナ行こ!」
レオナはディーナの手をつかんで駆け出した。
「また走って!!危ないですよ!!」
「大丈夫!!」
レオナは注意するメルフィに笑って手を振った。メルフィは全く・・・とため息をつき、そんなメルフィにギドが問いかける。
「なあ、お前あーいうタイプ好きなの?嫌いなの?」
「レオナさんですか?好き、嫌いというよりあーいう落ち着きのない女性は苦手です」
苦手という割にわざわざ自分から構ってるよなーとギドは思うのだった。




